近年のスポーツ界ではバイオ(生命科学)を取り入れたトレーニングが花盛り。今回はトレンドの低酸素型トレーニング、そのメリット・デメリットをご紹介。
文:IM編集部
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細胞の生存・成長に必須である「酸素」を取り込む環境を、人工的に過酷にした中でトレーニングを実施すると、ヘモグロビンの酸素取り込み能力が増大したり、血中の酸素負債状態を作ることができたりします。「酸素負債」とは、体内で必要とする酸素の量が不足した状態を言い、筋肥大効果を促す重要な要素として注目されています。
JISS(国立スポーツ科学センター)でも、低酸素環境で筋トレを行った方が常酸素環境、すなわち通常の環境で行うよりも、筋肉の合成を高める成長ホルモン(以下GH)の分泌が促進されるのではないかという仮説を立てて研究が進められました。
GHの分泌は、激しい運動によって生成される乳酸や、アドレナリンなどのカテコールアミンの分泌増加で、より一層刺激されます。また低酸素環境では、運動による乳酸の生成とカテコールアミンの分泌が常酸素環境よりも増加することから、低酸素環境で筋トレを行えば、常酸素環境よりもGHの分泌が増加することが着目されました。
そこで、JISSでは「12名の健康な成人男性による常酸素環境と低酸素環境で筋トレを実施し、その際の血液中の乳酸、カテコールアミン、GHの濃度を測定する」という実験を行いました。その結果、低酸素環境で筋トレを行ったほうが、常酸素環境で行った場合よりも全ての項目で有意に高い値を示しました。
このような結果などを踏まえ、低酸素環境下でのトレーニングは有効な手段として導入例が増大しているわけです。ただ、低酸素環境を整えるための費用は決して安くはありません。また、心臓への負担も考慮しなければなりませんし、より過酷な環境を求めてしまうことで命を失う事例も発生しています。そこで着目してみたいのが、加圧トレーニング環境です。先に挙げた低酸素環境のデメリットとは逆に、加圧トレーニングでは「手軽・低コスト・高安全性」と言える環境で低酸素状態を作ることが可能です。
加圧トレーニングは、四肢の基部、つまり付け根に加圧専用ベルトを巻き、空気圧をかける加圧専用電子機器が使われています。この機器で「適正圧」と呼ばれる加圧トレーニング独自の安全かつ効果的な血流制限圧を加えていくわけです。動脈血の流れが止まる「止血」状態にならないための安全ノウハウを用いることで、身体への実ダメージが極めて少ないトレーニングが実施可能となります。
独自の血流制限環境を「KAATSU」という世界共通用語で統一し、発明者の佐藤義昭氏による長年の研究と実践から構築されたメソッドは、インストラクターのライセンス取得者のみが施術可能です。これも、加圧トレーニングの高安全性を担保する理由のひとつです。
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