上腕二頭筋という名前を知る前から、多くのトレーニーたちが、いわゆる「力こぶ」に魅了されてきた。小さいころから、特に男の子はダブルバイセップスのポーズをとって大人を微笑ませてきたものだ。どうして肘を曲げて力を入れると上腕部が盛り上がるのか。この筋肉の構造と機能がわかると、ますます腕のトレーニングにはまってしまうかもしれない。
文:Raphael Konforti MS, CPT
翻訳:ゴンズプロダクション
ニュートラルグリップ・カール
上腕二頭筋は2つのヘッドを持つ筋肉で、その深部に上腕筋がある。上腕筋が肥大すると、深部から上腕二頭筋が押し上げられる。肘を曲げることで収縮するわけだが、収縮が起きたときに力こぶが盛り上がる。 上腕二頭筋が腕の表側なら、上腕三頭筋はその裏側に位置している。よく発達した腕は上腕二頭筋と上腕三頭筋の境目がくっきりと分かる。そんなセパレーションを強調するためにおすすめなのがニュートラルグリップ・カールである。
手の甲が外側を向くようにケーブルのハンドル、あるいはダンベルを握る。これが手首のニュートラルポジションで、この角度を保ったまま丁寧にカール動作を行う。この種目を行うことで上腕二頭筋の外側のヘッドが刺激を受け、腕の幅が広がり、上腕三頭筋とのセパレーションをはっきり刻むことができるはずだ。
馬蹄形の上腕三頭筋をつくる
上腕三頭筋は3つの筋膜で構成されている。
◆長頭:肩甲骨の外側に始点を持ち、肘関節をまたいで尺骨に終点している。
◆内側頭:上腕骨下部に始点を持ち、肘関節をまたいで尺骨に終点している。
◆外側頭:上腕骨上部に始点を持ち、肘関節をまたいで尺骨に終点している。
上腕三頭筋の構造を知っておくことは、バランスの取れた上腕三頭筋をつくるのに役立つので、機会があれば解剖図で確認しておくといいだろう。
腕の背面に位置する筋肉なので、上腕二頭筋ほど目立たないと思うかもしれないが、よく発達した上腕三頭筋は、正面から見ても長頭と外側頭の形が分かる。
また、内側頭は短いのだが、この筋腹が肥大すると上腕三頭筋が盛り上がり、迫力が増してくる。ただ、内側頭に関して言うと、胸のベンチプレスなどでも間接的な刺激を受けているため、内側頭の発達が遅れているというケースはそれほど多くない。
外側頭のためのニュートラルグリップ・エクステンション
上腕三頭筋の外輪郭を形成するのが外側頭だ。外側頭が肥大すると、正面から見ても上腕三頭筋の大きさが分かる。外側頭を刺激するにはニュートラルグリップ・ライイング・ダンベルエクステンションがいいだろう。
この種目では、まずベンチ台に仰向けになり、手の甲が外側に向くようにダンベルを握る。手首の状態をそのまま維持しながら、肘を曲げてダンベルを頭の横に下ろしていく。動作中、上腕部は天井に向けたまま固定する。ダンベルを頭の横に下ろすときは肘が開いてしまわないように注意しよう。
長頭のためのケーブルキックバック
上腕三頭筋の内側の輪郭を際立たせるには、上腕三頭筋の長頭をサイズアップさせる必要がある。外側の輪郭と内側の輪郭がはっきりしてくると「馬蹄型」の上腕三頭筋を完成させることができるのだ。
内側の輪郭を形づくる長頭を刺激するなら、ケーブルを使ったキックバックがおすすめだ。キックバックは、一般的にはダンベルを使って行われることが多いが、ダンベルだと負荷がかかるのはトップポジションに限定されるという欠点がある。そこで、終始負荷がかかった状態を維持するためにケーブルを使ってのキックバックをぜひ採用してほしい。
ケーブルにはロープハンドルを取り付けてもいいし、あるいはハンドルを取り付けずに、ケーブルをそのまま掴んで行ってもいい。ケーブルを握ったら上体を前傾させ、上腕を床と水平に保ち、肘の位置を固定する。この姿勢を保ったまま、肘の曲げ伸ばしによって前腕で弧を描くように動作する。トップポジションでは意識して上腕三頭筋を収縮させるようにしよう。