シェイプ&ビューティー

【解説編】1日2万回の呼吸の質を高めたら、どんな変化が起きる?

 

基礎代謝や自律神経、姿勢不良にも深く関わるという呼吸の質を高めたら、私たちの身体と心にどんな変化が起こるのでしょうか。興味津々のフィットネストレーナー、Shiecaさんが、ピラティスのマスタートレーナー、菅原順二さんに呼吸の大切さや極意を学びます。1日平均2万回以上ともいわれる呼吸について、改めて見直してみましょう。

Shieca(シエカ)
1979年生まれ。フィットネストレーナー/ReebokONEアンバサダー。
運動経験ゼロであったが、体型の崩れをきっかけに2007年、27歳で筋力トレーニングを開始。JBBFボディフィットネスに出場し、東京・関東(初代)・東日本(初代)大会チャンピオンとなる。
2010年に全日本大会準優勝、11年東アジア選手権代表に選出。実体験も交えながら、トレーニングや食事など日々のケアを提案する活動を展開中。
Instagram:@shie.ca

菅原 順二 (すがはら じゅんじ)
1978年10月28日、東京都出身。
全米公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)。
Body Element Pilates マスタートレーナー。トレーニングスタジオ アランチャ代表
。法政大学ラグビー部でプレー後、単身ニュージーランドへ渡りNZISに入学、トレーニング学などを学ぶ。帰国後ピラティスと出合い、マスタートレーナーの資格を取得。
パーソナルトレーナーとしてラグビー選手、プロ野球選手などトップアスリートを指導するかたわら、全国を周りピラティス、マスターストレッチ、ボディキー、呼吸法などをレクチャーしている

シエカ 菅原さんはピラティスなどを取り入れたパーソナルトレーナーとして、トップアスリートやモデルの方を数多く指導されています。男性でピラティスの指導をされるのは、ちょっと珍しいですよね。まず、ピラティスとの出会いから教えてください。

菅原 もともと僕はラグビーをやっていて、ニュージーランドにも2年ほど行っていたんですね。その時に練習のかたわらトレーナーやコーチングの勉強もしていて、帰国後はラグビーのコーチやトレーナーから仕事をスタートさせました。トレーニング関係の知り合いの方からピラティスを紹介されたのは、今から10年ほど前です。

シエカ ピラティスにはすぐに興味が湧きましたか?

菅原 いえ、最初はイヤイヤやっていました(苦笑)。やはり女性やダンサーの方がやるイメージがありましたし、無駄な筋肉がついているせいで体が硬くて、動きも全然できませんでしたし。

シエカ それが今ではマスタートレーナーに。続けているうちに、良いところに気づいた?

菅原 そうですね。ピラティスはもともと傷病兵のリハビリのために開発したものですし、ヨガも女性に門戸が開かれてまだ100年ほど。今のファッショナブルなイメージはまさに〝変化球〟なんですよね。そうした本質を知るにつれて、どんどん面白くなっていきました。でも、ヨガもピラティスも筋トレも実は万能ではなくて、足りない要素を埋めることが大事だと思っています。

 

そもそも「呼吸」のしくみってどうなってるの?

シエカ 自分の軸とするものをより良くするために違う視点から見ていくと、「こういうことだったんだ」と、いろいろな気づきがありますよね。菅原さんのようにスポーツやコーチングの経験があって、そこからピラティスに入っていくと、いろいろな視点から体や体の動きを見てくれるので、トレーナーとして心強いですね。そんな菅原さんが、なぜ呼吸に興味を持ったのですか?

菅原 ヨガもピラティスも呼吸をすごく大事にしているんですね。僕が選手だった時は呼吸法なんて考えず、トレーニングの時に息を吐きながらやるというくらい。フィットネスクラブのマニュアルでも「血圧が上がらないために呼吸を」という程度でした。でもピラティスを勉強していくと、もっと深いことがたくさんあって、今ではドツボにハマっています(笑)。

シエカ たしかに、呼吸ってあまりに無意識にやっているから、考えたら知らないことばかり。そもそも呼吸のしくみってどうなっているのですか?

菅原 人間は2つの肺で酸素を取り込んで二酸化炭素を吐きだしているんですが、実は肺自体ってそれほど収縮性がないんです。例えるなら、すごく柔らかい素材のゴム風船みたいなものです。

シエカ 膨らませるのも大変そうだし、手を放してもなかなかしぼまなさそうですね。

菅原 そう、だから肺の下にある横隔膜という筋肉を使って胸郭を広げてあげないと、空気が入り切らないし、腹筋群を総動員しないと出し切ることもできない。つまり、汚い空気が体の中に滞留してしまうんです。特に「吐き切る」という作業はとても大事で、それがきちんとできれば、胸郭の中の圧力が高まるので勝手に外気から肺へ空気が入ってくる。

シエカ 吐き切れば、新鮮な酸素を十分、取り込めるということですね。横隔膜や腹筋群のほかに、呼吸のために必要な筋肉ってありますか?

菅原 僕は全身が呼吸筋だと思っています。

シエカ 全身ですか!

菅原 例えば、大きく胸で息を吸い込む時は、肋骨を広げますよね。となると、肋間筋が必要になる。また、肋骨の上のほうを引き上げるためには、首筋にある胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)や斜角筋なども必要になる。そう考えていくと、すべての筋肉が機能して、初めて呼吸が成り立つのだと思います。

シエカ 全身が呼吸筋だとすると、「吸い込む・吐き切る」を意識的に行なうことで、呼吸そのものがトレーニングになりそう。ここまで伺っただけでも、呼吸って深いなと思います。

菅原 ですよね。だからドツボにハマってしまうんです(笑)。

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