格闘技

UFCで秒殺TKOを決めた佐藤天。UFCと契約した当時(2019年4月)のインタビューを全文掲載!

──当時は多くの選手がUFCを目標にしていましたが、なかなか日本に定着せず、RIZINが誕生し風向きが変わり始めました。
佐藤 自分にとっては、RIZINとどっちに価値があるのかを考えるとUFCでした。
──RIZINをテレビで見ていてMMA原体験であるPRIDEを継ぐイベントという風に見ることはなかったですか。
佐藤 そうであっても、UFCのレベルの方が高いですから。RIZINに出て、そこでトップになって周囲にチヤホヤされても、自分にウソをついている気がするんです。プロとして有名になることも大切だと思います。でも強くなってから、有名になる。有名になるという部分ははオマケで良いです。
──UFCは日本大会もなくなり、存在感も薄くなる一方で、日本人の新規契約はない。そんな状況で昨年7月にパンクラスのウェルター王座決定戦で元UFCファイターのグライコ・フランサに敗れました。その時も想いは揺るがなかったですか。既にONEは相当に台頭してきていましたが。
佐藤 その前の3月に一度代役で打診があったので、タイトルを取ればUFCだと思っていました。あの負けは落ち込みましたが、また勝ち続けてUFCに行くぞと思うようになったのも早かったです。きっと性格が粘着質なんでしょうね。
──アハハハ。ずっとやり続けているからこその粘りです。


佐藤 しっかりと練習し続けていれば強くなれる。実際に強くなっている感覚もあったので諦めることはなかったですね。あの時はパンクラスも、すぐにオファーをくれましたし。
──10月のマット・ベイル戦ですね。豪州MMA2冠という強豪でした。
佐藤 勝てばUFCへの可能性がまた広がる相手を呼んでくれたパンクラスには本当に感謝しています。実はイヴォルブММAの所属選手の試合前にスパーリング相手としてシンガポールに呼ばれたことがあり、その関係からか、ONEから長南さんにオファーがあったんです。でも長南さんは、UFCで戦いたいということをチャトリさんに伝えてくれて、それでも納得してくれないなら自分の口から説明しろって、断ってくれたんです。
──おお、長南さんも漢ですね。
佐藤 交通事故で亡くなった秋葉(尉頼※2016年8月に逝去)と「俺はUFCで勝つ」って約束していたし、まだ諦めるわけにはいかなかったです。勝手に自分がした約束ですけど、秋葉のことがあってUFCで戦いたいという気持ちはさらにブレなくなりました。
──その直後にイヴォルブMMAのトライアウトを受けたのは?
佐藤 やはり練習をするだけで給料をもらえる境遇というのはなかなかないモノですし。2回目の面接は事前に「深いことも聞いていくので、20分ぐらい時間が掛かる」と言われていたんです。でも最初の質問で、ONEで戦うことについて聞かれ「僕はUFCに出たい」と返答した時点で、もう合格はないなと(笑)。
──練習環境でいえば、フロリダにある出稽古先のハードノックスの方が、今のイヴォルブMMAより上かもしれないですしね。
佐藤 ハードノックスで学んだことは、強い選手ほど練習するということでした。3月にUFC世界ウェルター級王者になったカマル・ウスマンが、デミアン・マイアに勝った試合で拳を骨折したのに、3日後にはギブスをしていない方の拳でサンドバッグを叩いていました。日本人は力で遅れをとっているのに、練習量も少なくてどうやって強くなれるのかってことだと思います。UFCで勝っている選手は、最低条件として人より練習しています。だから技術的に成長したのもありますが、危機感を覚えるという部分でもハードノックスで練習して良かったです。
──そして、ついにUFCからオファーがありました。
佐藤 一度、2月の豪州大会で可能性があるという話を貰い、結局そこはなかったのですが、いつ声が掛かっても良いように準備だけはしていました。そうですね……UFCと契約できるとなった時、やはり秋葉のことを思い出しました。でも、アイツと約束したのはUFCで勝つことだったので、墓前には勝ってから報告に行こうと思います。
──とてつもない世界です。跳ね返されるかもしれない。
佐藤 ハイ。UFCは気持ちだけではどうしようもないところです。だから誰よりも格闘技のことを考えて、真摯に向き合うことが一番大切だと考えています。色々なモノを捨てないと、辿りつけないです。ようやく契約ができました。でも、ここからです。UFCと契約するまでは練習試合──自分にとって、ここまでがアマ修斗のつもりでやってきました。
──おおっ!!ついにこの時を迎えたのですね。


佐藤 ついにこの時が来たのですが、まだまだこれからです。次の試合はデビュー戦のつもりで戦います。そして長南さんを初め、パンクラスの皆さん、練習仲間、トレーナーの人たち、応援してくださっている人々、僕に関係してくれた全ての人に感謝しています。皆さんから受けた恩は、結果で返します。
──しっかりやれば強くなれるという佐藤選手の根幹部分、いつまでも大切にしてほしいです。
佐藤 ハイ。去年、タイトル戦に負ける前は本当に調子が良くて、最高の状態だったんです。でも今、あの時の練習の動画を見たら、なんであんな動きをしているんだって思うんです。動きだけでなく、頭も成長してきたので……。でもまだまだ未完成だし、もっと強くなれます。

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Takashi Sato
1990年6月9日、東京都出身
身長180㎝、体重77.0㎏
パンクラス 第20回ネオブラッド・トーナメントウェルター級優勝

取材・文・撮影_高島学
[Fight&Life Vol.72]2019年4月23日発売号掲載

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