迷いを払拭、不調の原因も見極め扇久保はバンタム級GPに臨む。
「周りが強い強いって言うのが気に食わないから、井上直樹選手とやろうと思っていたんです。(抽選で)空いてたら絶対行くって決めていたんですけど、自分が先に番号を引いちゃって、でも(井上が)こっちに向かってきたから〝来た!〟と思って『来い』って言ったんですけど、石渡さんに行っちゃって頭が真っ白になりました(苦笑)。思った通りにいかなかったです」
抽選で6番を引いた扇久保は敬遠されたかなかなか相手が決まらず、16番を引いた春日井〝寒天〟たけしとの対戦が最後でようやく決まった。
「春日井選手が出るとすら思ってなかったので、まさかここで交わるのかっていう感じでした。強いので本当に全力を尽くしてやらないと勝てない相手なのでかなり気は引き締まりました。GPのテーマは優勝して堀口選手と戦って勝つっていうことです。この過酷なトーナメントが先にあるので、これを絶対に優勝してやろうっていう気持ちでいます」
自ら「死にました」と言うほどの敗戦。そこからどう立ち直り、また戦いに挑むことができたのだろう。
「運がいいんですよね、僕は。1回目の堀口戦の後もVTJのトーナメントが決まってくれて、いつまでも引きずっても仕方ないからそっちにフォーカスできましたし、TUFの後も敗戦を引きずる間もなく離婚になって(苦笑)、敗戦のことはもう考えられなくなりました。今思うとそれが一番死にましたけど、その後も修斗で試合を組んでくれて〝もうそっちに頑張るしかない〟ってなって忘れることができたんです。だからそういうことで、ずっと落ち込んでいても仕方ない。キツいけど何かやることを見つけるのがいいんじゃないですかね」
大きな挫折・落胆からの立ち直り方を扇久保はそんな風に言う。
「休んでいたい、いつまでも悲しんでいたいですけど、やっぱり次の目標というかを決めてやれば、また立ち直れるんだなっていうのをすごい感じます。結局思い返してみれば、〝あれがあったから今があるな〟って思えるので。その時キツくても頑張っていけば、いいかは分からないですけど思い出になるというか。自分も今は笑って喋れますから。その時は辛いですけど」
死ぬほど辛い時であっても戦わねばならず、また戦って切り開いていかなければ未来はない。格闘家とは改めて因果な商売である。格闘家としての死線を乗り越えた扇久保は、「あまり考え過ぎない方がいいと思います」と実体験に裏打ちされた言葉を語り、そして「『優勝します』としか言えないです。もう必ず優勝します」と力強く結んだ。
Hiromasa Ougikubo
1987年4月1日、岩手県出身
身長160㎝、体重61.0㎏
第6代修斗世界フライ級王者
第8代修斗世界フェザー級王者
パラエストラ松戸所属