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たった2日で1年分の筋肉が減るってホント!?前編[“筋肉博士”石井直方の筋トレ学]

筋肉に優しいトレーニング“スロトレ”ってなあに?

森 自宅でのトレーニングとして、先生は著書の中でスロトレだけでなくクイックトレーニングも紹介されていました。これについての説明をお願いします。

石井 スロトレは筋肉に優しいトレーニングで、ゆっくりした動作で行うことで負荷が軽くても筋肉が強くなりますし、関節や腱に対して急激な力が作用しないので怪我をしにくいという特徴があります。怪我をしない正しい関節の動かし方が身につく効果もあるので、高齢の方のトレーニングにも向いている訳です。
ただ欠点としては素早い動きという要素がないので、続けていくとその動きに慣れてしまい、素早く動くことが必要になった時や筋肉が力を抜かないといけない時にうまく力が抜けなかったりする。だから素早く筋力を出す訓練も絶対必要になります。それがクイックもやりましょうという理由の1つ目。
2つ目は筋肉は動いているものを止める動き=ブレーキとして働く時に、力学的に強い力を発揮します。つまり、バーベルを持ち上げる動作より、バーベルを下ろす動作の方が筋肉に掛かる力学的な刺激が強くなります

森 ネガティブな動作の時の方が刺激が強いのですね。

石井 一般的にネガティブの方が楽じゃないかと感じる人も多いと思いますが、それは筋肉の中で使っている筋線維が少ないからなんです。たとえば8割の数の筋線維を使って上げて、同じように8割の筋線維を使ったら下ろすことができない。ネガティブの時は8割使っていた筋線維を4割しか動員されていないからなのです。
しかし、4割だと筋肉が負荷に耐えられないので、負荷に負けて伸ばされてしまう。筋肉にすれば働いている仲間が減ってしまっている訳で、少ない筋繊維で重さに耐えなくてはいけない。力を出している筋繊維にとっては、うんとキツいことをやらされている、そういう状況です。ネガティブを重視したトレーニングは筋線維そのものに対するストレスがすごく強いので、上手に使うと筋肉をより強く・太くするための刺激として有効なのです。
でも下手な使い方をすると筋肉が壊れます。いわゆるエキセントリックという筋肉をブレーキとして使う動作を多用し過ぎると故障のリスクず基本的な筋力が伴っていないとブレーキ動作というのは筋肉を傷めやすく、腱などにも急激なストレスが掛かることがあり怪我をしやすい危険性があります。ですから基本的な筋力を十分スロトレで養った上でクイックを始めるというのがいいと思います。1回のトレーニングの中では、スローをやってからクイックだと十分にクイックができなくなりますので、最初にクイックをやった方がいいです。クイックをやる時は、速く持ち上げるというよりむしろブレーキを掛けてから持ち上げる、切り返しのところですよね。そこが一番強いストレスが掛かるところなので、その点を注意して行うことです。

森 具体的な例で言うとどんな時になりますか?

石井 例えばパワープッシュアップのようなクイックの腕立て伏せで、一番大事なところというのは地面に手を着いてグッとブレーキを掛けて上げる動作に反転するところです。止めて切り返すところが一番大きな力が出るので、そこをなるべく素早く切り返し動作をするよう心掛けると、強い刺激がガツンと筋肉に加わります。

▷後編に続く[6月3日公開予定]

いしい・なおかた
1955年、東京都出身。東京大学大学院教授、理学博士。
全日本ボディビル選手権優勝(81・83年)、アジアボディビル選手権優勝(82年)ほか、ボディビル競技での輝かしい実績を誇る。トレーニングをテーマに次々にベストセラーを世に送り出す“筋肉博士”。

もり・ひろこ
ソライナ株式会社にて、プロテインや健康食品の企画・開発を行う。
ボディフィットネスでは東京大会4連覇、2016年には8年ぶりに大会に復帰し、関東オープン・フィットネスビキニ163cm超級で優勝を飾る。

取材・文_長谷川亮
撮影_t.SAKUMA
「Woman’sSHAPE Vol.08」より

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