体内で分泌されるテストステロンを正常に維持するためにできることはたくさんある。減量のやり方次第では、テストステロンに悪影響を及ぼし、むしろ体重が増えてしまうこともあるのだ。そうならないために何をするべきか。
文:Sarah Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション
カロリー不足でテストステロンは下がる
コンテストに出場するボディビルダーは必ず減量を行う。減量で体脂肪を極限まで絞り、筋肉のデフィニションを限りなく強調するためだ。体脂肪をそぎ落とすことで、筋線維が皮膚から透けて見えるようなコンディションを作り上げることができ、筋肉のセパレーションも明確になるので、インパクトのある身体をステージで披露することができる。
ただ、そんなコンディションづくりのための減量食はカロリーが少ない。にもかかわらずコンテストに向けて強度の高いワークアウトを続ける必要があるので、当然、エネルギーレベルは常に低い状態だ。中には一年を通して適度に絞れた状態を維持したいという人もいる。そのような場合は、低カロリーの食事を長期にわたって続けることになるわけだが、それがテストステロンにいいかというと、答えはもちろんノーだ。
低カロリーの食事では、体内のテストステロンレベルは低下し、減量食が長く続けば続くほど、低テストステロンの状態がその人の身体にとって当たり前になってしまう。このような慢性的な低テストステロン状態はやがて様々な不調をもたらすことになる。不調の多くは食事によるもので、そもそも低カロリーの食事を続けているので、身体は低エネルギー状態に陥っているのだ。
NCAA(全米大学体育協会)は体内エネルギーについて次のように解説している。
「食事によって得られたカロリーから、運動によって消費されるエネルギーを差し引く。そして、残った分が身体の基本的な機能のために用いられる」
つまり、減量食がいつまでも続けば、身体に供給されるエネルギー量がもともと少ないせいで、身体が正常に働くためのエネルギーも制限されてしまうということだ。身体に備わっている基本的な代謝機能には、例えば生殖、免疫、そして骨格の維持などがある。低エネルギー状態のせいでこれらの機能が正常に保たれなければどうなるか想像してみてほしい。
ある実験では、コンテスト前のナチュラルな男性ボディビルダーを被験者にし、様々な数値の測定に協力してもらった。被験者はいずれも減量食によって体脂肪率を落とすことに成功していたのだが、同時に筋量も減少していて、気持ちの落ち込みも激しく、様々なホルモンにアンバランスが生じていることが分かった。一般的に身体が必要とするエネルギー量は「除脂肪体重1kg あたり20㎉」で計算することができるのだが、彼らの場合、その量を大幅に下回っていたのである。
この実験の研究者たちによると「ナチュラルボディビルダーの場合、コンテスト前の減量中でも除脂肪体重1kg あたり25㎉以上の食事をすることで、筋量の減少を抑制できるのではないか」と推測している。これについてはまだ確証があるわけではないので、さらなる実験が必要だが、少なくとも指標にはなるので参考にしていただきたい。
コンテストが終わると多くのボディビルダーは食事制限を解くわけだが、中にはコンテストが終わっても体脂肪を増やさないために減量食を続ける人もいる。しかし、テストステロン値を高く維持するということから言えば、これはあまり勧められない。
テストステロンを正常に保ち、健康な身体でいるためには、適切な摂取カロリーが必要なのだ。いつまでもカロリー制限をするのではなく、適度に食べる量を増やしてカロリーを確保し、心身ともに抑圧された状態から解放することが必要である。それが次のレベルへのステップアップにつながるのだ。
カロリー不足がもたらす不調
●減量食なのに体重が増加する
●筋量が減る
●疲労感が続く
●競技能力が低下する
●不眠症になる
●髪の毛が抜ける
●性欲が低下する
●勃起不全になる
●気持ちの落ち込みが続く
続けてお読みください。
▶トレーニングに悪影響!?テストステロン値を下げてし まうかもしれない食物