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肩の筋発達に欠かせない予備知識とトレーニング種目

バランスの取れた身体づくりには、肩の発達が大きく関わってくる。肩の幅を広げるだけでなく厚みも重要であり、この2つの要素を満たすことで美しく迫力のある上半身のシルエットが完成するのだ。理想的な上半身のシルエットはV字型だ。肩幅が広ければウエストは引き締まって見えるので、洗練されたイメージが増す。また、肩に厚みがあれば、どの角度から見ても立体的で力強いイメージが増す。つまり、肩の筋発達は芸術性の高い肉体づくりには不可欠と言えるのだ。実際、V字型の上半身をつくり上げている人を見ると、それが男性であっても女性であっても、美しさと力強さにあふれているのが分かる。ということで、今回は理想的な肩のつくり方について解説していきたい。

by Sarah Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション

肩についての予備知識

肩に限らずどの部位であっても、その人が持っている素質によって発達しやすかったり、しにくかったりする。素質がある人は特別なことをしなくても、スタート地点に立ったときから骨格に恵まれていたりする。しかも、筋発達しやすい素質が備わっていれば、それほど苦労しなくても筋肥大が得られるので、短期間で誰もが目を見張るような体を作り上げてしまったりする。

しかし、そんな素質に恵まれている人はごく一部で、大半の人たちは普通の素質しか持ち合わせていない。それでも、トレーニングのやり方次第では理想の身体に近づけていくことは可能だ。

では、どのようなトレーニングが適しているのかについて解説する前に、まずは肩の解剖学を少しだけ説明しておきたい。

肩の構造とバランス

私たちが肩と呼んでいるのは、いわゆる三角筋のことだ。三角筋は3つの筋肉で構成されていて、前面にあるのが前部ヘッド、側部にあるのが側部ヘッド、背面にあるのが後部ヘッドと呼ばれている。

どんな種目を行うか、あるいは選択した種目のやり方によって、強く刺激を受ける部位は変化する。そしてもちろん、肩の完成度を高めるにはどのヘッドもまんべんなく刺激し、バランスよく発達させていくことが必要だ。そうすることで三角筋は張りのある肉厚の球体に近づいていくのである。私たちが目指すべきはそういう三角筋なのだ。

注意したいのは、肩の種目以外でも、三角筋の各ヘッドは間接的な刺激を受けるということだ。例えば3つのヘッドの中でも前部ヘッドが発達しすぎているという人の場合、おそらく胸のワークアウトが好きで、ベンチプレス系の種目を頻繁に行っているせいだろう。ベンチプレスでは胸だけでなく、三角筋の前部ヘッドも強い刺激を受けるからだ。

ベンチプレス系の種目を多く行う人は、三角筋の前部ヘッドも頻繁に刺激している。だから前部ヘッドだけが三角筋の中で際立ってしまうわけだ。

前部だけでも筋発達しているから問題ないのでは? そう思うかもしれないが、三角筋は3つのヘッドがバランスよく発達してこそ理想とする形が出来上がる。私たちが追求しなければならないのは、特定の部位の飛び抜けた筋発達ではなく、あくまでもバランスなのである。

多関節種目を中心に行う

肩のワークアウトでは、前半に多関節種目を積極的に行い、使用重量も少しずつ増やしていくようにしたい。といっても、正しいフォームが保てないほどの重量は扱わないように。あくまでもフォームは正確に維持し、それが可能な範囲での高重量を少しずつ伸ばしていくのだ。

高重量といっても、それがどれくらいの重量なのかは人それぞれ異なるわけだが、ここでの高重量とは、決めたレップ数がギリギリできるかできないかぐらいの重量を指すものだと理解しておいてほしい。

多関節種目を複数選択し、いずれも高重量で行うことで、三角筋は確実に変化していくはずだ。

身体づくりはプラス思考で

身体を改善していくうえでは、心構えも重要な要素になる。覚悟を決め、何があってもワークアウトを断念しないこと。継続する強い意志を持ち、目標を必ず実現させるという心構えは、実際に結果を大きく左右するのだ。迷ったり、どうせダメだと諦めないこと。そのようなマイナス思考は結果に悪影響を与えるだけだ。計画を立てたら、常に前を向いて進もう。そしてトレーニングを開始したら、目指す自分の身体をできるだけ明確に描きながら行うようにしてほしい。

肩の種目

肩のワークアウトは、多関節種目から2、3種目、アイソレーション種目から3、4種目選ぶようにする。また、アイソレーション種目は特に三角筋の後部&側部ヘッドを強く刺激する種目を多めにし、肩以外の種目で間接的な刺激を受けやすい前部ヘッドの種目は1種目程度で十分だ。

多関節種目

■オーバーヘッドプレス(OverheadPress)
肩を発達させる多関節種目の中で最も重視したいのがこれだ。この種目を行わずして肩の発達はないと言っても過言ではない。脚の種目としてスクワットを重要視するのと同じくらい、肩には必ずオーバーヘッドプレスを行いたい。スタンディングでもシーテッドスタイルでも行うことができるが、スタンディングなら身体全体を緊張させることになるので、より難易度が高まる。一方、背もたれつきのベンチに座って行うと姿勢が安定するので、より高重量が扱えるはずだ。どちらかひとつに決める必要はなく、ワークアウトのたびに入れ替えるようにしてもいいだろう。ここではスタンディングでのやり方を解説する。
①両足を肩幅より広めに開いて立つ。
②手幅は肩幅より広くしてバーベルを握る。両肘を曲げて肩の高さにバーベルを保持する。このとき、肘を外側に開いたりせず、肘は真下に向けておく。これがスタートポジションだ。
③全身を緊張させたまま、頭上にバーベルを押し上げる。バーベルが顔の前を通るとき、バーで顔を擦ってしまわないように注意しよう。
④バーを頭上に押し上げて、肘が伸びきったところがトップポジションだ。トップで一旦停止しよう。
⑤ゆっくりスタートポジションに戻って1レップだ。
⑥レップ数にかかわらず3〜5セットは行うようにしたい。

■シーテッド・オルターネイト・ダンベルプレス(Seated AlternatingDumbbell Press)
シーテッド・ダンベルプレスでは、両手にダンベルを保持し、両手のダンベルを同時に頭上に押し上げるやり方が一般的だ。もちろんそのやり方で問題はないのだが、より筋緊張時間を延長させるなら左右交互に行うオルターネイトにチャレンジしてみよう。左右交互に動作を行うことで、筋緊張時間が延長されるというのはどういうことか。これは、押し上げていない側は休んでいるのではなく、緊張した状態でダンベルを保持しているので、バランスを取るために微妙に出力を加減することになるためだ。なお、このオルターネイトのスタイルでダンベルプレスを行うなら、通常のダンベルプレスよりも軽い重量を選択すること。選択した重量が重すぎると、いつもより少ないレップ数で限界が来てしまったり、動作が不安定になってケガをする可能性が高まってしまう。
①ベンチ台の端に座り、両手にダンベルを保持して頭上に押し上げる。両手のひらは正面に向いている。これがスタートポジションだ。
②スタート地点から、ゆっくり片側のダンベルを下ろしていく。肘が90度の角度になる地点までダンベルを下ろしたら、それがボトムポジションだ。
③ボトムで一旦停止したら、再びダンベルをスタート地点まで押し上げる。反対側のダンベルはこの間、腕を伸ばしたまま頭上に押し上げた状態で保つ。動作する側がトップに戻ってきたら、今度は反対側のダンベルを同じようにしてボトムまで下ろし、スタートまで押し上げる。こうして左右交互にダンベルの上げ下ろしを行う。
④片側に10〜12レップずつを3、4セット行う。

■フェイスプル(Face pulls)
三角筋の後部ヘッドの種目としておすすめだ。後部ヘッドを肥大させることは三角筋の厚みを増すことに直結するので、ぜひ前部ヘッドと同じだけ後部ヘッドも発達させよう。フェイスプルが効果的なのは後部ヘッドだけに限らない。僧帽筋や上背部も刺激されるので、上半身のV字シェイプに貢献してくれるはずだ。この種目が高く評価されるのにはもうひとつ理由がある。それは肩関節を保護するローテーターカフも強化してくれるという点だ。肩の深部にあるローテーターカフの機能を正常に保てればケガの予防につながる。ケガが予防できれば、肩をはじめとした上半身の種目に全力を注ぐことができるのだ。そういう意味からもフェイスプルをぜひともワークアウトに組み込んでほしい。
①ケーブルマシンのプーリー(滑車)を高い位置にセットする。ケーブルの先端にはロープハンドルを取り付ける。
②ケーブルマシンに向かい合うようにして立ち、ロープハンドルをオーバーハンドグリップで握る。
③ロープハンドルを握って腕を前方に伸ばし、そこから一歩後退してケーブルに負荷がかかるように立ち、位置を調整する。これがスタートポジションだ。
④ロープハンドルを、顔をまたいで耳の横を通るように引き寄せる。このとき、肘は外側に開くようにする。
⑤ケーブルを引ききったとき、ロープハンドルの中央部分が顔の真正面に来ているはずだ(だからフェイスプル)。また、ケーブルを引ききったとき、肘は外側に向いているだけでなく、高く持ち上げられていなければならない(脇を開いておく)。この種目では肘が下がらないように注意しよう。
⑥ケーブルを引ききったら一旦停止し、肩と上背部を意識して収縮させる。その後、スタート地点までケーブルを戻して1レップだ。
⑦12〜15レップ×3〜5セット行う。

■バーベル・アップライトロウイング(Barbell Upright Row)
この種目は三角筋の側部ヘッド、後部ヘッドだけでなく僧帽筋にも刺激が伝わる。一般的に、アップライトロウイングは肩だけでなく背中にも効かせることができるので、体の背面を総合的に刺激する種目として理解しておくといい。シンプルな種目に思えるかもしれないが、正確なフォームで行わなければ効果を最大限に引き出すことはできないということは覚えておこう。
①EZバーを肩幅より狭い手幅でオーバーハンドで握る。
②バーを真上に引き上げる。アゴの高さまでバーを引き上げたらトップポジションだ。動作中、体の前面をバーで擦るようなつもりで、バーはできるだけ身体に近づけておく。
③トップで一旦停止したら、ゆっくりスタート地点まで戻す。
④10〜12レップ×3、4セット行う。

■45度ダンベル・インクライン・ロウイング( 45 degree DumbbellIncline Row)
この種目は三角筋の側部ヘッドだけでなく後部ヘッドにも刺激が伝わるはずだ。側部ヘッドと後部ヘッドは、三角筋を構成する3つのヘッドの中で前部ヘッドの発達より劣りがちなので、この種目を積極的に行ってみるといいだろう。
①45度の角度にセットしたインクラインベンチ台にうつ伏せになる。両手にダンベルをそれぞれ保持し、腕はだらりと下ろしておく。
②肩甲骨を中央に寄せるようにして、肘から腕を上方に引き上げる。
③肘を肩の高さまで引き上げたら、トップで一旦停止した後、スタート地点までゆっくり腕を戻して1レップだ。
④8〜12レップ×3、4セット行う。

アイソレーション種目

■ ビハインド・ザ・ネックプレス(Behind The Neck Press)
多くのトレーニーがこの種目を危険視し、敬遠してきたのではないだろうか。確かに乱暴なやり方で行えば、この種目に限らず、どんな種目でもケガの可能性は高まる。肝心なことは正しいやり方で行うことだ。正しく行えばこの種目は安全であり、しかも三角筋全体に強い刺激をもたらしてくれる。
①背もたれのあるベンチ台に座る。
②肩幅より少し広めの手幅で、バーベルをオーバーグリップで握る(手のひらが前に向く)。
③バーベルを頭上に押し上げるが、肘がロックするまで伸ばしきらない。そうすることで三角筋への負荷が常にかかった状態になる。これがスタートポジションだ。
④肘を曲げながら、バーベルが首の後ろを通るようにしてゆっくり下ろしていく。バーが頭にぶつからないように、ほんの少しだけ首を前に傾ける。
⑤バーベルが僧帽筋に触れる前に動作を停止し、そこからスタートポジションまでバーを押し上げて1レップだ。
⑥バーを下ろしたときに首に違和感があるなら、あまり深く下ろさないように可動域を制限してみよう。スタート地点までバーベルを押し上げたら、一旦停止せずにすぐに次のレップを開始する(三角筋の緊張を常に保つため)。
⑦6〜10レップ×3〜5セット行う。

■リアデルトフライ(Rear Delt Fly)
この種目は三角筋の後部ヘッドに強い刺激をもたらすだけでなく、上背部にも効果的な種目だ。後部ヘッドは身体の背面にあるため普段はあまり目にすることがない。そのせいか、この種目を積極的に行っているトレーニーはそれほど多くないようだが、この機会に後部ヘッドをしっかり筋肥大させていこう。
①両手にダンベルを持ち、足のスタンスは腰幅程度にしておく。
②上体を45〜65度の角度に前屈させる。背中は平らに保ち、丸めたり反らせたりしないこと。
③両腕は真下に下ろし、両手の平が向き合うようにしておく。
④肩甲骨を中央に寄せるように意識しながら、弧を描くように両腕を広げていく。床面と上腕が水平になるまで左右のダンベルを持ち上げたら、そこがトップポジションだ。
⑤トップに達したらゆっくりとコントロールしながらスタート地点までダンベルを戻して1レップだ。
⑥8〜12レップ×3、4セット行う。

■ダンベル・フロントレイズ(Dumbbell Front Raise)
三角筋の前部ヘッドの種目だが、側部ヘッドにも刺激が得られるので三角筋の各ヘッドの発達具合を見ながらワークアウトに組み込んでみよう。正確なフォームを維持できる範囲での重量を選択すること。負荷になるのはダンベル以外にストレートバー、プレート、ケーブルマシンなどを用いることができる。
①両手にダンベルを握り、腰幅程度のスタンスで立つ。
②腕を下ろした状態から動作を開始する。ダンベルを持った両手をゆっくり身体の前に持ち上げていく。身体に対して腕が90度の角度になったらそこがトップポジションだ。
③トップで一旦停止してからゆっくりダンベルをスタート地点まで下ろす。
④12〜15レップ×3、4セット行う。

■ダンベル・サイドレイズ(DumbbellLateral Raise)
三角筋の側部ヘッドに強い刺激を与えるなら、この種目の右に出るものはないだろう。ここではダンベルを使うが、ケーブルマシンを使って行うこともできる。
①両手にダンベルを握り、腰幅程度のスタンスで立つ。
②腕を下ろした状態から動作を開始する。ゆっくり腕を真横に持ち上げていく。ダンベルが肩の高さまで来たら、そこがトップポジションだ。
③トップで一旦停止したら、ゆっくりダンベルを下ろしてスタート地点に戻る。これで1レップだ。
④12〜15レップ×3、4セット行う。

まとめ

的確な種目を選んでワークアウトを組めば、肩の筋量やバランスは確実に改善されていくはずだ。早い人なら数週間で変化がみられるだろう。もちろん、反応速度には個人差があるが、しっかり考慮されたワークアウトを実践すれば必ず筋発達は得られる。

ワークアウトの効果を最大限に引き出すために、まずはジムに行く前に適度な食事を取って、エネルギーレベルを高め、さらにモチベーションも高めてワークアウトに臨もう。

ケガには細心の注意を払い、積極的に多関節種目を採用して高重量で行うことが大切だ。肩のワークアウトを大いに楽しもう。

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