11月3(水)~8日(月)、スペインのサンタ・スサンナでボディビルとフィットネスの世界大会『IFBB WORLD CAMPIONSHIPS(国際ボディビル連盟主催世界選手権大会)』が開催され、日本からは13人の選手が出場した。昨年は新型コロナウィルスの世界的感染拡大により、国内外の大会は軒並み中止を余儀なくされ今年も世界大会の開催が危ぶまれたが、徹底した感染症対策と、渡航する選手にはワクチン接種の徹底と隔離期間を設けるなどして開催できるまでに至った。今回も日本選手が活躍を見せ、さらには2人がカテゴリー優勝という快挙を成し遂げてきた。また、2年ぶりの世界大会となり、以前に増して世界の選手もレベルアップしてきていたが、その中でも“日本人”が勝てる、上位に行ける理由を、出場した選手たちは明確に分かったという。本記事で取材をしたのは、今大会クラシックフィジーク171㎝以下級4位入賞を果たした五味原領選手だ。
取材:FITNESS LOVE編集部 写真:中島康介(国内大会写真)
▶快挙達成!日本人史上最高のクラシックフィジーク選手の身体とは【写真】(国内大会時)
◆世界選手権に出場するにあたり、苦労したこと(減量、隔離期間中、渡航した後に行った最終調整など)
減量は8ヶ月目、ジャパンオープンからは3ヶ月開いての大会でした。私は以前からシーズン中、大会に出るごとにコンディションが上がっていくタイプではなく、シーズン初戦の大会にピークが来ることが多かったため今回のように間が空いた大会は苦手意識がありました。
対策として様々な手を打ちましたがあまり功を奏さず、体重はジャパンオープンから3kg落ち、ここ2年間での最低体重でしたが見た目上は絞れて見えず水っぽく見えていくパターンに、、摂取カロリーや運動量を増やしても減らしても、PFCや水分塩分を変化させてもなにをしても体重が落ちていき見た目は良くならず。やれることは全てやったと言い切れる状態でしたので、終盤は身体の疲労を抜くことに専念していきました。
渡航後は帯同して頂いたコーチの方々のポージング指導や姿勢矯正のおかげで4日ほどで見た目に明らかに良い変化が起きました。代表選手の方々や、岡田隆先生、相澤隼人選手らからも最終調整に関してアドバイス頂き、悪いコンディションの中でもベストを尽くすことができ、今後につながる大変良い経験ができ、勉強になりました。
◆世界選手権のステージの感想
2019年に出場したジュニア世界選手権では少しも歯が立たずステージに立った実感すらないような感覚でしたが、今回は本当に競技を楽しむことができ、様々な面で自身の成長を感じることができました。
国際大会に参加しなければ分からない戦い方や審査基準など、世界基準を深く学べたことが本当に大きな収穫となりました。
例えば、フロントリラックスや歩き方、立ち方の重要性、ジャッジの基準から外れて変に悪目立ちをしないようなポージングなど、あまり今まで意識をしていなかった部分に気付くことができました。各カテゴリーの審査基準も非常にハッキリしており、どういった審査基準で評価をされるカテゴリーかを正確に理解することが今後順位を上げていく上で1番大切なことだと感じました。
また、他国の選手と交流を持てたり、日本チームでサポートし合うなど、国際大会ならではのとても良い経験ができました。
◆大会が終わった今の気持ち
クラッシックフィジークでの派遣は私1人、日本人では初の派遣ということもあり日本のクラッシックフィジークがどのレベルなのか試されているように感じ、楽しみでもあり不安も大きくありました。終わってみると、まず順位がついたことにホッとした反面、非常に悔しくもありました。来年は必ず優勝したいという思いを強く持つことができました。
長い減量期間を支えて下さった方々、良いコンディションとは言えない中でも、少しでも良い順位を取れるよう今できるベストコンディションに導いてくれたコーチ陣や、アドバイスをくれた方々に感謝したいです。
◆世界選手権に出場してみて、海外の選手との間に感じた違いとは
私の階級にはすでにIFBB Eliteプロカードを持ってる方が何人もいらっしゃり、さらに私は最年少、最軽量での出場でした。格上の相手と並び、ステージで自分がどう見えるのか、通用するのかどうか、とても楽しみでした。
アウトラインやぱっと見の印象では十分戦うことができており、もともと自信のある部分でしたので来年はさらに強みにできそうだと感じました。またバキュームポーズが今回順位を引き上げてくれた最大の強みとなりました。さらに磨きをかけ誰にも負けないポーズにしていきたいと思います。
一つ一つの筋肉のサイズやセパレーションには大きく差を感じました。仕上がりの違いもありますが、そもそもの筋肉量をまだまだ増やしていかなければならないと痛感しました。
◆世界の選手と並び、見えてきた課題
個人的には筋肉のサイズ、セパレーション、仕上がりが課題です。海外の選手のように一つ一つ筋肉のサイズがあり深くめり込むようにセパレートし、パリッとした皮膚が張り付いているような身体、これらをクラッシックフィジークの審査基準に沿って作っていきたいと思います。
カテゴリーの審査基準を正確に理解してそれに沿った身体、ポージングが必要とされています。クラッシックフィジークの審査基準は日本ではあまり周知されておらず、漠然としたものになっています。世界では明確な審査基準があり、審査員はボディビルと明確に差別化したジャッジをしていると痛感しました。そして、他国の選手はそれをしっかりと把握しています。少しでも日本のクラッシックフィジークのレベルが上がるよう、今回得た情報、経験を日本の選手に伝えていけたらと思います。