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「自分ができていないことを積み重ねて、そこで初めて筋肉がついていく」=筋肉マニアにして世界王者・鈴木雅

「自分ができていないことを積み重ねて、そこで初めて筋肉がついていく」

――サイドレイズも手の角度を変えるなどして3種目ほど行っていました。

鈴木 ポイントを押さえればベーシックな種目だけで十分なんです。骨盤周りのポジション、足裏の踏み方、呼吸など。体が開かないようにする練習をして、適切な動作をする。だから、体作りはインスタント的なものではないんです。そこは日々、訓練していかないと難しいものがあります。「どうすれば効くのか」というところばかりにフォーカスを当てる風潮には疑問を感じます。人によって違うという解釈では言い逃れになってしまいます。自分ができていないことを少しずつ積み重ねていって、できるようにしていく。そこで初めて筋肉がついていくんです。地道な作業が大事なんだということを改めて実感しています。

――体の使い方を極める、という感覚ですか?

鈴木 そうかもしれないです。すると、筋肉もちゃんとついてくると思うんです。これまでは背中の厚みが弱かったんですが、次第に改善できてきました。確かに、人によって感覚の違いはあります。やってみたのに実感できないとか、指摘されて動きができていなかったことに初めて気づくとか。そういったことを言葉で噛み砕いて説明していくのは非常に難しいです。トレーニングは簡単に「こうやれば、こうなる」と説明して伝わる部分もあるんですが、それだけは伝わらないところも多々あります。握り方一つでも、効き方は変わってきますから。「効く、効かない」って、「骨格の違い」という一言で片付けられてしまうことがありますが、それでは体作りが非常につまらないものになってしまいます。どうやればその骨格の違いをカバーできるかを考えていったほうが、楽しく取り組めます。

――「連覇」というものから解放され、変化した点はありますか。

鈴木 体というものは怠け者だと(苦笑)。底力というものは切羽詰まったときにこそ出せるものなんだと思いました。

――熱の入れ方が変わった?

鈴木 その反面、トレーニングをケガをする一歩手前で止められるようになりました。防衛反応が働いているだけかもしれませんが、以前はその防衛反応をぶち破ることができていたのかもしれません(苦笑)。最後の2~3レップとか、記憶が飛んでいましたから。今は自分の意思でトレーニングを終えるようにしています。

――脚のトレーニングはいかがでしょうか。

鈴木 やりたいのを我慢しています。日常生活で、まだ痛みが走るんです。でも、徐々によくなり、膝の可動域も広くなってきました。

――現在の分け方は?

鈴木 ほとんど変えていません。「肩」「腕」「脚のリハビリ」「胸」「背中」です。トレーニング時間は1時間強です。

――ご自身にアップデートを施し、指導者としてのスキルもアップしたのではないでしょうか。

鈴木 お客様一人ひとりの根本的な体の使い方を見られるようになりました。例えば、スタンディングで骨盤が前傾する人もいれば、後傾する人もいる。足裏の片方の親指が稼動していない動きを細部まで見られるようになりました。そのようなことを踏まえて、筋肉がつきにくい部位に関しては、動きを改善していかないといけません。それには足の指先など細かな部分まで見て判断していく必要があります。時間がかかる作業ですが、それはすごく大事なことです。

――そういったことを落ち着いて考えられるようになったのは、大会から一歩引いたスタンスにいるからですか。

鈴木 そんなことはないです。もともとボディビルに固執していたわけではないので。私は“トレーニングで体を変えたいマニア”なんです(笑)。いろんな考え方をもとにこれまでトレーニングをやってきて、それらを組み合わせて総決算しているような感覚です。もちろん、トレーニングをして、筋肉をつけて、アップデートしながら実証していくことは大事です。机上の空論にならないためには、自分の体を変えていくしかありませんから。


鈴木 雅(すずき・まさし)
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。DMM オンラインサロン“ 鈴木雅塾”は好評を博している。


執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。

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