バックプレスで頚椎を潰してしまったことも。当時は種目のメリット・デメリットを考えていなかった
― ケガに関してはどうですか。
鈴木 05、06年くらいだったと思います。バックプレスをやっていて、頚椎を潰してしまったことがあります。
― 頚椎を潰す?
鈴木 潰したと言うか傷めた感じですかね。一瞬、失神しました。バックプレスは得意な種目だったのですが、ボトムから上げようとしたときに、首に負荷がかかってしまったんです。3日ほど寝たきりになってしまいました。それ以来、重さを持てなくなってしまいました。バックプレスはリクスを伴う種目です。体の柔軟性があるのならいいですが、肩関節が硬いのに無理をして行っていたんです。左の上腕三頭筋の長頭、大円筋、前鋸筋は、今でも力が入りません。その種目のメリット・デメリットをもっと考えなければいけないと思いました。
― 近年における失敗となると、どのようなことが挙げられますでしょうか。
鈴木 去年はスタート時点でトレーニングをやりすぎました。やりすぎていないと思ってガンガンとやっていたら、30分くらいすると寒気がしてトレーニングができなくなったことが半年続いてしまいました。
― いわゆるオーバーワークというやつなのでしょうか。
鈴木 あまりそういう考え方はしたくないのですが、中枢神経、副腎が疲労していて、疲れを処理できなくなっていました。蕁麻疹が出るようになってから、そのことに気づきました。そこからは、なるべく睡眠時間をとるようにしました。睡眠不足とトレーニングのやりすぎです。私よりも短い睡眠時間で、トレーニングを続けている人もいます。他の人を基準にするのではなく、自分に合った方法でやるのが大事かなと思います。
それも、自分に甘すぎず、厳しくなりすぎず。そのさじ加減は難しいですが。
― 絶対王者の鈴木選手も、さまざまな失敗を繰り返してきたのですね。
鈴木 失敗はチャレンジの向こう側にあるものです。失敗したことに対して、悲観的な印象は残っていません。いろいろと経験を積んでくると、失敗する確率は下がってくるものです。
鈴木 雅(すずき・まさし)
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。DMM オンラインサロン“ 鈴木雅塾”は好評を博している。
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。