数多くのドラマが見られた昨年の日本選手権。選手たちはどのような思いで、あの日のあのステージに上がったのか。ここでは男子ボディビル、女子フィジークの各2位から12位までの選手を単独取材。感動の舞台裏に迫る。
取材:藤本かずまさ 撮影:中島康介
2021年男子日本ボディビル選手権大会8位・松尾幸作「想定通りに物事を進めることができました」
当初は一桁台という目標を掲げていましたが、順位に関しては大きな拘りをもってはいません。8位という結果をいただいたことには満足しています。以前は初戦から次第に調子を上げて日本選手権でピークを迎える流れが多かったです。ですが、2019年に初めてファイナリストになったときから、仕上がりに関して初戦からうまく合わせることができるようになりました。減量中のカーボの摂取量はかなり少ないのですが、それでも筋肉がしぼむという感覚が全くありません。逆に、カーボを入れて筋肉が張るという感覚もありません。なので、カーボアップを無理にせず、大会当日まで減量中と同じものを食べるようにしました。通常の減量食を続けていき、最後にミネラル調整だけをして、そこでもう一段階ギアが入るという感覚です。簡潔に言えば「何もしない」ということです。これが自分の調整方法だということが2019年に掴めたのです。以前は、わざわざ大会前に自分で調子を崩していたように思います。そういったことに2019年に気付くことができ、今年は同じことを遂行しました。自分の想定通りに物事を進めることができたという印象です。
ただ、(前回12位という)二桁の順位は(13位以下と)入れ替わりやすいということもあります。2019年と同じようなコンディションではダメだとは思っており、よりステップアップしないと評価されないだろうというプレッシャーは感じていました。結果、2019年に比べいい状態で挑むことができ、高い評価をいただけたと実感しております。今後のテーマとしては、今年8位だった私の身体をどのようにブラッシュアップしていくかということしか考えていません。筋量が1年間で劇的に伸びることはこの歳になるともうないと思います。
密度感など、数字には表れない部分で完成度を高めていくためにトレーニングの強度なども見直し、これまでやってきてよかったもの、反対に効果を感じられなかったものをしっかりと選別していき、 新しいものにチャレンジしていかなければいけないと思っています。また、私も今年40歳になります。がむしゃらに重量を追うのではなく、ケガをせずいかにして身体を作り上げていくかということにもチャレンジしていきたいです。それが長く選手を続けていくために必要だと感じています。