8月21日、東京・大井町「きゅりあん」で開催された東京ボディビル選手権大会。東京ナンバーワンのボディビルダーを決するこの大会で本年度のチャンピオンになったのが、2017年、18年、19年と3年連続で2位となっていた白井大樹選手だ。スケールとバランスを兼ね備えた肉体で、常に優勝候補に名を挙げられてきた白井選手。まさに悲願の優勝とはこのことである。試合後、早速本人を直撃した。
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「もっと感動したほうがいいだろうなという感じはあるんですが、とりあえず、ほっとしました。無事に終わってよかったと思います」
聞いているこちらが拍子抜けしてしまうようなあっさりとしたコメント。というのも、白井選手はあまり「優勝」というものを意識せずに調整を進めるタイプの選手。ちなみに「ほっとした」というのは、「優勝できてほっとした」のではなく、「大会に向けて調整を始めてから大会当日まで無事に乗り切ってほっとした」という意味である。
「大会に至るまでに(コンディションを崩して)身体がむくんじゃうんじゃないかとか、またコロナに感染しちゃうんじゃないかとか。そういったことを非常に気にしていました。(そうしたことに注意しながら)、試合当日に無事に会場にたどりつかないことには、順位も何もありません。まずはそこが自分にとっての最重要課題でした」
そんなどこか飄々としている白井選手であるが、この日は優勝を決めておきたい理由が一つ。それは、自身をボディビルに導いてくれた恩人で、スタッフとして務めるジム「サンプレイ」の会長である宮畑豊さんの80歳の誕生日だったことである。
「誕生日に花を添えるではないですが、そういう日に優勝できれば…という気持ちも少しはありました。(試合後に宮畑会長に挨拶したときに)思わず『(優勝するまで)お待たせしました』と言ってしまいました(苦笑)」
東京選手権は宮畑会長も1973年に獲得している歴史と伝統のあるタイトル。今回の優勝は、白井選手が師に贈った最高の誕生日プレゼントとなった。
取材・文:藤本かずまさ 撮影:中島康介
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。