ウエイトトレーニングに筋肉痛はつきものだ。ストレッチをすることで筋肉痛を和らげることができるのであればやるべきだ。そして、どの種類のストレッチがいいのかを知っておくことは筋肥大を目指すアスリートにとって決して無駄にはならない。
文:Sarah Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション
疲労回復の役立つストレッチ
筋肉に強い負荷がかかるウエイトトレーニングは、筋疲労や筋肉痛をもたらす。ウエイトトレーニングで受けた衝撃が大きければ大きいほど、ワークアウト後の筋肉痛(遅延性筋肉痛:DOMS)の程度も大きくなる。
しかし、筋発達を促すためには次のワークアウトまでにできるだけ疲労を回復させておきたい。そのためにストレッチを行うなら、静的ストレッチをワークアウト後に行うことが推奨されてきたわけだが、本当に静的ストレッチがDOMSの解消に役立つのだろうか。
それを調べる実験が2011年に、オーストラリアで行われたので紹介しておきたい。この実験には2500人の被験者が参加した。被験者は指定のワークアウトを行い、その後にストレッチを行ったのだが、筋肉痛を緩和する効果については、100点満点中1~4点という極めて低い評価しか得られなかったのだ。
この実験結果をどう受け止めるかは個人によって異なるだろう。しかし、疲労回復の効果がたとえわずかしか得られなかったとしても、ワークアウト後の静的ストレッチは積極的に行うべきだと私は考える。少なくともストレッチによって柔軟性を向上させる効果は得られるのだから、ワークアウト後の静的ストレッチが完全に無駄になるとは言えないはずだ。
『アプライド・フィジオロジー、ニュートリション&メタボリズム』誌に掲載された2018年の実験がある。この実験では被験者たちに高強度のネガティブ運動を行ってもらい、その後、ストレッチを行わないグループ、高強度の負荷をかけた静的ストレッチを行うグループ、低強度の負荷をかけた静的ストレッチを行うグループに分け、ストレッチ後の筋肉痛緩和や疲労回復を知る様々な要素が調べられた。
実験の結果、低強度のストレッチは筋肉痛の緩和や疲労回復に対して弱い作用が見られた。また、ストレッチを行わなかったグループや高強度の負荷をかけたストレッチのグループではそのような効果は得られなかったようだ。
低強度のストレッチは、筋肉のダメージや炎症を示すマーカーに変化をもたらすほどの影響力はなかったが、高強度のストレッチではマーカー値が上昇し、ダメージや炎症を悪化させたことを示した。
これらの実験結果から、静的ストレッチは全身のリラックス、筋肉の緊張緩和、疲労回復の促進をもたらすのに有効であるということが分かる。たとえその程度は緩やかであったとしても、全くストレッチを行わないよりもいいのである。
静的ストレッチとは
静的ストレッチとは動作を伴わないストレッチだ。つまり、筋肉を伸ばす姿勢を作ったら、その状態をじっと保つ。保持する時間は最長で45秒間である。静的ストレッチは、ストレッチする部位にもよるが、立位姿勢、座位姿勢、仰臥姿勢で行うことができる。どの姿勢を選択する場合も、対象部位が心地よい範囲で伸ばされた状態を、安定した姿勢で保つ必要がある。また、痛みを伴うほどのストレッチは無用であり、避けるべきである。