鈴木雅選手がトレーニングをディープに、詳細に解き明かしていくこのコーナー。今回は、「広背筋&大円筋」の後篇。前号のラット系種目に続き、ロウイング系種目を解説。背中の厚みをつけるには欠かせないエクササイズを紐ひも解きます!
構成:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩 岡部みつる 筋肉図提供:ラウンドフラット
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厚みをつけるロウイング系種目
ロウイング系種目のポイントには「引き方」「握り方」「手幅」「上体の角度」などがあります。「引き方」「握り方」については、先月号で解説したラット系種目と考え方は同じです。引き方には「上体を前方に突っ込むようにして引っ張る」「胸を張って体を伸ばして引っ張る」の2種類があり、上体を前方に突っ込むようにして引っ張ると屈曲の筋肉が働き、大円筋、僧帽筋に効きやすくなります。胸を張って体を伸ばして引っ張ると、体を伸ばしたときに働く筋肉・広背筋に効きやすくなります。
また、「前から引く種目は背中の厚みをつける」とよく言われます。その言葉は解剖学的にも正しく、「腕を前に伸ばす→後ろに引く」という動作では肩甲骨が外転・内転し、背中の厚みを演出する僧帽筋下部が伸展・収縮します。デッドリフトのように背中をかがめたり、伸ばしたりする動作では脊柱起立筋が作用します。 脊柱起立筋は背骨の両サイドに沿うような形で伸びていますが、背骨から少し横へも波状しています。脊柱起立筋が発達すると、下から押し上げられるようにして広背筋全体の厚みも増してきます。ここはラット系種目で鍛えるのは難しい箇所でもあります。厚い、モコモコとした背中をつくるにはロウイング系種目は不可欠です。
スタートポジションで背中を伸ばすのがポイント
背中の筋肉を収縮させる、これは日常生活のなかではあまり行わない動作です。日常的に行っていない動作の感覚は、なかなかつかみづらいものです。 でも「背中を伸ばす」動作は行っているはずです。背中のトレーニングが苦手な人はスタートポジションで広背筋が伸びたことを確認し、そこから引くようにします。そこで大事なのが握り方です。負荷は指から伝導して、腕を介して背中に伝わります。握り方については、先月号のラット系種目の解説を参照してください。また、よく間違いがちな動作として「自ら肩甲骨を開いてスタートポジションに戻す」というものがあります。戻すときに自分で肩甲骨を開くと、エキセントリックで一番刺激が強い、おいしいところを逃がしてしまいます。戻すときは極力、「重さに耐えて、そのまま引っ張られる」という動作を心がけます。 背中は自分からは見えない箇所の筋肉なので意識しにくい、という方もいるはずです。そうした場合は、まずは伸ばしたときの感覚に焦点を当てましょう。
気になる上体の角度や手幅については次のページ!