日本のトップボディビルダー・ジャガー佐藤の愛称で知られる佐藤貴規選手が思い出深いと語る試合について、当時のエピソードを語ってくれた。自らの競技人生を大きく変えるきっかけとなったあの日、あの時、あの試合――。
取材・文:IM編集部
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2007年日本クラス別選手権大会
2007年の日本クラス別は、私自身の選手としての考え方が固まった試合です。私はバルクのあるタイプではありませんし、これといった武器がなかっので、それまでは、何となく自分自身に自信がないというか、勝てた試合も、どうして勝てたのか理由が分からない感じでした。要は客観的に自分が見えていなかったのです。
この試合前は自分ではすごく調子が悪いと思っていました。前年の日本クラス別でも同じ65㎏級で5位でした。2007年も自分の中では去年と同じくらいの順位かなと思っていました。ポーズダウンでもすぐ呼ばれるだろうと思って、適当にやっていたのですが、結果は津田(宏)さんに続いて2位になることができました。
試合は単に筋量だけの勝負ではないんだなと思いました。ぱっと見、目立つ筋量やカットには、どうしても目が行きがちになりますが。そこを優先に考え過ぎるのではなく、トータルパッケージがよければ結果は付いてくるんだと実感しました。武器がなくても、逆に言えば弱点もないということにもなります。今までダメだと思っていた自分の主観的な考えがよくなかったことに気付いた大会でした。
この試合に出たことで、自分がやってきたことに自信が持てるようになりました。これでいいんだと確信を持っているのといないのとでは、やっている内容は同じでも、結果は違ってくるはずです。
それからは、周りの選手を見ても焦りがなくなりました。近くで見て腕が太いとか、トレーニングで自分よりはるかに重い重量を上げている人を見ても、自分は自分のやっていることができれば大丈夫なんだと、心底思えるようになりました。自分のキャリアの中で大事な試合だったと思います。
トレーニング内容については、自分の弱点に、より目を向けるようになりました。長所は現状維持でもいい。弱点を改善することでトータルパッケージを高めていこうという考えです。そう簡単に体は変わらないというのは分かっていますし、今取り組んでいることも、3年~5年くらいかけて結果が出ていればいいと考えています。
トータルパッケージという点では、ポージングの大切さも意識するようになりました。私はフリーポーズで毎年1つは新しいポーズを入れているんです。そうすると、例えば最初は5ポーズしかバリエーションがなかったとしても、年に1つずつ入れていけば、10年経てば15個のバリエーションになります。今年のミスター日本でも新しいポーズを考えています。それを見せるためには、まずは決勝に残らないといけませんね(笑)。
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