トレーニングを継続していくと、いずれは身体に顕著な変化が見られなくなったり、使用重量も頭打ちになったりするものだ。そうした中、ボディビル競技で活躍する嶋田慶太選手はどのようにして短期間で激変、ブラッシュアップしていったのか。かっこ良すぎるボディビルダー嶋田選手の転機を聞いた。
取材:藤本かずまさ
僕の中での転機は2018年から19年にかけての1年間です。18年のジャパンオープンでは、僕は予選落ちしてしまいました。
その大会は僕にとって3年ぶりの復帰戦で、すごく失礼な言い方になってしまいますが、仕上がりは甘かったんですが予選は通過できるだろうと思っていたんです。
でも、予選ではエネルギーを温存するためにパンプアップせずにステージに臨んだら、そのまま落ちてしまって…。応援してくれた方々、同じステージに立った選手たちに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
予選落ちを経験したのは、そのときが初めてでした。そこではいろんなことを考えました。悔しかったと同時に、応援してくれる人たちの思いも、すごく感じました。 勝っているときは、みんな応援してくれるんです。でも、負けたときにも応援してくれる人たちの支えがとてもありがたく感じました。ここから勝ち上がって、もう1回みんなと笑い合いたいという思いが強くなっていきました。
当時、僕は福岡のゴールドジムに通っていたのですが、そのころは自宅からジムまでが50㎞ほど離れていて、往復するのにものすごく時間がかかっていたんです。
そうした当時の環境には、限界を感じていました。そして、18年の日本選手権が終わった直後に会社に退職願を出して、ジムに通いやすい福岡市内に引っ越すことにしたんです。
すると、睡眠時間を多く取れるようになり、身体が回復するのでトレーニングの質も全体的に上げることができました。特に試合前は気持ちが先走って、回復を後回しにしがちですが、睡眠は重要だと思います。トレーニングができる環境が楽しくて、楽しみながら調整を進められました。
天然の食材から栄養を摂ることを心掛け筋肉の密度やハード感が向上
また、食事にはすごく気を使いました。サプリメントには頼りすぎずに、できるだけ天然の食材から栄養を摂ることを心掛けました。
例えばタンパク質も、プロテインパウダーに頼りすぎず、できるだけ食事から摂取するようにしました。身体も変わっていったように感じています。筋肉の密度や皮膚のハード感などがよくなったと思います。
咀嚼して、胃で消化して…と内臓が働くので代謝も上がって、身体が熱を持つ感じになるんです。これがプロテインパウダーのみだと、消化の必要がないから身体が熱を持たず、ハードな仕上がりにはならないと感じました。内臓をちゃんと働かせることの重要性に気づきました。
特に気を使ったのは1日の中で最初の食事になる朝食です。これはタンパク質の食材にもよるんですが、僕の場合はタンパク源が卵白だけだと、すぐに吸収されて身体が熱を持たないんです。だからお魚とかお肉とかを積極的に食べるようにしていました。
18年に初めて日本選手権に出場して、鈴木(雅)選手にはすでに別格の存在という認識を持っていたんですが、合戸孝二選手、木澤大祐選手、松尾幸作選手に衝撃を受けたんです。こんなに違うんだと、レベルの違いを痛感しました。「人生を懸ける」というと大げさな表現になってしまいますが、日常生活を懸けて戦わないと追いつけないと感じました。だからこそ、食事はしっかりと管理するようにしていました。
だから、僕の場合、オンもオフもないんです。オンだけでなく、オフのときにどれだけ集中できるか。そこで結果は変わってくると思います。
僕は細いところは細く、太いところは太く、というメリハリをつけたいと思っています。僕の場合、ポイントはウエストだと思っているので、普段から肋骨が広がらないように気を付けています。
これはトレーニングだけでなく、日常生活でもできることです。理想の身体に近づくには、そういった部分の積み重ねが重要だと思います。