トレーニング mens

【疑問】ボディビルダーの筋肉は使えないって本当?

「ボディビルダーの筋肉は使えない」という言葉をよく耳にします。それは抑制がかかっていることが一つの原因です。使えないのではなく、筋力を最大限使うシステムが構築されてないだけなのです。どういうことなのか。井上先生に聞いてみました。

文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>

【おすすめ記事】【衝撃ビフォーアフター】48kgのガリガリが44Kg増えて世界王者になった!鈴木雅

地面反力を対角に伝える

スポーツや日常の動作には特徴があります。それは片手片足で動作を行うということです。これを専門用語で「ユニラテラル(片側性)」と言います。筋力トレーニングはほとんどの場合、両手両足で行います。このことを「バイラテラル(両側性)」といいます。バイラテラルのトレーニングを行っていくと、スポーツで力を発揮できないことがあります。例えばスクワットは足を開いて行うので安定した状態での運動なのですが、よりスポーツに近い状態での片足で行うスクワットでは、少なくとも股関節が左右(前額面)のバランスを取る必要があります。

その場合、動作のはじめに股関節の両側にある中殿筋と内転筋が素早く働いて股関節を固定するのですが、スクワットなどの両側性のエクササイズばかりを行っていると、このシステムが稼動しなくなります。このように片足などの股関節が安定していない状態で強い力を発揮すると怪我を引き起こす可能性が高くなるため、脳が無意識の内に殿筋や大腿四頭筋へ送るエネルギーを少なくします。これを「抑制」といいます。

「ボディビルダーの筋肉は使えない」という言葉をよく耳にしますが、これも前述したような抑制がかかっていることが一つの原因です。使えないのではなく、筋力を最大限使うシステムが構築されてないだけなのです。筋量が多くても動けるアスリートは片足のトレーニングや片足での力発揮の動きを頻繁に行うので抑制の影響が少ない場合が多く、ほとんどのボディビルダーは片足での抑制を外すトレーニングを行っていないため、その筋力を使いこなせないのは当然と言えます。

この連載でも何回も書いている通り、ボディビルの選手は別として、スポーツを行っているアスリートは抑制を外すための片手、片足の種目を採用するべきなのです。そしてスポーツは下半身と同時に上半身も使います。下半身で得た「地面反力」を体幹に経由させて上半身に伝えることが必要になります。この事からベンチプレス、レッグプレスなどの上半身だけ、下半身だけの種目とは別に、下半身から上半身に力を伝える全身をターゲットにしたエクササイズをプログラムに採用してもよいのではないでしょうか?

今回は「抑制を外して下半身で得た地面反力を上半身に伝えるエクササイズ」を紹介していきます。スプリットスクワットプレスは、複雑なエクササイズで基本ができてない場合は効果が出にくいエクササイズですが、力の伝達がうまくできればスポーツにも効果的な種目となるはずです。

スプリットスクワットプレスの効用

股関節の伸展力の強化
主に殿筋、体幹、三角筋の強化
体幹の連動性の向上

スプリットスクワットプレスの行い方

ダンベルを持ち、(写真1 −1)のように両足を前後に広げます。

スプリットスクワットプレスのスタートポジション

そこからスプリットスクワットの要領で一度しゃがんでから、立ち上がります。立ち上がると同時に、ダンベルをプレスします。ダンベルは回外位から回内位に回しながらプレスします。(写真1−2)動作中は体が左右にぶれないようにします。また、最初はゆっくりと体をブラさずにコントロールできる重量のダンベルを用いるとよいでしょう。

スプリットスクワットプレスのフィニッシュポジション

リグレッション(原点回帰)と プログレッション(エクササイズの発展)

スプリットスクワットプレスの リグレッション(写真2 −1)(写真2 −2)
ダンベルアーノルドプレス ハーフニーリング(片膝立ち)ポジション

片膝立ちの姿勢で、片手でのアーノルドプレスです。股関節の動きをなくして、体幹と三角筋の連動のみにフォーカスしたエクササイズです。ダンベルを回転させながら上げることにより、肩関節のインナーマッスルも刺激します。動作中は体幹をニュートラル(中立)で維持することに気をつけて行うようにします。

ダンベルアーノルドプレス ハーフニーリング(片膝立ち)ポジションのスタートポジション

ダンベルアーノルドプレス ハーフニーリング(片膝立ち)ポジションのフィニッシュポジション

スプリットスクワットプレスのプログレッション
スプリットスクワットプレス エクスプロージョン(爆発的)

スプリットスクワットプレスのボトムポジションから少し反動を利用して爆発的に立ち上がりながら、ダンベルを挙上します。
何回も述べていますように、このような種目は体の連動性を高め、抑制がかからない体を作ることを主な目的としたエクササイズなので当然「筋肥大」には最適とは言えないエクササイズです。

したがって体を大きくすることが最優先の「フィジーカー」や「ボディビルダー」に強く勧めることはありませんが、動ける身体を作りたい場合(機能性)やスポーツパフォーマンスの向上を目的とする場合は、ぜひ一度行っていただきたいエクササイズです。動作途中にダンベルを持っていない方の手で、お腹を触ってみてください。そこには今まで感じたことのない強靭なお腹の固さを手に感じることができるはずです。

\合わせて読みたい/
▶ウエイトトレーニングで”ベルトがいらない”効果的な腰痛予防

井上 大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/ NSCACSCS/NPO 法人JFTA 理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF 全日本選手権 第6位。
NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会 TEL:078-707-3111

-トレーニング, mens
-, ,