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トップ選手のビフォーアフター!横川尚隆「筋肥大を叶える思考術」ロングインタビュー再録①

横川尚隆選手のBEFORE(中学2~3年生)とAFTER(2019年日本選手権優勝時)

筋肥大を求める初期の増量は必要か否か

──初めて「筋肥大」を意識しだしたのは、22歳でフィジークに出場し始めてからですか。
横川 JBBFのフィジークに出場したときからですね。その前年に出たベストフィジークにはキックボクシングの身体そのままで挑んだので、知識も何もないながら初めて筋肥大を求めてトレーニングをしたのは2015年です。

──知識がないながらも、当時はどのようなことをしていたか覚えているでしょうか。
横川 とにかく重いものを扱うことと、いっぱい食べること、ですかね。

──フィジーク優勝後、しばらくした頃には「筋肥大が止まらない」と話していました。
横川 言っていましたね(笑)。でも、今こうしていろいろ経験を積んできてから振り返ると、当時の成長は言うほどでもなかったなと思います。一番大きくなったのは、やっぱり2019年だと思うので。

──筋肥大を求めたトレーニングの初年度と4年目では「積み重ね」という決定的な違いがありますが、何が成長率の差を生んだと考えますか?
横川 気持ち、ですかね。メニュー構成や重量が変わってもトレーニングって、根本的には変わらないと思うんです。動かしているときの身体の感覚も、そんなに変わっていない。じゃあ何が違うの?って考えると、何をかけて臨んだのかっていう大会に向けた覚悟だと思います。

──ボディビルに転向した2016年も「いっぱい食べる」を実行していましたが、最も成長したと振り返る2019年は、していません。脂肪がつくのもいとわずに食べるのは、身体づくり初心者が登る階段ということでしょうか。
横川 経験値として考えるなら、登ってみるのもアリじゃないですか。でも、僕自身のことで言えばあの取り組みは無駄だったと思っています。当時の自分は太りすぎだったから、その前提が変われば話も変わりますけど、やっぱり脂肪が増えれば増えるほどそのあとの減量がキツくなりますよね。トレーニングにしても関節の可動域が狭くなるし、収縮感も得にくくなるというか、筋肉への感覚が鈍くなります。もちろんパワーが出る分、重いものを扱えるようにはなりますが、筋肥大という目的に限って言えば、自分の筋肉でコントロールできる以上のものを扱っても意味がないと考えるので無駄だったな、と思います。

──トップ選手の多くが体重を増やしすぎた経験があると思います。でも、その経験があるから今があるというか、初めの頃はそれくらい振り切ってみたら?との考えもあるかと思います。
横川 何を求めるか、ですよね。自分の身体でいろいろ試してみたいとか、純粋な興味でボディメイクをしているならば、確かにそれもひとつの経験。やってみるのもいいと思う。でも、僕の場合は、ボディビルの大会で今すぐにでも優勝することを求めていた。だから伝えられることは、同じように勝ちを求めている人へのメッセージだと思うんです。その視点に立つと「トップの人たちがみんなやってきたから、俺も」という発想はやめようよって言いたいですよね。

──その心を、是非。
横川 他の誰かとあなたは、違うから。他の誰かと同じ道を通ったところで同じ身体が出来上がるわけではないんだから、同じことをする必要はないですよね。誰かの身体を見て、スゲーなとかカッコいいなとか思うことは僕にもあります。意見を聞くとか真似をしてみるっていうこともしないわけではないけれど、ベースのところで「自分は自分」と思い続けているから、最終的には自分に合ったやり方を探してやってきました。

──他者のやり方に自分のすべてを委ねないってことですね。
横川 そう。委ねておいてやっぱりダメだった、となってほしくないですよね。見ていると結構、そうなってしまう若い世代の子が多いので。

──選択肢として「いっぱい食べる」を実行する場合、何かアドバイスはありますか。
横川 質のいいもので増やすこと。ジャンクなものは入れずに、米やもちなどシンプルな食材で増やしていけば、増やしすぎってことにはならないと思います。

──ちなみに当時の横川さんは……?
横川 カップ麺とかいろいろ食べていましたね。20㎏くらい増えましたから(苦笑)。

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横川尚隆(よこかわ・なおたか)
1994年7月10日生まれ。東京都出身。身長170cm、体重75~80kg IFBBエリートプロ
●主な成績
2014年 ベストフィジークジャパンミスターベストフィジーク2位
2015年 第2回オールジャパン・メンズフィジーク172cm以下級優勝
2016年 日本ジュニアボディビル選手権 優勝
2017年 日本クラス別80kg 以下級 優勝
2019年 日本ボディビル選手権 優勝


鈴木彩乃(すずき・あやの)
フリーライター&エディター。書籍制作を中心に、ウェルネス系メディアでの執筆、編集活動を展開中。好きな筋肉は、前鋸筋。


 

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