調整中のボディビルダーにとって「タンパク質の量を減らす」というのは、かなり勇気のいる選択ではある。その摂取量は、どのようにして見極めていったのだろうか。
「タンパク質の摂取量に関しては、長年『ちょっと多すぎるかな?』というのは自分でも感じていたんです。タンパク質の消化不良が起こると、排泄物が臭くなります。臭くなると、これはおそらくタンパク質の摂りすぎだろうと。それを基準に、臭くなったらタンパク質の量を減らすということを繰り返していったら、摂取量はどんどん減っていきました。多いときは体重(1gあたり)の4倍くらい摂っていた時期もあったんですが、今は2倍から摂っても2.5倍くらいです。身体に負担のない食事が僕には合っていたのかなと感じました」
開催10日前には緊急事態宣言の発令により使用会場が閉鎖になるという事態が発生した。大会自体が開催されるかどうか分からない“空白の2日間”が生じたものの、ここでも「身体に負担のない」調整を続けていたことが幸いした。
「最初、第一報を聞いたときは、この時期に新たに会場を借りるなんて絶対に無理だと思い、かなり絶望的な気持ちになりました。ただ、そこに至るまでの減量がそこまで過酷ではなかったので、(大会実施の可否の)公式発表が出るまではこのまま(減量を)続けてようと。ストレスのない、身体に負担のない減量ができていたので、空白の2日間で心が折れることはなかったです」
柏原選手はもともと胃腸が強いほうではないという。ボディビルダーたるもの、まずは健康であるべき。こうした無理のない減量法が、柏原選手を優勝に導いた。
「僕は胃腸は弱いし、身長はあっても身体は細いほうなんです。そういう人は、『筋肉のためにたくさん食べる』のではなく、身体を労わることが結果的に筋肉の成長に近道になる、そんな気がしました。偏った食事ではなく、いろんなものを食べて、健康というものを意識した上でのトレーニングと高タンパク、これが一番いいような気がします」
(取材:藤本かずまさ 撮影:中島康介)
【関連記事】
▶なかやまきんに君が念願の初Vを達成=5.3東京ノービスボディビル選手権結果
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。