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競技成績をあげるための「BIG3、スクワット、ベンチプレス、デッドリフト講座」。ゴールドジムアドバンストレーナー・荒川孝行が熱血指導!

東京大学運動会アメリカンフットボール部WARRIORSとゴールドジムのコラボ、「フィジカルモンスタープロジェクト」。ゴールドジム東陽町スーパーセンターにて、講習会「BIG3種目の活用方法について」が行われた。講師は、ゴールジム荒川孝行アドバンストレーナー。以下、実技指導に先立ち行われた座学講義の内容を、一部お伝えする。

取材・文:木村卓二 撮影:北岡一浩

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トレーニングというと、ウエイトトレーニングだけが強調されがちですが、当然、基本的な身体のケアなども考えないといけません。栄養、身体全体の根本的な健康状態など、競技成績を上げるために欠かせない、いろいろなことが加わった上で、トレーニングがあり、アメリカンフットボールの技術練習などがあり、競技結果が出る。そういう風に考えていただければと思います。

基本的な可動性・安定性

モビリティとスタビリティが必要となりますが、要は関節が動くところはちゃんと動く、固まるところはカチッと固めるということです。そういう関節とかのコンディションが大事になってきます。

その上で一番大事なのが体幹ということです。体幹の使い方をきちんと意識していないと、身体は動きません。体幹は様々な使われ方をしますが、どの動き、どの競技にも当てはまる基本的なポイントは、骨盤底筋群の引き上げによって安定するということです。よく﹁お腹に力を入れろ﹂と言われるところですが、ここの部分が安定していないと、どんな競技でもダメです。競技を前提としたトレーニングでもダメですね。

大事なのは2つ、同じ姿勢のまま持続的に支えることと、一瞬で強く力を入れることです。基本的に、体幹の動きというのは、本来立体的に捉えないといけませんが、今日は分かりやすく上と下で支えられると思ってください。上は横隔膜。呼吸をすると上下しますね。下は骨盤底筋群。お腹を支えたり、緩めたり、一瞬で入れたり、これがトレーニングでも重要なファクターになりますが、競技上も重要です。今回説明する、基本的な可動性・安定性は、体幹のことを指していると思っていただいても結構です。

体幹がきれいな形ができている、骨盤がニュートラルの状態に対し、中には骨盤底筋群がいい意味で緩んで反っている状態も、ひとつの体幹の形です。腰や頸椎に負担がかかることがありますが、この状態でも力が入らないとダメな競技もあります。よくダメと言われるのが後傾している状態ですが、こういう状態になることもありますよね。どれがいいというわけではなく、競技上色んな体幹の形がありますから、この骨盤底筋群を中心とした体幹のトレーニングをするということは、このコンディションを支えるという意味もあると思っていただければと思います。

ウエイトトレーニング基礎知識

筋肉をつける3つの刺激

筋力をつけるのであれば、回数はやや少なめでやりますが、筋量をつけるのであれば、少し長い時間をかけ、12レップぐらい、乳酸のためなら10回以上とよく言われます。BIG3 種目の場合、筋力アップだけを考えていると思われがちですが、低レップで2、3回だけ行うばかりでは、筋力はついても、筋量はつかず、段々目減りしてきます。そうではなく、基礎的な反復練習、10回とか12回とか、そういったトレーニングも必要だということをお伝えしておきます。

筋肉をつけると重くなる?

よく、筋肉をつけると、身体の動きが悪くなると言われます。これは、ある意味、正解です。なぜかというと、1つ目の理由として、筋肉をつけると、毛細血管など、身体の組織がついていかないということがあります。2つ目、ここが一番大きいのですが、神経系統の発達にタイムラグが出ることです。大きくなった筋肉を上手く使うための、脳からの指令、神経系統の発達が追いつかないのです。ですので、オフシーズンをいつにするかとか、競技のシーズンのど真ん中には筋力を上げないとか、そういう兼ね合いも大事になってきます。

競技に合わせた計画性・ピリオダイゼーション

簡単に言うと、トレーニングに強弱をつけましょう、競技に応じた強弱をつけましょうということです。バーベル種目には、いつも頑張っているイメージがありませんかね? 重たい重量をいつも上げているとか。そうではなく、競技には競技の特性があります。シーズンのスケジュールに応じてトレーニングをどうやって取り入れるか。大事な時期の前には強度を下げたりとか、量を落としたりとか、もしくは2週間前からやらないとか、そういう兼ね合いも必要だということです。

実は、個々の選手をちゃんと見るのは、すごく難しいです。あなたは何日にしましょう、あなたは2週間後に何kg 持ってくださいとかって、なかなか言えないんです。個々の体調やリズムがあります。もちろんコーチに確認とかも必要ですが、自分で判断して、自分で重量を決めて、主体的にトレーニングを組み立てていけることも必要になると思います。

パワーリフティングのように、一日で終わる競技もありますが、何日も何週間もシーズンが続く競技もあります。そうすると、ある一日に力のピークを持ってきたらダメで、ずっと持続的に効果を出していくということが大事です。ある程度強度も維持しますが、出し切って神経系統がパタッとダメにならないように強度を調節していく必要があります。いつも頑張るというのはダメです。

競技に役立つウエイトトレーニングというのは、大前提として、全身をくまなく使えていることが大事です。ウエイトトレーニングというと、脚、胸、肩、人によって三頭筋とか、筋肉を個別に鍛えるというイメージがあると思います。大事です。ただし、競技上全身を使えることが基本的には土台になってくると思います。BIG3は、特にそういった効果が高いかなと思います。

BIG3種目のメリット

スクワットですが、これを脚のトレーニングと捉えるのではなく、体幹を安定させ身体全体を使って立ち上がるトレーニングという考え方で、お伝えできればと思います。今回お伝えするのは、パワーリフティング競技のフォームではありません。全身を上手く使ってケガをしない、なるべく全身を使うフォームだと思ってください。

ベンチプレスもそうです。ただ胸を使うだけではありません。体幹を安定させて、胸郭と肩関節などを連動させて押すということです。押すという動きになりますので、競技上大事になってくると思います。でも、ベンチ台に寝転がって行うため、ベンチプレス台という皆さんにとって言わば異物が入ってきます。競技上まったく関係ないです。ただし、それを使うことによって、身体の相反する動きを一緒に行うという習慣が身体にできます。ベンチプレスは、ベンチプレス台を使うので、競技上意味がないと言われます。半分正解です。でも、ちゃんとしたフォームで重量上げていくと、身体の使い方が器用になっているという、ひとつのバロメーターというのが、ベンチプレスの一番の特徴です。

デッドリフト、これは背中の種目です。重たい重量を引き上げるということは、基本的には身体の背面を使います。背面を使いますが、ただ引くだけだと、背骨が反って、首も腰も痛めます。引くという動きで身体は反るけれども、体幹部は固めておく。本日何度もお伝えしている骨盤底筋群の使い方が大変重要です。固めておきながら、背中を使うという、これも相反する動きです。引くという身体の筋力もつきますし、身体の色んな筋肉、下半身の筋肉を効率的に使う習慣ができます。スクワットは立っているので、身体の動きはひとつですが、デッドリフトは引く動きなので、ちょっと身体にとっては器用さが求められる種目だと思ってください。

余談ですが、パワーリフティングトップ選手でも、スクワットとベンチプレスはすごく強いのに、デッドリフトが弱い選手って、実は結構いるんです。逆に、スクワットが弱い世界チャンピオンはいません。身体の土台だからです。身体の基礎を作りたいという方は、まずスクワットを思いきり頑張るというのが優先順位ですね。体型や身体の使い方によって、すごい器用さが求められますので、デッドリフトを伸ばすイコール身体の土台を作るという種目ではないかもしれません。ですので、ケガをしないで無理なくやるのが、デッドリフトなのかなと思います。

BIG 3のメリットというのは、まだあります。スポーツ競技をやっている方には一番大事かなと思いますが、成長に欠かせない、明確な基準が作れるということです。例えば、それができないのが、アームカールですね。アームカールは、反動を使ってしまったりしますし、バーベルの下ろし方だけでも変わります。つまり、基準がバラバラになってしまいます。でも、スクワット、ベンチ、デッドリフトは、基本的には他の種目に比べて基準が明確になりやすいんです。この3種目が1年で5kg伸びたとすると、その分だけ身体が伸びたという基準が作れます。BIG3をやると、身体の色んなところが鍛えられるというメリットもありますが、それ以上に大事なのがこの基準、目安になるということです。

BIG3重量設定の組み立て方具体例

ある程度軽い重さ、70%から80%くらいで始めて、段々ギリギリの重量、100%を少し超えるくらいで行い、自己ベストを出していくと考えてください。

人間の身体は大体2ヵ月くらい、8週間くらいで、神経系統がリセットされると言われています。神経系って何かというと、重たい物を全力で頑張るという神経です。ベストまで行ったら下げて、また2ヵ月間ぐらい段々上げて、またベストが出たら、また下げて、2ヵ月かけてまた伸ばしていくという考えです。ちょっとずつです。

8週間で2.5kg伸びたとしたら、大体5サイクルやれば12・5kgアップしますね。これを全身でやればもっとアップしますから、自分の力の限界が伸びないという人でも、2週間で2.5kgしか伸ばさなくていいと言われたら、結構気が楽ではないでしょうか。足りないところはなんだろう、食事かな、栄養かな、ケアかなと考えてやれば、多分2ヵ月で2.5kg伸びると思います。それをただ繰り返すだけですから、基本的にはその日一日頑張るというよりも、全体を通して考えていただくといいのかなと思います。何度も言いますけど、競技をやっている皆さんは、その日一日で全力を出すことにフォーカスしすぎてはダメだということですね。

BIG3のフォーム習得の方法

実技を行う上で、あれもやってこれもこれもやってということは言いません。3種目全てに共通しますが、大事なポイントを押さえたうえで、細かいところをあしらっていくというのが覚え方のひとつのセオリーです。

スクワットだったら、大事なポイントは2つです。このポイントをまず抑えておくとよいです。スタート姿勢をちゃんと作ること、しゃがみ方を習得すること。この2つだけです。ベンチプレスで大事なのはひとつだけです。肋骨を開かずに胸椎の動きが出る状態を作っておくこと。デッドリフトでは、スタート姿勢を作っておくこと、ボトムの意識を明確にすること、という2点だけです。

続けてお読みください。
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荒川孝行(あらかわ・たかゆき)
1978年3月15日生まれ。東京都出身。ゴールドジムアドバンストレーナー
パワーリフティング競技歴:25年
主な競技成績:
全日本選手権93kg級 優勝5回(2007、2012~14、2017)
世界選手権93kg級 7位(2017)
自己ベスト(フルギア):スクワット327.5kg、ベンチプレス240kg、デッドリフト315kg、トータル852.5kg


執筆者:木村卓二
TVディレクター、記者として活動。複数言語に通じ、「究極のトレーニング」を求め、研究と取材に勤しむ。有資格パーソナルトレーナーとして、格闘家などへの指導も行う。


 

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