筋トレ初心者がワンランク上にいくためにぜひ挑戦してほいのがフリーウエイト。バーベルやダンベルを使い、全身を鍛えることができるフリーウエイトには、マシントレーニングにないメリットがたくさんある。今回はフリーウエイトのメリットと、筋トレの中でも大きな筋肉を鍛えるBIG3(ビッグ3)種目から、大胸筋に効かせる「ベンチプレス」、下半身に効果的な「スクワット」、背中を中心に効かせることができる「デッドリフト」の正しいフォームと効果的なやり方をゴールドジムアドバンストレーナー・加藤直之氏に解説いただく。
取材・文:藤本かずまさ、木村卓二 撮影:北岡一浩 監修:加藤直之(ゴールドジムアドバンストレーナー)
ベンチプレス
恐らく、ベンチプレスはトレーニーに最も人気のある種目なのではないだろうか。ジム内で、順番待ちの列ができることも珍しくない。正しいフォームで、効果的に出来ているだろうか? この機会に、基礎から見直そう。
1⃣ベンチプレスの準備
セーフティーバーの高さ設定
胸を張った状態で、胸より下、鼻より上の位置に調整する
体の位置
挙上して、バーベルがラックにぎりぎり当たらない位置。遠すぎても近すぎてもダメ、ラックアップしやすい位置を探る
手の幅
上腕を水平にし、肘を直角にした位置で握る。中指か薬指がバーベルの81cmラインにかかる位置が目安。広めに持つ場合は、81cmラインに人差し指にかける
2⃣ベンチプレスの基本
肩甲骨のない点を保ちつつ、肩の真上にバーベルがくるように肘が伸びきるまで上げる。バーベルをおろすのは、上腕が体幹に対して70~80度あたりが目安。そのため、下ろす位置は、必ずしも体のアーチが一番高い位置にはならない。45度位におろすと、胸のストレッチがかかりにくく、また動作距離は長くなる。効かせつつ距離を短く、安全にストレッチをかけられる位置に下ろす
握り方
ハの字に手首を回内させ、橈骨の真上にバーベルを乗せる。手のひらを垂直にすると、動きが生じ、集中できなくなる。親指、人差し指、中指の三本でしっかりと握る
アーチの作り方(その1)
ブリッジを作るとき、肩甲骨が下がっていることが大事。下背部に拳が1つ入るぐらいのブリッジをつくる
アーチの作り方(その2)
肩甲骨を内転させ、内に寄せる
背中を緊張させて土台をつくり安定させ、大胸筋を働かせる
NG POINT
・肩が上がり、脇が開く位置に下すと、肩をケガしやすくなる
・親指を巻かないサムレスグリップは危険
デッドリフト
床からバーベルを引くデッドリフトは、BIG3の中で実践している人が最も少ない種目ではないだろうか。床の上に静止したバーベルを反動も使わず引き上げる。キツい種目ではあるものの、体幹の強化には絶大な効果を発揮する。フォームを習得し、トレーニングにぜひ組み入れていただきたい。
1⃣まずはスタートポジションをつくる
・腰幅程度のスタンスでバーベルの前に立つ。しゃがむと膝が曲がり、脛が前にでるため、バーベルとは5cmほどの間隔を取る
・手幅は肩幅の真下の位置で。腕を自然に下げた状態でバーを握る
・引き上げる際に手の親指で大腿部を擦ってしまう場合は少し広くし、親指が大腿部に当たらないぎりぎりの手幅で握るようにする
・グリップはパワーグリップやストラップを使用するならオーバーグリップで握る
・パワーグリップなどを使わない場合は、強くバーをホールドできるサムアラウンドのオルタネイトグリップで。ただ、左右の手の向きが逆になった状態で引き上げるため、多少なりとも胸椎にねじれが起こる可能性がある
注意
デッドリフトをやりこむと、バーが脛などに接触して擦り傷ができることも。傷を防止するうえでもロングパンツやソックスを着用する
バーを握ったら、その状態で頭の高くなる位置に。これがスタートポジションとなる。頭を下げた状態から引き始めないように。
2⃣基本動作
スタートポジションを作ったら、バーが垂直方向に上がるように立ち上がる。加藤選手の場合は、広背筋で引き寄せることを意識しているという
バーベルは垂直に動くように。膝の屈曲が強くなると、膝が前に出て体の全面のラインに凹凸が生じてしまう。その凹凸が生じないように、垂直に引き上げる。
補足:ワイドスタンスの場合
肩幅よりも広いスタンスでバーを保持するワイドスタンスでは、内転筋やお尻などへの作用が強くなる。また。上体が立ち、シャフトの移動距離が短く力学的に効率が良い。柔軟性や技術が必要となるが、フォームが習得できれば高重量が扱える。
スクワット
1⃣スクワットの基本 まずは準備
セーフティラックの高さ
セーフティラックの高さは大腿部の中央あたり。脚の付け根と膝の中間ほどの位置にセット。しっかりとしゃがみ込んでもバーがラックには当たらず、つぶれたときも低すぎない位置になる。
バーの高さ
ローバーで担ぐ場合、バーは立ったときに胸骨の中央くらいの位置にくるようにセット
パワーベルトを締める
ベルトを締めた状態でしっかりと腹圧がかけられればOK。巻き方は下の記事で詳しく解説しています。
2⃣動作の注意点など
①バーの担ぎ方
手幅はなるべく狭く。バーの下に潜り込みながら肩甲骨を寄せて、背中を極力タイトにして構える。このとき、僧帽筋と三角筋後部が盛り上がるので、その盛り上がった部分にバーを乗せる。肩関節が堅い場合はグリップをサムレスにしたほうが無理なく担げる。
②しゃがみ方
まずは安定したたち姿勢で軸を作る。ベルトをつぶすように腹圧をかけ、骨盤はニュートラルに保つ。バーは足裏中央部に向かって下すように、重心をぶらさず、バーが垂直な軌道を描くようにする。背中のラインは真っすぐを保つ。反らしすぎたり、丸めたりはしない。
続けてお読みください。
▶意外と知らないパワーベルトの正しい巻き方【動画解説付】
加藤直之(かとう・なおゆき)
1981年生まれ、埼玉県出身。ゴールドジムアドバンストレーナー
身長161cm、69~71kg(オン)74~75kg(オフ)
2014年日本クラス別選手権70kg級優勝 2019年日本選手権3位、2020年ゴールドジムJAPAN CUP 初代ボディビル王者
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。
執筆者:木村卓二
TVディレクター、記者として活動。複数言語に通じ、「究極のトレーニング」を求め、研究と取材に勤しむ。有資格パーソナルトレーナーとして、格闘家などへの指導も行う。