ワンハンドorツーハンズ
広背筋は背骨、仙骨、腸骨に起始部、上腕骨の少し内側に停止部があります。トレーニングは筋の走行方向に沿って起始部・停止部を伸展・収縮させるのが基本となるので、広背筋を狙うトレーニングでは肩甲骨を下制して肘を上体に近づける動作を行います。しかし、一般的な体形の人よりも肩幅が広く、肩甲骨が外側に位置している人は肩甲骨が下制しづらく、広背筋下部、中部に効かせづらい。特にツーハンズの種目では肩が上がりがちになってしまいます。そういった人は、ワンハンド系の種目で補佐してあげればいいでしょう。ツーハンズとワンハンドでは支点が変わってきます。ツーハンズで行うと支点が体の中心にくるので、前から引くと肩甲骨が後ろに動き、僧帽筋下部に効きやすくなります。
ワンハンドで引くと、支点が中心から横(引いている腕の側)に移り、肩甲骨からではなく肘から、つまり広背筋の停止部から動かしやすくなります。さらには脊柱を軸として上体をひねることができるため、広背筋の形に添って肘を引けます。肩幅が広くて広背筋中部、下部に効かせづらいという人はワンハンドをうまく活用していきましょう。
上体の角度について
ベントオーバーロウイングではよく「上体を床と平行になるくらいまで倒して行う」と言われます。ですが、狙う部位によって、上体を倒す角度は変わってきます。床と平行になるまで倒すと、バーを真上に引き上げる、つまり「上体を前方に突っ込むようにして引っ張る」ことになるので、ターゲットは大円筋や僧帽筋中部になります。
広背筋中部、下部を狙いたい場合は床から60度から70度くらいの角度が適しています。上体をその角度に保ったまま引き上げることで、負荷がかかる方向と筋肉の走行方向を近づけられます。また胸のあたりにパッドがついているものもあります。胸のあたりにパッドがついているマシンでロウイング動作を行うと、伸展では上体は胸椎から曲がり、僧帽筋下部にストレッチがかかりやすくなります。パッドがついていないマシンで胸を張って股関節から曲げていけば、広背筋の中部、下部が伸ばされます。曲げる位置によっても、伸びる箇所が変わってくるのです。
手幅とグリップについて
自分にとっての一番自然な手幅は、ロウイング動作で肩甲骨を寄せてみたときの手幅、もしくはもっともストレッチしやすい手幅です。ここは収縮を重視するか、ストレッチを重視するかで決めていただいていいと思います。グリップに関しては、アンダーグリップで握ると肩関節が外旋することによって肩甲骨を寄せやすくなり、僧帽筋下部が収縮しやすくなります。逆にオーバーグリップで握ると肩関節が内旋し、スタートでは僧帽筋下部がより伸び、フィニッシュでは大円筋、広背筋がより収縮します。広背筋、大円筋の厚みをつけたい場合は、正面からのロウイングをオーバーグリップで行います。
「広がりもつけば、それに伴って厚みもつく」という人がいますが、実際は広がり、厚みともに兼ね備えた背中を持つ人は少ないです。広がりをつけるか、厚みを狙うか。自分の弱点を把握しながら取り組むことが大切です。
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執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。