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スポーツ、トレーニングは生涯もの~ドーピング問題への言及~世界王者・鈴木雅が語る

スポーツ、トレーニングが盛んになっている昨今。さまざまな形で、日ごろの鍛錬の成果を見せる試合の場が数多く増えている。どんな肉体的競技にも、誰よりも大きなパワーや技術は必要であり、その能力向上のための努力なしにして競技は成り立たない。しかし、そんな努力を打ち砕くのが“ドーピング”だ。日本国内でも競技選手が手を染めてしまう話はよく聞いた。特に、ボディビルやパワー競技などで広まってしまっているのが現状だ。そんな中、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)のもと、ボディビル競技選手(JBBF)には、ドーピング講習会の受講義務が設けられ、それ以降違反者は大きく減少した。しかし、まだまだ検査の目をかいくぐって、こっそりドーピングに手を染めてしまう選手もいることに、何十回以上とドーピング検査を受け、常にクリーンであることを証明してきた鈴木雅選手はこの現状をどう感じているのだろうか。抜き打ち検査の経験談や、世界大会での検査にまつわるエピソードと合わせて語っていただいた。(アイアンマン2016年6月号「今だからこそドーピング撲滅大特集」から修正引用)

取材・文:アイアンマン編集部(以後IM)

◆選手別のドーピング検査結果を公開することで大多数の選手がクリーンであることを知ってほしい◆

IM 鈴木選手が初めてドーピング検査を受けたのはいつですか?

鈴木 初めて出た試合から受けました。2004年東京オープンで検査を受けて、次の年から抜き打ち検査(競技会外検査)も受けています。2005年は一番体重が増えた時期でもありますし、怪しいと思われたのだと思います。10年前はまだ『ADAMS(※1)』は取り入れられておらず、今のように居場所情報を基に検査員が来るのではなく、JBBFから指定の場所に呼び出しを受けて、その場所に出向いてドーピング検査を受けていました。
初めて抜き打ち検査を受けたときは、金曜日に自宅に封筒で通達が来て、日曜日にお茶の水のホテルジュラクに来るようにと書いてあり、それに従って行くと検査員がいて、そこでドーピング検査を受けました。当時はまだゴールドジムに入社したばかりで、日曜はシフトも入っていたのですが、調整してもらって検査を受けに行きました。仕事やプライベートの都合は無視した検査になるので、正直違和感はありました。

IM 合戸孝二選手もよく静岡からJBBF本部に呼び出されていたそうです。

鈴木 それくらいやらないと抑止力にならないでしょうし、抜き打ち検査自体は必要だと思います。今はADAMSが導入されているので呼び出されることはありません。選手の管理システムやドーピング検査精度も毎年進歩していて、最近の検査では昔摂取していた禁止物質も出るそうです。

IM 居場所情報提出の義務がある選手『RTPA(※2)』については、JBBFが国際大会に出るトップ選手を中心に人選すると聞きました。

鈴木 毎年、選手の入れ替えはあるそうですが、私は2007年に初めて国際大会(東アジアボディビル選手権)に出たときから検査対象者リストに入っています。

IM 居場所情報提出の流れを教えていただけますか?

鈴木 3カ月に1回、ADAMSを通して一度に3カ月分の居場所情報を提出します。3カ月間の一日一日のスケジュールを全部出して、「1時間枠」という、この時間は検査を受けることができますという枠を作って報告します。スケジュールが変更になった時は事前にメールなどで変更します。検査はその1時間枠の前後に来るという形です。

IM 急な出張など突発的なスケジュールがあった場合はどうするのでしょうか?

鈴木 当日の朝でも変更可能です。以前はメモを書いてFAXしたりなどアナログな部分もありましたが、ADAMSも毎年改善されていて、昔ほど変更に手間がかからなくなりました。今日も少し予定が変わったので、朝にスケジュール変更を出してきました。

IM 抜き打ち検査の頻度はどのくらいなのですか。

鈴木 大体2~3カ月に1回くらいです。毎年4~5回は受けていますが、ボディビルダーの陽性が続けて出た2013年は7回くらい抜き打ち検査がありました。

IM JADA(日本アンチ・ドーピング機構)の検査員は本当にいきなり来ると聞きました。

鈴木 早朝や夜中であっても、居場所情報で提出した1時間枠であれば来ます。職場に来るときは名乗らずに「鈴木さんいますか?」とやって来ます。そこから1時間以内で検査となりますが、もし尿が出なければ待ってもらえます。昔に比べたら、こちらが行かなくても向こうから検査に来てもらえるだけありがたいですね。公正を期すために、JADAの検査員も目的地に着く直前まで、誰を検査するか知らされていないそうです。大体同じ方がこられますが「場所を聞いて、あー、今日は鈴木さんだなって思ってました」とこの前言われました(笑)。

※ 1…ADAMS(アダム=Anti-Doping Administration and Management System ): アンチドーピング活動に関わる情報をWEB 上で総合的に管理することができるシステム。居場所情報の提出や変更もここで行う
※ 2…RTPA(Registered Testing Pool Athlete) :検査対象者登録リストに含まれるアスリートのこと。登録されたアスリートはADAMSを通じ、居場所情報を提出する義務がある

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