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マッスル北村の教え「セット数が進んでも重量を落とさない」

没後20年というのに全く色褪せない北村克己の思い出。友人・知人・関係者に語っていただいた言葉から、人間・北村克己像がはっきりと見えてくる。

取材・文:岡部みつる

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ノース東京の支配人をさせていただいていた2年間、お付き合いをさせていただきました。亡くなるちょうど1年前、減量期のトレーニング中に「北村さんが倒れてる!」って呼ばれて駆けつけました。ひっくり返った状態で白目を剥いたり黒目になったり、起き上がろうとしてまた転んだりしていました。僕は動揺し、ただひたすら「北村さん!」って大声で呼びかけていたんです。「大長さん!救急車!」ってスタッフに言われて、ハッと我に返ってすぐに119番通報したんです。

病院到着後、「血糖値が13しかありません。生きていられる数値ではありません」とすぐにブドウ糖を点滴されました。点滴を受けて、意識が戻りかけたらものすごく暴れ出したんです。起き上がろうとしたり、点滴を外そうとしたり、看護婦さんはキャーというだけなので、僕がやるしかなくて必死に押さえました。

しばらくしてスーッと意識が戻ると「あ~、ごめんなさいねぇ」といつもの北村さんに戻り「今、違う世界……、宇宙まで行ってたんだよ」って言うんです。それを聞いた医師は「頭も打ってますからCTも撮りましょう」って言うんです。「疑われますね」というと北村さんは「仕方ないよね。普通そう思うよね」と言ってました。僕も精神世界のことは信じているので、北村さんの言っていることはすんなりと受け止めることができました。

僕が今でも大切にしているのは「セットが進んでも重量を落とさない」という言葉です。ピラミッド法などでは最高挙上重量を経て重量を下げますが「たとえパーシャルになっても重量は下げない」と言ってましたね。今でも、トレーニングする際にはその言葉を守っています。

高重量を扱ってマシンのワイヤーを切ったりすることで、ある意味有名でしたが、僕はそれに関して迷惑だと思ったことは一度もありません! 北村さんは切ってしまうと「ごめんなさいねぇ」って報告に来るんですね。それを聞いた僕は「あー、分かりました。はい!」っていう感じでした。雑に扱って壊すのではなく、マシンの限界重量以上のダンベルを足したりして切れるのです。マシンやウエイトの取り扱いは、とても丁寧でした。

本部は切れたことに関しては何のおとがめもないですが、修理が遅いと怒られましたね。ちなみに、何回切れたかは覚えてないです(笑)。直したマシンにまたダンベルをぶら下げていても、文句を言うことはなかったです。なぜなら「北村さんだから」です(笑)。

うちの嫁が、北村さんにお姫様抱っこをしてもらった写真があるんですよ。そのとき嫁が咄嗟にバッグを預けたのが、飯島ゆりえさんでした。それを見たスタッフが慌てて飯島さんからカバンを預かったことは言うまでもありません。飯島さん申し訳ありません! その写真はうちの家宝です!

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執筆者 岡部みつる
東京都出身。昭和の終焉に渡米。’93年、米マスキュラーデベロップメント誌のチーフフォトグラファーに。以後、アイアンマン、マッスルマグ、フレックス等各誌に写真を提供。’96年にはMOCVIDEOを設立、コールマン、カトラー等オリンピア級選手のビデオ、約50本を制作。「オリンピアへの道」は12年続け、「オリンピアへ出るよりもこのビデオに出られてうれしい!」と選手が言うほどに。’08年、会社を売却しワイフと愛犬とともに帰国。静岡県の山中に愛犬とワイフの4人暮らし。


 

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