「去年よりコンディションはすごくよかったです」
その言葉どおり、ステージでは158cnの体がひと回りも、ふた回りも大きく、輝いて見えた。山野内里子選手。JBBF日本選手権で5度優勝、アジア選手権も制した女子フィジーク界の“リビング・レジェンド”だ。
出場したのは2月14日(日)、神奈川・カルッツかわさきで開催されたボディコンテストの注目イベント『マッスルコンテスト東京』。昨年、同大会で約1年2ヵ月ぶりに復活&優勝を果たし、改めてその実力を証明したが、今年はさらに圧巻のボディとステージングを披露し連覇を遂げた。
昨年のこの時期には、海外選手も招へいしての国際大会『マッスルコンテストジャパン』が開催されたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催そのものが見送られた。その余波もあり、今大会の女子フィジークへのエントリーは山野内選手のみとなった。
「私自身、昨年2位だった(マッスルコンテスト)ジャパンでの優勝を目指してきたので残念な思いはありました。でも、今大会では『1人だからこそ、より完璧な姿を見せたい、絶対にパーフェクトでなければ』と。自分で余計なプレッシャーをかけてしまいましたね」
本番前の控室では、例年にないほどの緊張で体がガチガチに。ほぐしてくれたのは、メイクなどの準備を手伝いに駆けつけてくれた娘(彩香さん)の一言だった。
「お母さん、もう何年やってるの? 大丈夫、どんと行ってきなさい」
自信を取り戻したことも、圧巻のステージングにつながった。
「大会に出始めたときは49kgくらい。そこから52kg、55kgと増えていくにつれ、筋量も増えていきました。ここのところ体重は測っていないけれど、きっと筋量は増えていると思います。私は去年10月に還暦になりましたが、トレーニングの質や食事で、この年齢でもこの筋量、この体になります」
2年前からは競技者生活と並行して、パーソナルトレーナーとしての活動もスタートさせた。
「年齢ごとの体の変化など、自分の経験を通して得たものをどんどん伝えていきたいですね。逆に、指導をすることで私自身が新たに得ること、学ぶことも多いんですよ」
本番前に震えるほどの緊張に襲われるのは、日々を真摯に、真剣に、新鮮に生きている何よりの証だろう。「年齢は数字でしかない」を体現するレジェンドの今後の活躍を期待せずにはいられない。
取材・文_藤村幸代
撮影_北岡一浩