今や、ボディビルは大人のための競技ではない。最年少は中学生から、90歳近くのスーパーおじいちゃんまで、年齢層は非常に幅広い“息の長いスポーツ”になってきた。最近では、TVでも度々登場し、お茶の間にボディビルの筋肉美と、その競技の凄さを広めてきた、今年の日本ボディビル選手権を制した“ミライモンスター”相澤隼人選手や、現在タレントを中心に活躍する2019年日本ボディビル選手権の王者・横川尚隆選手が、多くの一般の人たちにも知られている。
今回紹介するのは、アメリカの大型プロレスラーにして、世界No.1の俳優・“THE ROCK”ことドウェイン・ジョンソンと相澤隼人選手に憧れ、次世代の日本ファイナリスト候補として名高い、現役高校生・坂本陽斗選手にトレーニングにおいての生い立ち、トレーニング論、そして今後の目標を語っていただいた。
取材・文:月刊ボディビルディング編集部 写真:中島康介
「重いものを持つことがナチュラルで大きくなる近道だと思います」
自分は父の影響を大きく受けて育ってきました。中1の夏からトレーニングを始めましたが、初心者にしては扱える重量が多かったです。初期のトレーニング内容は自分で調べるなどして、当時は早く筋肉を大きくしたいという焦りから、思い立ったものは全てやっていました。中学のころのメニューは、月曜日は胸と手首と腹筋、火曜日は背中、水曜日は肩、木曜日は脚とプライオメトリック・トレーニング、金曜日は腕全体、土曜日は負荷ありの有酸素運動と腹筋と肩、日曜日は有酸素運動と腹筋でした。オフなしですね(笑)。
中学はテニス部で、夕方から近所の市営ジムでトレーニングしていました。愛知県のスポーツセンターは全て中学生のときに使ったと思います。時間がないときは、家に作ったホームジムでやるときもありました。ほぼ毎日筋トレをしていましたが、まだ知識不足ということもあり動画を見ながら、やたら高重量でやっていました。また、学校内で自重で済ませる場合もありました。現在は、相澤隼人さんのバルクアップセミナーを受けてから胸・背中・肩・腕・脚の5分割で今年の7月まで続けていました。増量期にベンチプレス180㎏が挙がるようになったとき、ケガをしてしまい、そのときの部分的な痛みが減量を開始してから出るようになったので、現在は6分割で組んでいて、胸・脚・背中・肩・上腕二頭筋・胸と上腕三頭筋という順番です。胸は細かく分けることによって痛みを緩和させることができました。ベンチをやる日は土曜日に固定して、高重量でトレーニングを組めるように工夫しています。食べ物を多く食べられればケガも治る自信があるので、減量期限定の分割です。
こだわりとしては、上半身30セット、下半身40セットでオールアウトするように組むことが多いです。腹筋とカーフは毎日やるので、脚の日もやると50セット近くになることも。これだけでもカーディオ効果があるので、有酸素をすることはあまりな
いです。これの肝は時間です。集中力を持続させ早く終わらせることが大切だと思います。始める前には自分の心臓を叩くことが今のルーティンになっています。このセット数については隼人さんが何気なく言った言葉を参考にしています。
好きなメニューでもある、脚の日はワクワクします(笑)。やればやるほど大きくなるのが脚の醍醐味だと思います。脚は高2のジャパンカップ前から始めて今に至ります。それまでは嫌いでしたので避けていた部位です。しかし、選手という意識が高
くなり、大会で勝つために求められる理想的な身体、ライバルの身体に合わせたメニューを組む傾向があります。高重量・高強度という斬新性の法則に沿ったシンプルなやり方ですが、胸が強い相手であれば胸の日には感覚が良くなるような種目から
入り筋肥大を狙います。骨格的にデカいと思う選手がいた場合、パワー種目を多くして全体的に大きくさせます。分割は決まっていますが、その日の内容は出場する大会によって変えているのが、自分が短いボディビル歴の中で勝てた要因だと思っています。勝つためには直感で〝やばい〟と思う相手の身体にフォーカスさせたメニューを組むことが大切です。
そして重量は重いほど良いと考えています。レップ数は目的によって大きく変動しますが、全て高重量でやります。基本的には持てる限りの高重量で、ストレッチ、収縮、パワー種目をこなすのが理想です。全てにおいて全力を出し切る、シンプルで一番辛いやり方です。それにレストポーズを多用して乗り切ります。POFで言うと「POF×高重量」で、やり方の本質は変えず、重いものを持つことがナチュラルで大きくなる近道だと思います。自分の場合、あらゆる不都合なことを無視して、とにかく漫画の世界のようなありえない重量を扱える日が来るように日々やっていくのが楽しいんです。ここに学生と大人との境はなく、童心を持ちトレーニングを楽しむようにアレンジしていくことが、心と身体をリンクさせ成長させていくルートのひとつだと思います。
自分は今後日本ジュニアで優勝して、世界ジュニア選手権に2年以内にいけるように身体を作っていきます。
坂本陽斗(サカモト・ハルト)
2003 年4月6日生まれ/ 18 歳/身長:169cm /体重:73㎏(オン)・84㎏(オフ)/職業:高校生/憧れの選手:相澤隼人選手/好きな食べ物:からあげ/嫌いな食べ物:なし/トレーニング以外の趣味:陸上競技
大会入賞歴:2021年全国高校生ボディビル選手権優勝、2021 年マッスルゲート愛知ボディビル高校生の部・ジュニアの部・75㎏以下級・クラシックフィジーク高校生の部・175㎝以下級・メンズフィジーク高校生の部・172㎝以下級優勝、2020 年ゴールドジムジャパンカップボディビルジュニアの部2位、2020 年マッスルゲート東京ボディビルジュニアの部2位、2020 年マッスルコンテスト東京メンズフィジークティーンクラス2位、2019年全国高校生ボディビル選手権3位