オフ期のボディビルダーは、筋量増加に重点を置いたトレーニングプログラムを実践している。つまり、多くの種目を高重量・低レップで行っている。しかし、もし筋力の増加に限界を感じたらどうすればいいのだろうか? 停滞した筋力を再び伸ばすにはどのようなテクニックがあるのか? そんな疑問にぶち当たったら、ぜひ試していただきたいのが今回紹介するクラスタートレーニングである。先週はクラスタートレーニングに基本について解説した。今週はこのクラスタートレーニングの実践例から紹介していく。
▶筋力を筋量増加につなげる!クラスタートレーニング【基礎編】
▶クラスタートレーニングの驚くべき効果
文:Sarah L. Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション
クラスタートレーニングの実践例
クラスタートレーニングについて大まかな考え方が理解できたら、具体的な内容に入っていこう。ここではベンチプレスを例に挙げて解説していきたい。
ベンチプレス:通常のやり方 例えば5RMの重量(5レップできる最大重量)を使って5レップを行ったら、通常は2分間のセット間休憩を取ってから、同様にして次のセットを行う。これを繰り返すのが通常のやり方だ。
ベンチプレス:クラスタートレーニングのやり方
5RMの重量を使い、2レップごとにイントラレストを10〜30秒間挟みながら、これを4回繰り返して1セットとする。その後、セット間休憩を挟んで、同様にこれを繰り返す。
計算すれば分かるとおり、クラスタートレーニングでは5RMの重量を使って1セット当たり8レップを行うことができる。2レップごとに10〜30秒間の休憩を挟むので、1セットを終えるまでにかかる時間は長くなるが、通常のやり方と比べると、セット当たり3レップも多く行うことができる。
通常のやり方と同じ重量で、いつもより多くのレップができるため1回のワークアウト量は増加する。これがクラスタートレーニングの最大の長所なのである。
この長所によってもたらされるのはメカニカルストレス(筋線維への負荷)の増加であり、それは結果的に筋量の増加を促す。もちろん筋力の増加も得られる。
クラスタートレーニングの進め方
クラスタートレーニングのやり方が理解できたら、次は部位ごとにどのような種目を選択し、どのような構成で行うかについて解説していく。なお、以下に示す内容は、クラスタートレーニングを開始してから1〜3週目に行う内容である。
【胸】 バーベルベンチプレス
●通常のやり方:1RMの75%の重量×8レップ×4セット
●クラスタートレーニング:1RMの75%の重量×3、3、2レップ×4セット
※イントラレストは10〜30秒間
※セット間休憩は2分間
【肩】 バーベル・オーバーヘッドプレス
●通常のやり方:1RMの75%の重量×10レップ×3セット
●クラスタートレーニング:1RMの75%の重量×4、3、3レップ×4セット
※イントラレストは10〜30秒間※セット間休憩は2分間
【背中】 バーベル・ベントオーバー・ ロウイング
●通常のやり方:1RMの75%の重量×8レップ×4セット
●クラスタートレーニング:1RMの75%の重量×3、2、2レップ×4セット
※イントラレストは10〜30秒間
※セット間休憩は2分間
【脚】 バーベルスクワット
●通常のやり方:1RMの75%の重量×10レップ×4セット
●クラスタートレーニング:1RMの75%の重量×4、3、3レップ×4セット
※イントラレストは10〜30秒間※セット間休憩は2分間
すでに述べたが、クラスタートレーニングを行うのは多関節種目のみである。また、前記の例を見てもわかるとおり、開始してから1〜3週目まではとても簡単に行えるはずだ。というのも、通常のやり方と同じ運動量、同じ使用重量なのに、クラスタートレーニングではレップの塊ごとにイントラレストが入るからだ。
しかし、1〜3週目を過ぎたら、4〜7週目は1RM×85%の重量、8週目は1RM×90%の重量を用いるようにする。短期間でそこまで重量が増やせるか疑問に思う人もいるだろうが、イントラレストを入れながら行うクラスタートレーニングなら問題なく行えるはずだ。そして、当然ながら使用重量が増えていくと、イントラレストを取りながらでもワークアウトは間違いなくきつくなってくる。
トレーニングプログラムは部位ごとに分けてもいいし、上半身と下半身に分けてもいい。いずれにしても、クラスタートレーニングを用いるのは多関節種目のみであり、単関節種目は通常のやり方で行うようにしよう。
負荷の増やし方
重量を増やす
先にも述べたが、クラスタートレーニングの1サイクルは以下のとおりだ。
●1〜3週目:1RMの75%の重量を使う
●4〜7週目:1RMの85%の重量を使う
●8週目:1RMの90%の重量を使う8週目までを1サイクルとし、1サイクルが終わったら必ず各種目の1RMを再確認する。
おそらく、多くの種目で1RMの重量が伸びているはずなので、次のサイクルでは、新しい1RMの重量を基準にし、再び1RM×%からワークアウトを再開する。
イントラレストを短縮する
使える器具に限りがある環境なら、あまり重量は増やせないというケースもあるだろう。そんな場合は、イントラレストを短縮してワークアウト強度を高めていくこともできる。
例えば、最初はイントラレストを30秒間とし、1RMの向上とともに5〜10秒間ずつ減らしていくようにする。当然、イントラレストが短くなれば1セットの強度は高くなるので、筋肉への負荷を少しずつ高めていくことができる。
運動量を増やす
例えば、1セット内のトータルレップ数が10レップで、これを4、3、3レップに分割している場合、筋力の増加とともに2レップの塊を追加して行うこともできる。その場合、1セットは4、3、3、2レップになり、1セットの総レップ数が12レップになる。この方法を採用する場合は、使用重量やイントラレストは変更しないようにする。
クラスタートレーニングでは、イントラレストを組み込むことで最後まで正しいフォームを維持することができ、また、容易にレップ数を増やすことができるので運動量を増やすことができるのだ。
結論
クラスタートレーニングは、安全に運動量を増やしながら筋力を伸ばすことができ、しかもそれが筋量増加やバルクアップにもつながるのである。
事前に計画を立ててからワークアウトを開始する必要があるが、幸い、クラスタートレーニングを行うのは多関節種目のみである。つまり、現在行っているワークアウトの多関節種目にのみクラスタートレーニングを採用すればいいので、それほど頭を悩ます必要はないだろう。
トレーニング歴が適度にあり、最近は筋力、筋量、パワーの向上が頭打ちだという人は、気分転換もかねてクラスタートレーニングを試してみよう。これまでとは違う感覚が得られ、新鮮な刺激がさらなる高みへと押し上げてくれるに違いない。
続けてお読みください。
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