格闘技

【RIZIN】朝倉海「必ず優勝する。そしてみんなを“世界”へ連れて行く」=バンタム級トーナメント PREVIEW

──現在の右拳の具合は?
海 包帯を巻いて固定している状態なので、練習では下半身中心のトレーニングになりますね。下半身であればけっこうできるメニューもあるし、あとは重量を担いでのスクワットやランジ系の動きや走り込み、パワーマックスでの心肺機能強化とか、フィジカルトレーニングは、かなり充実していますね。
──この時期、本当は対人もやっておきたいところですよね。
海 もちろんそうですけど、いつもは格闘技の練習とフィジカルトレーニングに割いていた時間を100%、フィジカルに割けるので、ふだんより基礎トレーニングができることを考えると、心肺機能やパワーのレベルを1、2段階は上げられるかなと。だから、そんなに焦ってはいないですね。
──未来選手によれば、朝倉家は遺伝的に治癒能力が高いと。
海 ああ、それはあるかもしれないです。以前、骨折したときも、普通の人が全治2、3ヵ月のところ、1ヵ月くらいで「あれ、もうくっついてる」ということもありました(笑)。今回の怪我も変にナーバスになることはないですね。対戦相手を想定したシャドーもできますし、治ったらすぐに対人に取り掛かれるような準備はできています。

朝倉海

──2試合を勝ち抜き、残すは準決勝、決勝の大晦日決戦。ここからは勝ち上がってきた井上直樹、扇久保博正、瀧澤謙太の3選手について聞かせてください。
海 まずは、予想通りの選手が勝ち上がってきたなという感じですね。扇久保選手と井上選手は上がってくるなと思っていたし、瀧澤選手は正直、予想していなかったですけど、元谷(友貴)選手との相性を考えたら勝つ可能性はあるなと思っていたので。わりと順当に、上がるべくして上がって来た選手が揃ったなという気はしています。だけど、3人の実力でいえば扇久保選手、井上選手が抜けていて、瀧澤選手がちょっとその下にいるのかなと。
──扇久保選手と井上選手、2人の実力は拮抗している?
海 そうですね。僕としては、どちらが勝ってもおかしくないという目で見ていますね。
──井上選手は金太郎選手に判定勝ちでした。井上選手も右拳を痛めたなかでの戦いになりましたが、終盤攻め込んだ金太郎選手を評価する声もあれば、井上選手の高いディフェンス力や蹴りと左で組み立てた対応力を評価する声もあります。
海 たしかに、どちらとも取れる戦いでしたよね。僕としては、井上選手のいい部分も光っていたし、弱い部分も見えたなという印象です。あとは、ディフェンス力は高いなと感じました。攻撃をもらわない、回避する力はあの試合で見えましたけど、逆に「こうされると苦手なんだな」というのも分かりました。ほかには、前から思っていましたけど打撃の殺傷能力はないですよね。コンパクトでテクニカルではあるけど、倒しきるような一撃があるタイプではない。その意味では、自分とは対照的かもしれません。だから正直、怖さというのは感じないですね。
──光っていた部分というのは、やはりディフェンス力ですか。
海 そうですね。あとは打撃のスピードや正確性、それにスタミナもある。寝技に関しては、今回はそこまで出ていないですけど、いずれにしても脅威には感じないですね。
──井上選手は初戦で石渡伸太郎選手に完勝しましたが(1R1分58秒 TKO)、そのときは「しっかり実力を持った選手」と評価していました。今回も評価は上がった?
海 そうですね。ただ、以前のままの石渡選手と対戦して、あの動きができていたらまた別ですけど、石渡選手の怪我であったりコンディションの悪さを知ったら、あの試合展開にはなるのかなと。だから、僕のなかでの(井上選手に対する)評価としては、そこまで上がってはいないですね。
──たとえば堀口恭司選手と比べて、やりづらさ、逆にやりやすさや対策の立てやすさなどは感じますか。
海 これはもう、やってみないと分からないですね。ただ、堀口選手との実力差はかなりあると思います、総合力的に。でも、全然気を抜いているわけではなく、対策はしっかりしていますよ。
──対策といえば、10月2日の『RIZIN LANDMARKvol.1』では、朝倉未来選手が萩原京平選手にたびたびニータップからテイクダウンを奪っていました。海選手も具体的な・井上対策・はできている?
海 はい。スタンドとグラウンド両方で。たぶん、ハマると思います。ただ、今回の兄貴の試合は、煽りVでどちらが勝つか分からないように見せられているだけで、もともとの実力差はかなりあったと思います。だから、打撃でやっても勝てただろうし、テイクダウンにしても、ニータップはいろんなバリエーションのなかの一つにすぎない。ニータップがハマったから勝ったというのとは違いますよね。
──海選手自身と井上選手の実力差についてはどうでしょう。やはり、かなり開きがありますか。
海 あると思っています。ただ、組んでみないと分からない部分はあるので。自分の推測で作戦を立てたり分析をしたりするわけですけど、そのなかでは問題なく、普通に勝てるなという印象ですね。
──それを踏まえて準決勝で戦いたい相手は?
海 僕は正直、当日抽選でもいいかなと思っているんです。僕がプロデューサーだったら、間違いなくそうしていますね。それくらい、誰とやってもいい。トーナメントの初戦から、もっと言えば出場すると決めたときからトーナメントに優勝することしか考えていないので、準決勝が誰になっても、決勝が誰になってもいいかなと思っています。
──対戦経験でいえば、扇久保選手とは昨年8月のRIZINバンタム級王座決定戦で対戦し、1RにTKO勝利。井上選手と瀧澤謙太選手は初対決となります。
海 フレッシュなカードを組むとなったら、まず瀧澤選手との対戦になるのかな。僕も瀧澤選手もすでに扇久保選手と戦っているから。そうなったらそうなったで、普通に倒せるなというだけですね。それは他の2人に対しても同じで、扇久保選手が来たら面倒くさいなというのもないですし。3人の分析をしっかりして、この選手にはこう戦うという組み立てはある程度できている。当日抽選でも大丈夫というのは、そういうこともあるんです。でも、それって他の3人も同じじゃないですかね。
──一昨年の大晦日はマネル・ケイプ選手、昨年の大晦日は堀口恭司選手に敗れています。「大晦日のメインで三度目の正直」の思いは強い?
海 もちろん、その思いはありますけど、そこにこだわっているわけでもないです。このトーナメントは俺が優勝しなきゃいけないなという、自分のなかでの責任感があるので、三度目の正直というよりは、このトーナメントを絶対に優勝する。そのことを強く決めている。それが率直な心境です。
──かねてから公言しているように、優勝後は「海外進出」が大きな目標になりそうですね。
海 トーナメント中は海外からのオファーはないですけど、優勝した先に話が来る可能性は十分あると思うし、そこでどういう状況になるかですね。たとえばベラトールでのトーナメントを開催するという話もありますし、そうなればそっちに参戦するというのもありだと思うし、UFCから話がもらえるようならUFCへ、という可能性もあるだろうし。僕のなかではあくまで「UFCでチャンピオンになる」という目標があるので、そこに行くための最短ルートを探したいなと思います。
──10月末のUFC267では、ランク1位のピョートル・ヤンと3位のコーリー・サンドヘイゲンが対戦しますが、UFCバンタム級はまさに群雄割拠であり、ベスト10のどこを切り取っても怪物揃いです。
海 でも、それを言ったらバンタム級に限らずどの階級も化け物ばかりだし、本当にキツい世界ですよね。それぞれ寝技が得意、打撃が得意といってもすべてのベースが高いところにある。たしかに、シンドい道のりです。今はRIZINのトーナメントに集中していますけど、ふだんはバンタム級の動画を見ながら、この選手と戦うにはこの技術が必要だとか、自分ならこう戦うとか考えてます。ランキングに入っているなかでも、この選手なら戦えそうだな、勝てそうだなと思う選手もいますし。でも、誰とでも全然やれるなと思っていますね。
──他競技に目を移せば、MLBの大谷翔平選手やプロボクシングでは井上尚弥選手など、世界に割って入るだけでなく頂点に立つ、あるいは立たんとするアスリートもいます。彼らの活躍をどう見ていますか。
海 大谷選手や井上尚弥選手のように、日本を背負って海外で活躍している選手はすごいなと素直に思いますし、自分もそこを目指したい、その先へ行きたい。そこが自分の最終目標です。でも、たとえば日本で無名のまま海外で戦っても、やっぱり目に触れる機会は少ないですよね。だからこそ、日本で格闘技を広めて、みんなに応援してもらえる状態で海外に挑戦したいとずっと思ってきました。まだまだだとは思うけど、少しずつ格闘技が広がって来たという実感もあるので、それを背に来年には海外でやりたいですね。
──海外でのトレーニングや調整も視野に入れていますか。
海 コロナの影響もあって、日本で体勢を整えるというのが今、一番できることだとは思いますけど、このトーナメントが終わったら、海外に練習に行こうと思っています。まずはスポットで何ヵ月か。いろいろ話を聞くより、自分が行って実際に体験しないと分からないことがほとんどだと思うので。
──RIZINで二度、対戦経験があり、現在はUFCを主戦場とするマネル・ケイプ選手とは、ふだんからやり取りをしているようですね。
海 ケイプもよく連絡をくれて「俺たちが一緒に練習することが、お互いのためにベストだと思うから、一緒にやろうよ」と言ってくれています。それを含めて、行くと決めたらいくつか拠点になりそうなところはあります。海外で日本人が活躍する姿って、応援するほうもワクワクするじゃないですか。僕もファンになってくれた人たちを一緒に・世界・へ連れていきたい。その前に、もちろんRIZINのトーナメントで優勝する姿を見届けてもらうことになると思います。

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