2021年2月マッスルコンテスト東京のビキニ部門でオーバーオール優勝された永吉令奈選手をご紹介します。出演したTVのバラエティ番組では、そのクールビューティーぶりと筋肉美を追及する姿勢からゴールドジムのアンジェリーナ・ジョリーとも言われる永吉選手の軌跡と身体づくりに迫る。(月刊ボディビルディング2021年8月号より)
文:三船麻里子 写真:中島康介、北岡一浩
―――マッスルコンテスト東京ビキニオーバーオール優勝、おめでとうございます。日本でのマッスルコンテストには、19年の第1回目から出場なさっていますね。そのきっかけは何ですか?
永吉 数年前にアメリカで見たマッスルコンテストがきっかけです。光栄なことにセミナーのイベントで、プロモーターのテイマーさんとビキニヘッドジャッジの方にポージングを見てもらうことができました。その時にテイマーさんから「次のマッスルコンテストJAPAN に出るべきだ」とおっしゃって頂きました。帰国後すぐに減量を始め、仕上がりは全くダメでしたが海外のプロ選手を実際に見ることができたので「これがビキニ選手なんだ」って知れたことが大きな収穫でした。そこからビキニアスリートとしてのトレーニングを始めました。
―――子供の頃からのスポーツ歴は?
永吉 小さな頃から毎日習い事をしていました。空手、水泳、陸上、と学生の頃も体を動かす事が大好きでした。高校を卒業した後はダンスの専門学校で学びました。
―――今はトレーナーとして活躍されていますね。
永吉 ダンス専門学校を卒業後はダンス、舞台でのお芝居、MC等のエンターテイメントの仕事をしていました。その頃にミスユニバースにチャレンジしました。女性らしさを磨き、エンターテイメントの仕事の幅を広げたいと思ったのがきっかけです。そして、そのために痩せたくてジムに入会しました。体の事について学ぶのが楽しかったので勉強をしまして、パーソナルジムでトレーナーを始め、そこから現在のゴールドジムに入社しました。
―――ミスユニバース大会ではファイナリストという素晴らしい結果を出されましたが、大変だった事と、今の競技に役立っている事などを教えてください。
永吉 大阪から東京でのレッスンに通っていて、毎回一人だけ大荷物でレッスンに参加していました。ヒールでのウォーキング、メイクの練習、スピーチの練習、レポート等の提出もあったりして毎日頭がいっぱいでした。300人以上の応募があった書類審査からファイナルまで駒を進めるのに何段階も審査をくぐり抜けること、毎回のレッスンが審査であること、ファイナルステージでも1次審査から3次審査までもどんどん人が落とされていったので一瞬も気を緩められませんでした。最後の最後まで残れたことは自信に繋がりましたし、おかげでステージでの戦略や表現力、審査基準に近づくための研究力は今すごく役立っています。
―――今大会は、同時にマッスルゲートが開催されていて、そちらでは準優勝でしたね。ゲートが終わってコンテストという順番でしたが、気持ち的に如何でしたか?
永吉 とにかくコンテストのほうでは優勝する、とイメトレをしていました。
―――食事に関するコーチがいるとの事ですが、今回の減量で上手くいった点と辛かった点は?
永吉 今回は1か月前まで出場を悩んでいました。目標にしていたプロクオリファイがなくなり、緊急事態宣言が出ていて出場していいものかを毎日考えました。真っ直ぐ突き進めない感じでモチベーションがなかなか上がらず減量が進まなかったんです。でも1年間ずっと今年のマッスルコンテストに懸けてきた思いがあり、その先の目標も計画していたので、コロナで自分の人生を棒にふられたくないと思いました。しかし出場するからにはもう優勝しかしたくなかったので、そこからすぐコーチについてもらいました。食事とトレーニングのプランを組んでもらって、ただ与えられたミッションをこなす。これが体力的にしんどくても精神的にはすごく楽でした。体はすぐ絞れていきましたし、これなら勝てるかもしれないと希望が湧いてきました。海外のプロ選手にはみんなコーチがついていたりチームがあったりします。個人競技ですけど、自分一人では優勝はできなかったと思いますし、減量中はメンタルが崩れやすいので今後もポージング含めコーチは必要だと感じています。
―――決勝審査の前だったでしょうか? 令奈選手が控室でポテトチップスを食べていたのが印象的でした。あれもコーチからの指示だったのですね?
永吉 はい。
―――憧れている、または好きなビキニ選手はいますか。
永吉 私は2020年のオリンピアで優勝したジャネット・ラユウ選手ももちろん好きなのですが、特にそのオリンピアで2位のジェニファー・ドリー選手と3位のエティラ・サンティアゴ選手が好きです。
―――2人とも髪の毛の感じが令奈選手と似ていますね。
永吉 彼らのヘアスタイルを意識してみました。
―――その魅力的なカーリーヘアスタイルは、ご自分の毛質ですか?
永吉 元々強烈なくせ毛なのですが、今スパイラルパーマをあてていて、地毛が伸びても自然になるようにしています。次のコンテストはアメリカのアマチュアオリンピアに出場を考えているのですが、出られることが決まったら日本人らしいイメージでいきたいので黒髪のストレートヘアにする予定です。髪の巻き方ももう決めています。
―――大会のステージメイクも素敵でしたが、ご自分でなさるのですか?
永吉 毎回自分でしていたのですが、今回はこの大会に懸ける思いが強かったのでプロに任せました。今後もプロに任せるつもりです。でもこれまで自分で研究したからこそ、どのようなメイクをしたいか意思をはっきり伝えることができたので、理想のメイクに仕上げてもらえました。メイクが完成したとき、感動して涙が出そうでした。
―――いずれはIFBBプロビキニ選手になりたいという夢をお待ちの令奈選手ですが、今回オーバーオール優勝するために、一番気をつけたことは何ですか?
永吉 オリンピアの審査基準に全てつくりあげることです。ヘアスタイルからビキニ選び、メイク、ネイル、ポージング、全て合わせようとしました。各国のプロリーグを見て、そのリーグのチャンピオンがオリンピアでどういう評価を受けているかもチェックしました。どれだけ素晴らしく努力しても審査基準に見合っていなければ、その努力は結果に繋がりません。オリンピアのビキニヘッドジャッジが発信する情報をキャッチし、ジャッジ目線での自分というのを客観視していました。そこを理解してトレーニングプランも組む必要があると思っています。まだまだ課題は多いですが何が足りないかは明確に把握しているつもりです。
―――ポージングのコーチはどなたですか?
永吉 18年に韓国のNICAに出場した時にポージングでお世話になった井出萬里さんです。
―――今回のポージングの課題は何でしたか?
永吉 私の短所は足が太いところと思っていますので、見せ方や角度を研究しました。お尻に体重をしっかりのせて丸みを出す事、ウエストを細く見せる事も練習しました。
―――ご自身の強みとなる長所はどこですか?
永吉 肩とお尻です。トレーニングでもとても意識できます。
―――減量で有酸素はしますか?
永吉 はい。朝昼晩と加圧をかけてエアロバイクを漕ぎます。
――― 去年からコロナの影響でイレギュラーな生活を強いられましたが、この時期のトレーニングはどうなさっていましたか?
永吉 ジムが休館していましたから、専ら家でのトレーニングをしていました。と同時にこれから国際大会に出る時などに必要となる英語の勉強をオンラインでしていました。ネイティブのイングリッシュスピーカー講師と話をすることに、だんだん慣れてきました。
―――私も20代初めから15年近くアメリカやカナダ、カリブの島国に住んだ経験がありますが、語学の習得に必要なのはまず慣れること、反復してその言葉を使うことです。まさしくウェイトトレーニングと同じでコツコツ身につけて行く事が大切です。何度か国際大会に出場しましたが、世界の舞台での共通語の英語が自由に使えて良かった、と心底思いました。
永吉 私もさらに勉強していきます!
―――最後にあなたにとって、このビキニ競技とは何ですか?
永吉 私はフィットネストレーナーとしてこの競技を仕事として考えています。この競技が好きだからやっているというより、この競技なら私が最大限に自分の力を発揮することができる。そしてそれが今の仕事のキャリアアップに大きく繋がる。だからこそ夢が広がり、大きな目標に挑戦していきたいですし、そうやって突き進んでいく過程が楽しくて一番私が自分らしくいられるんです。結果を出すことで会社からもお客様からもより必要とされる人間になりたいと思っていますし、それが最大のモチベーションです。
華やかなステージヘアメイクも素敵ですが、東京と大阪でのオンラインインタビューで見せていただいた、ナチュラルな令奈選手もチャーミングでした。強い意志を持ち目標に向かいコツコツと継続する…、ビキニプロへと進んでいく令奈選手を心から応援します。