肩甲骨の位置
広背筋に効かせるためには、ストレッチポジションから、肩甲骨を下方回旋させる必要があります。広背筋、大円筋は上腕骨の少し内側が停止部となるので、上腕を内旋する動作ではあまりストレッチさせることができませんが、外旋すると伸びやすくなります。逆に肩甲骨を下方回旋させない状態ですと、大円筋に効いてきます。
私はラットプルダウンでオーバーグリップで握ると、上腕が内旋気味になり、肩甲骨が下方回旋しにくく、大円筋ばかり効いてしまいます。そのため、広背筋に効かせる場合は、パラレルグリップのアタッチメントを使い、上腕を外旋させて肩甲骨を動きやすくしています。
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座り方と足幅
シートに座ったときに骨盤を立てていないと上体が少し丸くなり、肩甲骨を寄せづらい状態になります。アウトラインを狙うなら骨盤は立てるようにします。 また、引き方には「上体を前方に突っ込むようにして引っ張る」「胸を張って体を伸ばして引っ張る」の2種類があります。上体を前方に突っ込むようにして引っ張ると肩甲骨が挙上し、屈曲の筋肉が働きやすくなります。屈曲動作で引っ張ると、肩甲骨が下がりにくいので大円筋に効きやすくなります。
広背筋は、体を伸ばしたときに働く筋肉です。そのため、胸を張って体を伸ばすようにして引っ張るようにします。それには足の位置も考えていく必要があります。膝の角度が鋭角になっている状態では、つま先で床を蹴り、大腿四頭筋で踏ん張って、上体が前方に突っ込みやすくなってしまいます。
膝の角度を90度にすると、肩甲骨を下方に寄せやすくなります。このときに使われている下半身の筋肉はお尻、大腿筋膜張筋などです。足幅に関していえば、肩幅ほど広く開くとお尻で踏ん張ることができ、上体を後ろに倒して体を伸ばしやすくなります。逆に腰幅程度の狭いスタンスでは屈曲動作となり、大円筋に刺激がいきます。
上体の角度と頚反射
ラットプルダウンを上体を立てた状態で行おうとすると、引いたときに脇が締まります。そこから少し後方に倒して引くと、より下に肘を引くことができ、広背筋の中部、下部に刺激がいきます。 ハンマーストレングスのラットマシンは、その軌道から、上体をそこまで倒さなくても、胸を張って引けば広背筋の中部、下部にヒットします。ここで注意しなければならないのはシートの高さです。
背中のトレーニングではシートの設定も大事になってきます。例えばシートの位置を低くすると、引き付けた際の肘の位置は高くなります。逆にシートを高くすると、肘の位置は低くなります。大円筋か、それとも広背筋か。どこを狙うかによってシートの位置を決めるようにしましょう。頚反射も大事です。顎を軽く引くと肩甲骨が挙上して屈曲動作になります。まっすぐ前を向くと体が伸びて、肩甲骨が下方回旋します。顎を上げると腹圧が抜けてしまい、腰を痛める可能性があるので、なるべく顎は上げないようにしてください。
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グリップについて
アウトラインを狙いたい場合は、薬指、小指中心で握るようにします。小指、薬指、中指の半分は尺骨神経に支配されています。この神経は上腕骨の外側を通って、上腕三頭筋、三角筋の外側、そして背中へとつながっています。つまりは体のアウトラインに走っている神経なのです。
よく間違えがちなのが、サムレスグリップを使うことです。私は大円筋を狙いたい場合以外はサムレスグリップは推奨していません。腕橈骨筋が働いて、肘を絞った動作になってしまうからです。ラット系種目で広背筋を狙いたい場合はサムレスグリップはNGです。 また、引いた状態のまま耐えすぎて、そこからネガティブで効かそうとしても、結果的に上腕二頭筋で耐え、肩を上げて戻すような動作になります。耐えて戻そうとすると、親指、人差し指中心で握りがちです。それでは肩甲骨が上がってしまいます。戻すときは、小指側で保持するようにしましょう。
指の第一関節中心で握るか、第二関節で巻いて握るかでも、効き方はかなり変わってきます。第二関節を中心に指を巻くようにして握り、手首を掌屈させた状態で腕を上げると、背中をストレッチさせやすくなります。第一関節を中心に握ると手首がまっすぐになり、肩が上がりやすくなってしまいます。ストレッチを狙うときは少し指で「包み込む」、収縮を狙うときは「手首をまっすぐ」にするようにします。
グリップでもう一つ大事なのは、力の強弱をつけることです。引くときはある程度の力で握った方がいいのですが、戻すときに握ったままだと前腕でホールドしてしまい、肩甲骨の動きも制御されます。 その状態からグリップを少し緩めると、背中は伸びます。グリップは、ある程度力を入れて引き、戻すときはバーにぶら下がる感じで体を伸ばすと良いでしょう。
続けてお読みください。鈴木雅選手のマッスルキャンプ
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鈴木 雅
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。DMM オンラインサロン“ 鈴木雅塾”は好評を博している。
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。