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引退覚悟で臨んだステージ。フィットネスビキニ女王・安井友梨選手の強さの秘密。「あの経験がなければ今日は優勝できませんでした」【マッスル】

「7年この競技をやってきて、初めて自信を持ってステージに立てました。今日はすごく楽しかったです。これまでは苦しいステージが多かったのですが、今日は初めて楽しいと思えました」

試合直後、ビキニフィットネスの絶対女王・安井友梨選手は涙ながらにそう振り返った。9月27日、メルパルクホール大阪にて開催された美ボディの頂点を決する大会「JBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2021」(以下、グラチャン)。階級別日本一決定戦のオールジャパン選手権上位3名までなど参加資格に高いハードルが設定されているこのコンテスト。ビキニフィットネスでその頂点に立ち2連覇を達成したのは、2015年のデビュー以降、常にこの競技を牽引する存在であり続けたビキニクイーン、安井選手だった。

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「今日優勝できなかったら引退しようと思っていました。私にとっては引退を懸けて挑んだステージでした。ピックアップ審査、予選審査と審査が終わって(ステージ袖に)戻るたびに涙が出てしまって…。化粧が崩れないように上を向いて涙が流れるのを堪えていました」

そんな安井選手にとってひとつのターニングポイントになったのが、8月8日に行われたジャパンオープン選手権大会でのフィットモデル挑戦。ワンピースのスイムスーツとイブニングドレスという2パターンのコスチュームで争われるこの新競技で、安井選手はまさかの国内初黒星。初めて味わった敗北の傷が、さらに安井選手をアスリートとして進化させた。

「あの経験がなければ今の私はありません。絶対に今日は優勝できませんでした。ジャパンオープンで負けて、そこから(約4週間後の)オールジャパン選手権に向けて死に物狂いで取り組くみました。そこからさらに(グラチャンに向けては)もう一ギア上げて、絶対に最高の自分を更新するんだと、2019年にアジアチャンピオンになった自分を絶対に超えるんだという気持ちでやってきました。オールジャパン選手権から今日までの3週間でトレーニングを休んだのは(試合前日の)昨日だけです。それまでは、トレーニングを休まず、スクワットを3週間連続やりました。筋量を増やすことを目標にして、食事量も増やしました。トレーニングは出社前の早朝と退社後の夜、1日2回やってきました」

想像を絶するハードな生活。妥協という敵に付け入る隙を与えない日々を送ることが、やがては自分自身への信頼にもつながっていった。

「3日くらい前から今までにない自信が自分の中に芽生えました。7年やってきて、今までは緊張して『どうしよう…』『大丈夫かな…』という気持ちで当日を迎えていたんですが、早く皆様に見ていただきたいというワクワク感に変わってきました。これは初めての経験です。一番いい状態の私の姿を見ていただきたいという気持ち、そして皆様への感謝の気持ちを込めて、ステージに上がらせていただくことができました」

敗北を知ったことでさらに高みに到達した安井選手。女王の女王たるゆえんがそこにある。

取材・文:藤本かずまさ 撮影:中島康介

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執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。

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