今まで日本選手権にファイナリストとして連続16回出場を続ける「ジュラシック木澤」こと木澤大祐選手。ご自身がオーナーを務めるジュラシックアカデミーにて腕トレを見せていただき、お話を伺った!(IRONMAN2021年10月号より)
取材・文・撮影:岡部みつる
30年来のルーティン崩壊で半年を棒に振った脚のケガ!
――この2年間で良かったこと、悪かったことを教えてください。
木澤 競技者として良いことはなかったのですが、減量がなかった分、人間としてのんびりできたなぁって感じてます。競技が2年振りになるのは、マイナスでしかない気がしますね。誰でもそうですが、オフになると使用重量が伸び、それが減量に入ると抑えられます。それがなかった分、使用重量が伸び続け、その結果、ケガが多くなりましたね。いつもは夏場に減量に入ってバランスが取れてたんでしょうけど……。30年近く続けて来た「夏は絞る」という年間を通じたルーティンが崩れたわけですからね、初めての経験でした。一番大きかったのは脚のケガで、結局は半年を棒に振りました。
――よく湿布を貼っていましたね。本当に治って良かったです。ところで、この2年間良くしようと思って取り組んだことなどありますか?
効かせることを重視した高重量へシフト!
木澤 う~ん……そうですねぇ、脚をケガしたこともあって、トレーニングのアプローチを見直しました。高重量は扱うんですけど、より効かせることに重点を置いた高重量っていうんですか、感覚的な話なので分かりづらいかもしれないですけど、そういう方向にシフトしています。それは脚だけではなくて他の部位に関しても同様です。若干重量を落としつつ、効かせる感覚をアップするという感じですね。100だったものを90~95くらいにして、より効いてる感覚を強めて動作してます。とにかく負荷が抜けないよう抜けないように細心の注意を払って、という取り組みですね。
例えば、背中の場合、最初の種目に自重のチンニングを入れたりしてます。効かせる感覚を強くして高回数はできないように自分で仕向けるんですが、これでジワジワと効いてくるんですよ。トレーニングを変えたことで、ハードさは出たのかなと感じてます。体重を見ていればサイズも落ちた感じはないですし、ケガをしたことによるダメージっていうのはほぼないと思ってます。肩や胸も、感覚は良くなってる気がしますね。
僕は胸が弱点なので、テクノのマシンプレス中心の日とペックデッキのみ+三頭の日に分けてやってます。これは密度感を増やしたいので、やり込むことを目的にして2度やるようにしました。しかしながら、肩を休めることができなくなったので、今は胸も週1に戻したところです。二頭も痛いときがありましたが、これはもうやってれば定期的にくる痛みで、今はもう大丈夫です。
脚以外は、どれもトレーニングができなくなるような深刻なものではなく、長年やってれば定期的に出てくる痛みです。脚は、今までに経験したことのない痛みだったのでちょっと焦りましたね。最悪だったときには、2~3ヵ月の間、エクステンションを1、2セットやってもう終わりっていうときがありましたね。
今はもうまったく痛くないですが「脚トレの転換期」かなって感じてます。ハックで外側狙いの特殊なスタンスでやったんですけど「このまま高重量で続けたら危ないな」と思ってて、その限界がきたっていう感じでした。腸脛靭帯を痛めたんですけど、今までは関節などに負担がかかるのは経験してるんですけど、今回初めて靭帯に負荷がかかるのを経験しましたね。「こういうことするとこうなる」っていうのが、トレーナーとしてはすごく糧となるので、いろいろと勉強になりますね。基本的には、エクステンションから始まってプレス系をやって最後がスクワットっていう流れ自体は同じです。最後のスクワットが僕のパワーのバロメーターなんですが、これが今はもうほとんどケガ前の200㎏で8レップというのに戻ってきているんで、今は心配していません。背中は絞ってみて、どんな顔が出てくるのか楽しみですね。
――まさにケガの功名というんでしょうか。そばで見ていると扱う重量がほとんど変わらないので分かりづらいですが、いろいろと工夫して取り組んでいるんですね。減量が始まっていますが調子はいかがですか?
46歳でも進化できる証を残す!
木澤 2019年は4位にさせていただきましたが、そのときよりは密度感が出ているかなぁって気はしています。正直、絞り切ってみないと何とも言えないですが……。
――17回目のファイナリストとしての日本選手権で、しかも前回は2度目の4位という「復活の順位」で上り調子ですが、ズバリ目標を聞かせてください。
木澤 目指すのは2019年以上の「成績」というよりは、あのとき以上の「身体」ですね。2年分おっさんになっているわけですから「46歳でもまだ人間は進化できるんだぞ!」っていう証を残したいです。今度大きなケガをしたらもう気持ちがついていけないと思うので、ケガに気を付け一年ずつやって行きたいと思います。この年齢で日本選手権で戦えていること自体が楽しいですし、例えチャンピオンになれなくとも「『ジュラシック木澤』という名前がなぜ残ったんだ!?」という競技生活を続けていければと思います。
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「『今年はやるぞぉ!』というように構えるとオカシなことになる」と語る木澤選手が目指しているのは「平常心」だ。やるべきことを大会当日に向けて着実にこなす。当たり前のことが達成された先に見えるのは、どんな景色なのか?
日本選手権はもうすぐそこまできている。