――そのチャレンジの内容をお聞かせいただけますか。
田代 テーマは1年ごとに変えていきます。復帰した1年目、2012年は究極的に絞ってみました。以前は究極まで絞り込んだことは3、4回ほどしかなく、少し余力を残していた状態で仕上げていました。でも、12年は絞り込んでみました。2年目は、絞りの技術は向上した実感があったので、高重量を扱ったり、セット数を増やしてみたりしてバルクアップに努めました。3年目は世界選手権で3位になったんですが、このままでは優勝できないと感じました。優勝した選手は、ものすごい脚をしていたんです。かといって、自分の脚を強化するにしても、スクワットはこれまでにやり込んできました。そこで登山を取り入れることにしました。
――よく登山という発想が出てきましたね。
田代 もともと登山は少しやっていて、またカーディオも一緒にやりたかったんです。登山をハードに行えば、脚の成長につながるのではないかと考えました。結果、脚はかなり改善されました。ですが、体が疲れすぎてしまい(苦笑)、全体として見たらマイナスでした。それを受け、4年目は体のケアを考えました。5年目はバルクアップをしたかったので、食事を考えるようになり、またトレーニングでもセット数を少し増やしました。去年は自分としては納得できる体をつくることができました。しかし、世界選手権の前は仕事が立て込んで徹夜をしたりと、トレーニングがあまりできませんでした。やはり結果も伴いませんでしたね。
――そういったときにストレスや焦りを感じることは?
田代 ありません。それは仕方がないことですから。仕上がり、バイオリズム、仕事面などすべてが合致したことは過去に一度もないんです。いつも、何かが欠けています。
――21時からトレーニングに入れるよう、スケジュール通りに仕事を終わらせるために気をつけていることはありますか。
田代 自分で決めた時間は絶対に守る、ということです。私は自分のスケジュールはきっちりと管理しています。やることを決めておいて、何かイレギュラーな事態が生じた場合は修正をかけながら進めていきます。
――スケジュールは、いつ組み立てるのですか。
田代 3カ月前です。私は3カ月分のスケジュールはきっちりとつくります。もちろん急な会議などもあるため、そのつど修正していくことにはなります。そして直近1カ月分は濃密なスケジュールが、直近1週間分はさらに修正がほどこされ、より濃密なスケジュールができあがります。
――忙しくてトレーニングができない、という人も多いです。
田代 固定観念にはとらわれずに、やり方を模索する必要はあるかと思います。例えば、睡眠時間を6時間とっていたとしたら、それを5時間にすることで1時間を捻出できます。「忙しいから」と最初から諦めるのではなく、生活の中を見直してみると、無駄な時間はけっこう出てくるものなんです。無駄なことをしない、それはイコール・スケジュール管理をきっちりと行うということです。
――タイムマネージメントをしっかりと実践して、トレーニング時間を確保していくのですね。
田代 まず自分の計画を完璧につくることです。しかし、社会生活を営んでいく上でイレギュラーな事態は絶対に発生します。100パーセントの計画をつくった場合、イレギュラーな事態が生じたら、タスクの達成率は80パーセントほどになります。80パーセント達成できたら、「ここまではできた」という精神的な余裕も持てるはずです。
――睡眠時間の確保については?
田代 寝ていなくても、意外と大丈夫なもんですよ。
――最低限の睡眠時間は何時間くらいを想定しているのですか。
田代 私の場合は3時間です。3時間寝られるのであれば、トレーニングをします。次の日に重要な何かがある場合はやめたほうがいいですが、3時間寝れば一応、疲れはとれます。これが毎日続くときついですが、1日だけだったら大丈夫です。
――今回は社会人トレーニーとしての時間の使い方の重要性について教わりました。
田代 計画を中途半端につくってしまっている方は、そこにイレギュラーな事態が発生すると、達成率も格段に下がります。80パーセントの計画しか立ててない人が、その中の8割しか達成できなかったとなると、達成は64%になってしまいます。そうならないためにも、自分の計画は完璧につくっておくべきです。30 分しかトレーニングができなくても、しっかりと行えば、それなりの効果はあります。トレーニングを短時間で終わらせられる手法を身につけるなどの工夫もできると思います。
田代誠(たしろ・まこと)
(株)THINKフィットネス取締役ゴールドジム事業部 事業部長1971年生まれ。鹿児島県出身。身長164㎝、体重72kg。JBBF日本ボディビル選手権大会4連覇(2001年~2004年)IFBB2013世界ボディビル選手権70kg級3位
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。
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