──では、渡辺さんがいないと、本当に武尊選手は成り立たない?
武尊 本当にそう思います。体もそうだしメンタル・コントロールもそうだし、雅和さんがいないと無理ですね。
──また武尊選手はアメリカに行ったり、最近ではボクシング・トレーナーをつけたりして、外で技術を吸収することにも貪欲ですよね。それを試す相手も渡辺さん?
武尊 新たに取り入れた技術とか技って、絶対すぐには自分のものにならないじゃないですか。自分が使えるかを試したり、自分のものにしていくという作業はやっぱり雅和さんしかできないですね。
渡辺 僕は「どこか行きたいところある?」とか聞くんですよ。そういうのは制限しないので。制限する人もいますけど、別に選手は弱くなりたくて行ってるわけじゃないんで。新しい技を取り入れて、ミットでできるようになればスパーでできるようになって、スパーでできるようになれば試合で出せるようになるので。そういう風に完成していけばいいと思ってます。
──先ほど、試合前に「今日は大丈夫だ」と思えるという話がありましたが、「大丈夫じゃないな」というときもやっぱりあるんですか?
渡辺 あります、あります。というか、そういうときのほうが多いです。100のときなんかないですから。選手はだいたいそうだと思うんですけど、この人は特にひどいです。
武尊 どっちかというと、追い込みでダメージを負ってるときが多いですからね。
渡辺 100のときはないよね。どこかケガしてる。
武尊 ないですね。俺、100だと不安ですもん。
渡辺 ああ、よく言ってるね。
武尊 「今回ケガしてる。よかった~」って(笑)。
──それが、いつも通り練習できている証拠?
武尊 そうですね。まあ、ないほうがいいんですけど、ジンクス的に「今回もケガしたからいけるわ」という感じで。
渡辺 ジンクス好きだもんね(笑)。ただ、ケガの状態がひどいときもあるので。他のジム、他の選手だったらやらないよねっていう状態のときは、僕も本当に不安です。だって、ここ4年ぐらいは武尊が出ないと大会が大変なことになるという感じじゃないですか。だから、ボロボロになっても頑張ってましたよ。「それで出るんだね……」という感じで。「出るんでしょ?」って言ってましたけどね(笑)。
武尊 そうですね(笑)。
渡辺 僕は「やれ」とは言わないんですよ。「やりたい?」って聞きます。やりたいんだったら、そこから最善を尽くしましょうと。
武尊 選手の意見第一なんで。「やりたいんでしょ? 今回も」って感じですよね(笑)。トーナメントで拳がグニャグニャに折れてたときも、「どうせやるんでしょ?」って(笑)。ドクターに言ったら止められちゃうんで、「やりたいんだったら、言わないから」って。
渡辺 そうなると、その状態の中で100はいけないけど、少しでも100に近い状態でリングに上げられるか……というか、いかに武尊を騙すかなんで。
──試合以外のことも相談したりするんですか?
武尊 女性関係とかですね。そこも師匠みたいなものですから。
渡辺 いやいや(笑)。まあでも、たいがい知ってますよ。何でも言うから。僕だけじゃなくて、みんなにバーッと言ってるんですけどね。
武尊 プライベートもだいたい話しますね。
──そこもいいトレーナーということですか?
武尊 いや、そっちはあんまりうまいほうじゃないです(笑)。相談はしますけど。
渡辺 一応、ミットは構えてるんですけど、全然合わないな、みたいな(笑)。
──さて、レオナ・ペタス戦についてなんですが、対戦が決まってから実際に戦うまでに、これだけクッションがある試合もなかなかないと思います。気持ち的にはどうですか?
武尊 いや、そこはそんなに変わらないというか……いつも追い込みは2ヵ月やるんですけど、その期間があれば、毎回変わらないというか。1回目は僕のケガでなくなったし、2回目も早い段階で決まったので。直前まで追い込みをやってて延びたらキツいですけど、両方とも1ヶ月以上前に分かってるし。
──1回目のときに研究や対策をしていたと思いますが、その後、それは深まったりしているんですか?
武尊 それもそんなに変わらないですね。その間にカーフキックが流行ったりしたじゃないですか。そういうのがちょっと影響してるぐらいですかね。
──カーフが影響?
武尊 します。絶対狙ってくるだろうなと思って。
渡辺 前から蹴ってたしね。
武尊 向こうも「カーフ蹴られたらイヤだ」みたいなことを言ってるらしいんですけど、それは心理戦で、誘ってるんだろうな、とか。いろいろ考えることがあるじゃないですか。ジムでみんなでカーフを試して、「こんなに痛いんだ!」みたいな。
渡辺 まあ相手が何が得意かなんて分かってるから、あとは不安をなくしていく作業ですよね。武尊の不安がなければ、試合はだいたい想像つきます。
武尊 追い込みは不安をなくす期間ですよね。不安を感じやすいんで。
渡辺 武尊って、対策という感じじゃないんですよね。武尊の動きが出れば誰でも問題ないので。また最近は武尊の調子がメチャクチャよくて、僕も気持ちがいい。最初に試合が決まってから、今が一番ですね。
武尊 メンタルの調子が一番いいんですよ。
渡辺 いいよね。体もいいし。
武尊 さらに今年は運気もいいらしいですし。
──そんな中で、大晦日にRIZINの会場に行くという出来事がありました。それはメンタルの好調と関係ありますか?
武尊 多少はあるかもしれません。あの場に行けたこと自体がよかったと思いますし、その後は誹謗中傷がなくなりましたから。この5~6年、ずーっと来てましたからね。
渡辺 ジムのメールにも来てないな、そういえば。
──ジムにも来てたんですか……。
武尊 まあでも、それがあるから見返してやろうと思ってやり続けてたのもありますしね。でもいろんな人に言われるんですけど、今年はメチャメチャ運気がいいらしくて。この10年で一番いいらしいですよ。
渡辺 ヤバいじゃん!
武尊 だから、今年は本当に楽しみです。
──その一発目がレオナ戦ですね。
武尊 僕、K’FESTAでのKO率もハンパないですからね。僕はやっぱりK‒1で一番強くないといけないと思うし、K‒1を「世界で一番強いチャンピオンがいる団体」にしないといけないと思うので。まずはK‒1の中での一番をみんなに証明する試合ですね。
Takeru
1991年7月29日、鳥取県出身
身長168cm
第4代K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者
初代K-1 WORLD GPフェザー級王者
初代K-1 WORLD GPスーパー・バンタム級王者
初代Krushフェザー級王者
39戦38勝(22KO)1敗
K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST所属
Masakazu Watanabe
1983年9月25日、山口県出身
K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST代表