トレーニングは“一瞬の輝き”
――ドロップセットで重量を下げながら、セット毎にスタンスを広げていきました。その狙いはどこにあるのでしょう。
加藤 可動域です。スタンスが狭いほうが広筋群でブレーキをかけられるので、高重量を扱えます。ただ、そのスタンスだと可動域が狭い。そこからドロップセットで重量を下げながら、スタンスを広げて可動域を取るようしています。
――シートの下を持ったり、背もたれの部分を持ったりと、手の位置も変えていきました。
加藤 そのスタンスで一番力を入れやすいところを持つようにしています。基本的には体を縮める姿勢を取ったほうがブレーキをかけやすいんです。そのため狭いスタンスではシートの下を掴みます。スタンスを広くしたときは、股関節の可動域を広くするために、ある程度、体を開きます。体を開きすぎると力が抜けてしまうので、適度なポジションが大切です。スムーズに股関節が動かせるポジションです。
――ドロップセットでサクサクと進めていました。
加藤 時間を置いて筋肉を回復させるのではなく、ここではとことん追い込まなくてはならないのです。大腿四頭筋は年齢を重ねるにつれて落ちやすくなってくいので、それに抗うためにも強い刺激をかけてあげたいのです。抗った上でさらに肥大させるのは、もの凄い負荷をかける必要があります。ただし、その「もの凄い負荷」をかけられるのは、ほんの一瞬だけなんです。その一瞬に全てを懸けます。トレーニングは“一瞬の輝き”なんです。
――破壊しまくった後、最後に加圧トレーニング® でのコンパウンドセットでとどめを刺されていました。
加藤 ここでは重さは扱わないので、関節に負担がかかりません。20〜30%1RM ほどの重量で行います。私くらいの年齢に差し掛かった競技者は、常に「このキャリアからさらに筋肉を肥大させるにはどうするか」ということを考えていると思うんです。加圧トレーニング® は長年酷使した関節に負担をかけずに筋肉を発達させられることが短時間でできる。絶対に活用すべきです。
――種目はレッグエクステンションとハックマシンでのシシースクワットでした。
加藤 レッグエクステンションは収縮系、シシースクワットはストレッチ系です。収縮、そしてストレッチの負荷は、加圧トレーニング®との相性が抜群です。
――今シーズン、強化している部位はどこでしょうか。
加藤 もちろん体全体を大きくしていくことを考えていますが、中でもテーマにしているのは背中の肩甲骨ライン、それと内転筋です。肩甲骨ラインはビハインドネックのチンニングを、内転筋はハムストリングの日にインナーサイとワイドスタンススクワットをやっています。
――内転筋を強化する理由は何なのでしょう。
加藤 リラックスポーズの際の脚の隙間を埋めるためです。手前みそになってしまうのですが、私は大腿部の外側が強いので、どうしても内側が弱く見えてしまうんです。バランスをよくして、全体的な完成度を上げていきたいです。あと、私の弱点になっているミッドセクションでゴツゴツ感を出したく、腹筋のトレーニングは以前よりも頻度を高めて、今は週2、3回のペースでやっています。
――種目は何を?
加藤 アブローラーです。筋肉を伸ばしながら力を発揮する伸張性の負荷は、筋肥大に非常に適した刺激だと思っています。そうした負荷をかけられる腹筋の種目が、アブローラーなんです。今年はかなりやり込んでいます。トレーニングの最後に20〜30レップを2~3セット。最初はつま先立ち、後半は膝立ちで追い込むというパターンもあります。本当は10レップくらいでオールアウトしたいので、一瞬で輝ける負荷のかけ方を思案中です。
加藤直之(かとう・なおゆき)1981年生まれ、埼玉県出身。身長161㎝、体重69~71kg(オン)74~75kg(オフ)。トレーニング以外の趣味:子どもの寝顔を見ること。「親バカです(笑)」
主な戦績:
2005年千葉県ボディビル選手権優勝/2008年関東クラス別選手権75kg級優勝/2011年関東ボディビル選手権優勝/2012年ジャパンオープン選手権優勝/2013年日本選手権9位/2014年日本選手権11位、日本クラス別選手権70kg級優勝/2019年日本選手権3位、日本クラス別選手権70kg級3位、2021年日本クラス別選手権優勝、日本選手権4位、IFBB世界選手権40ー44歳80㎏以下級3位
藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。