習慣を断ち切ろう
習慣的なことから渇望感が湧くこともある。例えば、夜にテレビを見るときに欠かさずポップコーンやアイスクリームを食べるという人は、それが習慣になっているので、食欲にかかわらずテレビの前に座るとポップコーンやアイスクリームを手にしてしまうのである。この組み合わせを断ち切ることができれば、テレビを見るときにお供にしていたポップコーンやアイスクリームとの縁を切ることができる。パブロフの犬と同じで、テレビの前に座ることが自動的にポップコーンやアイスクリームを食べる行為になっているので、そういう習慣は早急にやめるべきだろう。どうやって習慣を断ち切るのか。例えば、アイスクリームを食べてからテレビを見ようと決める。そうすると、テレビの前に座ったと きにアイスクリームを食べる習慣 からは解放されるはずだ。まずは 関連付けられている要素を切り離 すことから開始しよう。 実は行動と味覚は私たちが想像 しているよりも早く変えることが できる。例えば減量期に入ると、人 は健康的な食物を食べる。最初は いろいろ調べて意識してそういう 食材を買っていたのに、数週間も すると無意識のうちに糖分や塩分 が多い食物を避けて過ごすことが できるようになっていたりする。 なぜか。それは、健康的な食事に よって味覚が変わり、人工甘味料や調味料がふんだんに使われてい る食物を美味しいと思わなくなる からだ。減量前は思いもしなかったのに、健康的な食事に切り替え てからは果物のブルーベリーが美味しく感じるようになったり、ホイップクリームが嘘っぽい味に思 えてくるのである。
食べることに専念してみる
食事をするときはそれだけに専 念しよう。食事をしながら新聞を 読んだり、携帯をいじったり、テ レビを見ることはやめよう。これ はしつけやマナーの話ではなく、 空腹をコントロールするための秘 訣のひとつだ。いわゆる「ながら族」の食事は、食べてからの満足感が弱い。食事のときは食べるこ とだけに専念し、一口一口を味 わって食べるようにすると、少量 の食事でも大きな満足感が得られ るのだ。 このことは実際に試してみると 分かるはずだ。例えばケーキを丸 ごと 個用意し、テレビや携帯を 見ながら食べていると、気づいた らほとんど食べ切っていたりする。 今度は別の機会に、食べることだ けに専念して同じケーキを食べて みる。すると、前回は苦もなくほとんど食べ切ってしまったのに、 今回は半分ほど食べたところで満 足感が得られ、もう食べられない という気持ちになるのだ。実はこのような経験をすると、感情だけでケーキを求める渇望感が湧いてこなくなる。なぜなら、ケーキを十分に味わい、これ以上は食べられないというレベルまで腹に詰め込んだため、ケーキへの渇望が消滅するからだ。もちろんこのような荒治療を勧めるつもりはないが、食事のときは食事に専念するだけで、意外にたくさんは食べられないものだということが分かるはずだ。
とりあえず10分待ってみる
認知行動療法士の友人が言うに は、渇望感は一般的には90秒ほど しか続かないのだそうだ。つまり、 特定の何かを猛烈に食べたいという欲求が出てきても、その気持ちは90秒で収まるというわけだ。だ から、渇望感が湧いてきたら90秒間、座ってジッとしてみる。これ ができれば欲求の度合いは弱くな り、乗り切れるかもしれない。た だ、私の場合にはこれは効かな かった。チーズバーガーとポテトフライを食べたいという渇望が湧 いてきたときに90秒間耐えてみた。 しかし、その後も強い渇望感は続 き、結局私は欲求に負けて食べた いものを注文してしまったのだ。 ただし、別の機会に同じように 最初はしばらく待ってみた。 90秒では何の変化もなかったが、10分も待っていると渇望感が弱くなり、 その後は食べずにいても平気でい られるようになった。おそらく、確実に渇望感を緩和するなら、食べ たいという欲求が湧いてから10分 間は様子を見たほうがいい。 10分間を待つことができれば、欲求に負けて不要なジャンクフードやお やつを食べなくて済むかもしれない。
食べ物のことを忘れてみる
感情の空腹感は、刺激に対する 欲求の場合もある。感情の空腹感 を抑えることができなくなったら、 例えば食べ物から思考を切り離してみる。そのためにできることは、 熱いシャワーを浴びる、好きな音 楽を聴きながら散歩に出る、コー ヒーを飲むなどしてみることだ。 感情の空腹を満たすのは、実は食事だけではない。食事とは違うことをすることで気分が変わり、 刺激が得られ、それで満たされる ことも多い。食べ物以外のことで欲求を満たすために、いろいろな 趣味を持ったり、さまざまなことに興味を持つことはとてもいいことである。読書、ロッククライミン グ、ハイキングなどをしてもいい。 家に子どもがいるなら一緒に遊ぶだけでも気分は大きく変えられる。 一番良くないのは、欲求を抑えようと、できるだけ行動せず静かに過ごしてしまうことだ。これでは全く刺激が得られず、感情の空腹は強まるばかりである。食べ物への渇望感が湧いてきたら、気分を変えるために食べ物以外のことに興味を移し、行動してみよう。
正反対のものを食べてみる
無性にチョコレートが食べたくなったら、一口分だけ用意しておいたものを食べるという方法については前述した。食べたいものをほんの少し食べることで、感情の空腹感を満たすことができるのだ。あるいは、チョコレートを一口とブルーベリーを組み合わせて食べると、罪悪感が少しだけ緩和され、しかも甘味への欲求はかなり満たされる。一口ほどのベークドポテトが食べたいなら、これにオリーブ油を少量振りかけて食べるのもいいだろう。あるいは、渇望している食物とまったく反対のものを食べるというのもひとつの手段だ。例えばブラウニーが食べたくなったら、代わりにブロッコリーや魚を食べてみると渇望感が緩和されることがある。このように、食べたいものとまったく違うものを食べると、少量で感情の空腹が満たされ、食べたいと渇望してたものから解き放たれることがあるということを覚えておこう。私の場合、この方法を試したことで何日もブラウニーなしでも平気でいられるようになったのである。
渇望感と戦わない
感情の空腹に襲われたら、単純な話、それを満たしてやればいいのだ。多くの人たちが減量に失敗するのは渇望感と戦おうとするからだ。抗わなければいいのだ。無駄に抵抗せず、これまでに紹介したやり方で少し渇望を満たしてやれば、私たちは感情の飢えから解放されるものなのである。食べたいという欲求が起きたら一口だけ食べたらいい。それは決して負けではない。感情の飢えは一口で満たされるのが普通であり、満たされればその時点で終了する時間後に同じ欲求が起きることはない。おそらく翌日もないだろう。数日後、また渇望感が湧いてくるかもしれないが、そのときはまた一口食べて満たせばいいのだ。抵抗しないのでいれば、そのうち渇望感に襲われる頻度は減っていくはずだ。渇望が起きたら抵抗しないこと。我慢しようとしないこと。耐え抜いてやろうなどと思わないこと。減量を成功させるには渇望感とうまく付き合うことが大切なのである。