──かなり以前にインタビューさせていただいた時に、「そんなには強くないのに、世の中で強いと思われているヤツからは勝ちたい」とおっしゃっていたことがあるんです。
今成 えっ、そんなこと言ってました? いつ頃ですか?
──もう15年前とかだと思います。その言葉がすごく印象に残ってるんですが、今はそういう気持ちは……。
今成 うーん……当時はどういうつもりで言ったんでしょうかねえ。でも結局は、表に出てるってことは強いんですよ。出てるということが、強さでもあるんです。その頃は、それが見えてなかったんでしょうね。
──では、このトーナメントに出るに当たって一番思うこと、心がけることは?
今成 悔いのないようにやりたいですね。やりきりたいというか。「もうちょっとできたなあ」と思ったりしないように、準備したいです。
──これまで、得意の展開に持ち込めなかった時はズルズルと負けてしまうという試合もありました。そういうときにそう感じる?
今成 そうですね。自分の弱かった部分、直さなければならなかった部分と向き合ってなかったというのがあって。以前は「取れるときは取れる。取れなかったら判定負け、それが自分」みたいには思っていて、諦め半分みたいなところもありました。
──今はそこが変わってきた?
今成 まあね。燃えてますよ(ニヤリ)。
──そうですか(笑)。でも考え方がだいぶ変わったんですね。
今成 まあ日々、変化していきますよ。変わらないと生き残れない世界ですし。
──一番大きな変化というと?
今成 うーん……ちゃんとやるようになったというか、マジメに取り組んでるというか……まあ、練習が一番気持ちいいってことに気づいたっていうのはありますね。前は他のことに気を取られてて、そっちが一番みたいなとこがありましたけど。
──一番が何かは掘らないでおきますが……試合はどうなんですか?
今成 試合も最高ですよ。日常では味わえない体験ですからね。ただ、日常的に練習をすることがやっぱり気持ちいいんですよ。
──これだけ長くやっていても?
今成 そうですね。やっぱり、「これはこうすればいいのか」っていうような発見が日々あるんですよ。終わりがないところが楽しいです。
──そういう発見というのは、練習相手の変化などでもありますか?
今成 そういうのもありますけど、やっぱり自分で気づくことが楽しいんですよ。その意味では終わりどころか、まだまだ始まってもいないんじゃないかというぐらいで(笑)。楽しいですよ。
──長くやってきて、体力的な変化を感じたりは?
今成 体力は変わってないと思いますけど、疲れが取れにくくなったぐらいです。でも、それで練習量が変わったりとかはないですけど。
──減量については? 今回は61㎏リミットですが。
今成 ほとんどないです。通常でも65㎏ぐらいなので。フライ級まで落としたときは、ちょっと向いてなかったですけど(笑)。
──以前はもっとムキムキで、筋肉もすごかったですよね?
今成 そうですね、筋トレをたくさんやってましたから。いつからか、筋トレよりも格闘技の練習のほうが楽しいなってことに気づいたんですよね。今も補助的に懸垂とかはやってますけど。
──この時点では、東京・大阪のどちらでの試合になるかは未定ですが、東京ドームで試合したいという気持ちはありますか?
今成 したいです! 東京ドームってすごいし、何より近いんで(笑)。でもまあね、試合するときはどこでも同じなので。大会とか会場が大きい、小さいというのは気にしたことないです。
──自分以外の何かのために試合をするという意識はありますか?
今成 今は、今成柔術の生徒さんのため、一緒に練習してくれている人たちのため、というぐらいですかね。あとはまあ……自分ぐらいのオジサンのため、というのは考えなくもないですけど。自分が「誰かのため」とか思うのはおこがましい気もするし、「コイツ、頑張ってるから俺も頑張ろうかな」と思ってもらえたらうれしいですけど、「そう思え!」って言うようなものでもないし。
──では試合のモチベーションとして、腕試しという側面が強い?
今成 そうかもしれないですね。今、「強い」と言われてる人たちとやって、何ができるか。常に強い人に挑んでみたいという気持ち、そういう人と組んだらどうなるのかという好奇心、それが一番ですかね。このGPでも強い選手がたくさん出ていて、勝ち上がって対戦できるというのは、縁じゃないですか。手を上げればやれるというものでもないし。勝っていけば強い人とどんどんやれるというのが、このトーナメントの一番の楽しみですね。
──最後に確認します。優勝はしたいんですよね?
今成 もちろん! 全員から取って優勝しますよ!(ニヤリ)
Masakazu Imanari
1976年2月10日、神奈川県出身
身長165cm
Team Roken所属