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武尊が交わした"大晦日の約束"「実現できなかったら引退」を表明した1年前のインタビュー

──実際、K-1の判定基準では、1Rもポイントがつくレベルではないと思います。プレスルームでも記者陣はそういう反応でした。でも会場のお客さんやAbemaTVの視聴者には、「当ててるから取ってるでしょ」という人も多かったようです。僕自身も帰宅してからネットの反応を見て、正直少し驚いたぐらいでした。
武尊 もともとのイメージとして、僕が圧倒的に勝つという試合だと思われていたというのはまずあると思います。今まで倒して勝ってきているので、そのギャップというか、「武尊が倒せてない」イコール、僕のほうがマイナスに見えちゃうというのはあったのかもしれないですね。それを分かっているからこそ、倒さなきゃダメだったなと思います。
──ただ、3Rのラッシュは文句ないものでした。
武尊 文句言われるんだったら、あと1ラウンドやりたかったですけどね。あと1ラウンドやってれば絶対倒せてるなっていう自信はあったので。
──終盤になるに従って、そこまで吹っ切れてきた?
武尊 そうですね。アドレナリンが出てからは、気にせず出られました。
──ということは……序盤はアドレナリンが出てなかったということですか?
武尊 ああいう相手だと、出ないんですよ! 全然前にこないんで。いつもは戦うのが楽しいと思うからアドレナリンが出るわけで、楽しくない試合ではあまり出ないですね。3Rは自分で絞り出す感じで、無理やり出しましたけど。
──それもなかなかないことですよね。
武尊 そうですねえ。ああいうディフェンシブなスタイルの選手とやるときは、なかなか楽しくはなれないですよね。
──3月のヨーキッサダー戦では「蹴りが痛い」と感じたからこそ、前に出たという話でしたよね。それがKO勝利につながりました。
武尊 そういうのもなかったんですよね。まあ、村越選手のスタイルも戦い方の一つなので否定はできないですけど、あれでポイントが取れるんだったら、みんなそうしますよね。そうなると、ポイント制の戦いになっちゃうじゃないですか。それはアマチュアだと思うんですよ。プロは相手を効かせて倒して、効いてる様子を見て「こっちが勝ってるな」っていう判断をされるものだと思うし、実際、K-1のジャッジはダメージのポイントが最優先されるという基準なので。だから僕は、チョコチョコもらうものよりも、強いのを当てるということを意識して戦ってる感じでしたね。
──それでポイントを取って勝つのは、少なくともK-1で求められているものではないですからね。
武尊 まあでも、そういう相手でもしっかり倒して勝つというのが、僕のやらなければいけないことだと思うので。
──では、試合後も気持ちはスッキリしなかったのでは?
武尊 モヤモヤしましたね。自分としては普通に判定で勝ったと思ってたんですけど、その後にネットとかの反応を見て、「だったらもう1ラウンドやらせてよ」と思ったぐらいでした。
──実際、ああいうスタイルの選手との試合はもういいや、という感じですか?
武尊 いや、村越選手とはもう1回やりたいですけどね。あの後もツイッターでいろいろ言ってたみたいですけど、もう戦い方は分かっちゃったし、次にやったら100%倒せる自信があるんで、「文句言うんだったら、もう1回やろうよ!」と思います。
──この取材の前にはミット打ちもされていましたが、そういう気持ちも持った上で、もう動き始めてるんですね?
武尊 練習は今日(12月11日)から再開したんですよ。昨日までは別の仕事がメチャクチャ忙しかったので、なかなか練習に来ることもできなくて。
──あ、そうだったんですね。そう言えば試合直後にも「SASUKE」の収録に行かれていましたよね。大会後にツイッターを見てビックリしました(笑)。
武尊 はい、試合が終わってから直行しました。あれから1日も休んでないので、ずっと寝不足です(笑)。試合前には絶対に仕事を入れないようにしてもらっているので、「試合後はできる限りやります」って言ってあったんです。あと、来月からまたアメリカに行くので、この時期に詰めてもらったというのもあるんですよ。1月からは2020年の試合に向けて集中するために、この期間はいろんなことを一生懸命やろうかなと。そのために、試合後からの2週間だけ詰め詰めでやってました。だから今日は久々に体を動かしてミットも打って、少し気持ちが晴れました(笑)。
──そうだったんですね。自分の動きはどうでした?
武尊 でも逆に溜まっていた疲れが抜けて、メッチャ動きがよかったんですよ。試合前は疲れが溜まってたんだなと。メチャクチャ練習してるのに、動きが悪いなと自分でも思ってたんですよ。だから疲れが抜け切れてなかったんだなっていうのが、改めて分かりました。
──試合に関してもそうでしたが、いろいろと反省点というか、気付いたことがあると。
武尊 まずは体のコンディションを整えることが一番だと、改めて思いましたね。ケガをしっかり治して、それ以外にも痛めたところがけっこうあるので、そこも治して。来年は、もうちょっとケアの時間を増やすようにしたいですね。今までは練習量を増やすことばかり考えてたんですけど、年齢的にもケアの時間をもっと増やさないとなと。
──そしてアメリカですよね。今回は何をテーマに?
武尊 年明け早々から行くんですけど、もう3月のさいたまスーパーアリーナに向けて、体作りプラス、新しい技術を入れに行きます。今回は、向こうでもケアの時間をしっかり入れないとなと思ってるんです。向こうに行くとどうしても練習が楽しくて、それこそ1日中何かしらやってしまうんですよ。それでケアの時間がなかなか取れなくなっちゃうので。
──いろいろやれるから、やりたくなると。
武尊 日本だと練習する場所とかメニューがほとんど決まってるじゃないですか。でも向こうだと新しいオモチャがいっぱいあるみたいな感覚で、「あれもやりたい、これもやりたい」ってなっちゃうんですよ。ボクシングも行きたい、MMAも行きたいって思って、時間が足りないぐらいで。今回はそこの調整もちゃんとやりたいと思ってます。3月は万全で臨みたいので。
──現時点で2019年を振り返ると、どういう年だったという認識ですか?
武尊 うーん、今年はちょっと不完全燃焼でしたね。ケガで長期欠場があって、試合もあまりできなかったし。年間2試合って、プロデビュー以来最低なんですよ。
──あっ、確かにそうですね!


武尊 だから、もっと試合がしたいなっていうのはすごく思います。でも選手としてそういう年はなかったので、それを経験したというのはある意味貴重でしたね。毎年、「今年もやり切ったなあ!」って感じで終わってたんですよ。毎年、だいたい満足いく年だったんです。それが今年は初めて満足いかない年になって。この経験はデカいと思うし、全てが順風満帆でいってたら、乗り越える力とかも養われないと思うんですよね。今は悔しさがある分、久々に「早く次の試合がしたい」って思ってるんですよ。いつもはいい試合すると「あー、頑張ったな! ちょっと休もう」って思うんですけど、こんな
に次の試合を早くやりたいと思うのは久々で、この悔しさが来年のモチベーションになると思います。その意味で今はモチベーションはメチャメチャいい状態ですね。今年悔しかった分も乗せた感じでいきたいです。あと来年は、現役生活で一番大きな花火をドーン!と打ち上げたいと思ってます。
──花火ですか。
武尊 それをやらないと、現役を終われないと思ってるんで。来年それがやれなければ、たぶん僕はそのままやめると思います。時が来たら花火は打ち上がると思うので、そのためにもまずは3月の試合で完全復活しないといけないので、モチベーションは高いです。横浜で、ヒデさん(山崎秀晃)がすごい試合をしたじゃないですか。
──あれは確かにすごかったですね。横浜アリーナのお客さんも、メチャクチャ沸いてました。
武尊 あれは感動しますよね! ヒデさんとはずーっと一緒に練習してきて、ケガで長期欠場してつらい思いもしてるじゃないですか。そこからあんな試合で復活してるんで、やっぱカッコいいなと思うし、練習とか見てても人生かけてやってるなと感じます。僕はずっとヒデさんの練習を見習ってやってるんで。次は僕もあんな爆発的な勝ち方をしたいと思います。
──分かりました。来年の大爆発と花火に期待してます!

Takeru
1991年7月29日、鳥取県出身
身長168cm
第4代K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者
初代K-1 WORLD GPフェザー級王者
初代K-1 WORLD GPスーパー・バンタム級王者
初代Krushフェザー級王者
K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST所属

※こちらのインタビューは2019年12月23日に発売した「Fight&Life Vol.76」に掲載されたものです。

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