日本選手権9連覇、そして2016年には世界選手権を制した鈴木雅選手と、21歳で日本選手権覇者となるという快挙を成し遂げた相澤隼人選手の対談がここに実現。日本、そして世界で頂点を獲るための身体の作り方、弱点の克服法、チャンピオンとしての心構えなどなど、大いに語ってもらった。
取材・文:藤本かずまさ 写真:岡部みつる
鈴木 まずは優勝おめでとうございます。今回の日本選手権では、相澤選手への期待の声も高かったと思います。そうした中で優勝を飾り、安心した部分もあったのではないですか?
相澤 安心しました。2019年に東京選手権で優勝したときは、プレッシャーをすごく感じていました。期待していただけることはすごくありがたいことなんですが、試合前にメンタル的にキツくなったことがありました。 そうなるとトレーニング以外でも、栄養を摂取の面であったり私生活の面でも影響が出てくるので、今年はそうならないように心がけました。気負うことなく気持ちに余裕を持ちながら減量できたのが大きかったと思います。
鈴木 2019年には日本クラス別選手権と日本選手権などでトップ選手の方たちと同じステージに並びました。日本選手権優勝を目指すにあたって、そこで感じた課題点もあったと思います。
相澤 これは僕自身もそうだったんですが、ボディビルでもメンズフィジークでも、最初の段階では身体を広げるということにフォーカスしがちだと思うんです。 最初から身体の厚みをつけようということはそんなに多くないと思います。僕も広い身体、最初に正面から見たときのインパクトが強い身体を作るためのトレーニングをしていたのですが、トップ選手の方々と実際に並んでみたときに、明らかに身体の厚みが違いました。フロントポーズを取っても立体感が違うといいますか。
鈴木 重量感ですね。
相澤 そう、重量感です。そこを改善するために、厚みをつけることを第一優先にしてきました。
鈴木 2019年から2021年までの2年間はそこを重点的にやっていたということですね。
相澤 そしてもう一つ重視したのは、減量でなるべくキツくなりすぎないように、うまくブレーキをかけながら行うことでした。
鈴木 いかにして筋量を残すというところですね。
相澤 僕の場合は大殿筋とかハムストリングとかをしっかり絞ろうとすると上半身が持っていかれ、上半身の筋量がなくなって、全体的に重みがなくなってしまうように見えるんです。そうならないように、カロリーを制限しすぎないようにしました。
鈴木 シーズン中のトレーニングもオフと内容を変えずに?
相澤 トレーニングは2年くらい変えてないです。少しずつ変えている部分もあるのですが、ベースを崩しません。使用重量に関しても落とさないようにしました。ただ、ピークの重量をなるべく維持しつつも、プレス系種目はレップ数が落ちてしまいました。ベンチプレス170kgで4~5回できていたのが、最後のほうは1、2回しかできませんでした。ここでカロリーを増やしすぎると仕上がりが甘くなってしまうので、その匙加減は今後考えていきたいです。
鈴木 チャンピオンにこういう言い方は失礼かもしれませんが、実際に日本選手権では筋量がしっかりと残っていたという印象を受けました。2019年のときよりも全体的にしっかりと大きくなっていました。また筋肉のセパレートもしっかりと出ていました。
相澤 全体的にバルクアップできたのは年齢的な部分もあると思います。中でも特に意識していたのは大胸筋とミッドセクションです。僕には肋骨が開いてしまう癖があって、そこが閉められるようになるとリラックスポーズなどの見え方も変わってくると思います。今後の課題です。
鈴木 他にも課題はありますか?
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