脂質はエネルギーの塊であるとともに、おいしさのもとであることも特徴です。おいしいものを食べようとすると、大概は脂質が含まれています。脂質を含んでいないタンパク質はほとんどありません。タンパク質の増加は身体づくりには望ましいことですが、同時に脂質も増えることで問題が生じてきます。脂質の持つカロリーは炭水化物やタンパク質と比べて高いため、脂質を抑えるダイエット法は一般的に広まっています。ただし過剰摂取の逆で、過剰に抑えすぎると、重要な栄養素であるがゆえにさまざまな弊害が生じる点も認識しておく必要があります。
文:Woman’sSHAPE編集部
脂質を抑えすぎることによるデメリット
性ホルモンの分泌が弱まる
女性ホルモンや男性ホルモンといった性ホルモンはどちらも大元はコレステロールという脂質が材料となって作られています。そして細胞膜も脂質ですし、脳も脂質とタンパク質で構成されています。つまり身体の重要な箇所は脂質を必要としているのです。その脂質を悪として極端にカットし続けると、細胞膜は脆くなり、性ホルモンの分泌も弱くなっていくなどボディメイクは逆に進みにくくなります。
ホルモンの中でも性ホルモンは作られていく過程が複雑で、いくつかのルートを経由して作られるのですが、一番メインの流れでは、まず最初にコレステロールから男性ホルモンが作られます。男性ホルモンの一番のスタートは、「デ・ヒドロ・エピアンドロステロン」というホルモンで、DHEAという名前でアメリカなどではサプリメントとしても売られています(ただしこれ自体の摂取はドーピングの対象となります)。このDHEAがスタートになってテストステロンなどのいわゆる男性ホルモンがつくられていきます。そしてそこからエストロゲンなどの女性ホルモンに変化していくという流れとなっています。つまり、男性ホルモンから女性ホルモンが作られるのです。当然女性は、女性ホルモンに変わる量が多いのですが、脂質を一切カットするなどしていると、作る機能はあっても材料が足りないという状態になります。そういう意味でも、極端な脂質のカットはお勧めできないのです。特に女性は月経の影響もあって男性以上に性ホルモンに密接ですから、上手な脂質のコントロールをしなくてはなりません。
肌荒れ
実は私自身もいくつかの実験をかねて何年に一度かは、本気の減量をやります。あるとき5ヵ月間くらい脂質を1日に10g以下に抑える減量をしました。鶏のささみにもわずかな脂質は含まれていますし、プロテインでも純度が低いものは脂質が含まれるので、脂質摂取を0にもするのは現実的には難しいのです。実質0を目指して1日10g程度になるくらいです。そのときは途中までは順調に体重が落ち、カーボとタンパク質は従来以上に摂取していたので筋肉を維持でき、とてもいい減量法だと思っていました。ところがある時期から、皮膚がボロボロになり崩壊しするようになってしまいました。特にコンテストを目指す場合は日焼けをするのでその影響もあったかと思いますが、まるで肌が魚のうろこのようになってしまったのです。湿疹もでき、自分でも細胞膜が弱っていることを感じられるような状態でした。競技を目的とした場合でも極端に制限しすぎると、デメリットのほうが大きくなる失敗例といえます。
教えてくれたのは…… 桑原 弘樹(くわばら ひろき)
桑原塾 主宰。スポーツサプリメント『パワープロダクション』の産みの親。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&トレーナー協会)PDA。武藤敬司氏率いるW-1(レッスルワン)コンディショニングコーチ。国内外のトップアスリートに対して独自のコンディショニング指導を行い、各種スポーツ誌への執筆や講演会を実施するなど多方面にわたって活動中。