下半身の筋力を作り上げることが健康で強い肉体を作るための基礎になる。頑丈な基礎は重厚な上半身を作る上で不可欠であり、貧弱な基礎の上に大きな塊を乗せて安定するはずがない。では、力強い基礎を得るにはどうすればいいかというと、もちろん強い下半身を作り上げることが必要になる。今回は、一般的な下半身のワークアウトではなく、片脚ずつ動作を行うユニラテラル種目に着目してみたい。
文:Steve Jones. NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション
ユニラテラル種目とは
まずは右脚を刺激し、次に左脚を刺激する。つまりは片方ずつ動作を行うのがユニラテラル種目だ。
片脚ずつ動作することの最大のメリットは、対象となる側の脚だけに全意識を集中させることができる点にある。意識を片側に集中させることができるので、実際に出力も大きくなり、効いている感覚を確実に得ることができる。
また、片脚ずつの動作では、左右の脚それぞれに同量の筋出力をさせることが可能になる。例えば左脚よりも右脚のほうが強い人の場合、両脚で行う種目では、強いほうの右脚がより力を出して動作を完了させてしまう。これでは、左脚は弱いままの状態で取り残されてしまうかもしれない。
しかし、片脚ずつの動作なら、左右に筋力差があっても同じ出力レベルで動作を完了させることができる。これを続けていくうちに、アンバランスだった筋力が徐々に均等になっていくのだ。
左右の脚の筋力バランスが整ってくると、両脚での動作を行った際に今までよりも重い重量を挙上することができるようになる。つまり、下半身の総合的な出力レベルが上がるというわけだ。これはウエイトトレーニングだけでなく、さまざまな競技能力の向上にも役立つはずだ。
ケガの防止にもつながる
トレーニングや競技を優位に進めることができるというのは、どんなアスリートにとってもプラスになることだが、もうひとつの大きなメリットは、ユニラテラル種目によってケガを防止する効果が期待できるということだ。
まず理解しておいてほしいことは、片脚ずつの動作は、両脚動作のときと同じレベルの負荷を左右の脚の関節にもたらし、筋肉を活性化させるという点だ。つまり、片脚動作と両脚動作を比べた場合、これらの点においては優劣の差はないということだ。
ところが、片脚動作は両脚動作よりも用いる重量が軽くなるので、脊柱への負荷を大幅に軽減される。これはとても大きなメリットなのである。というのも、運動中に下背部を傷めるケースは多く、それが競技を継続する上で致命傷となる場合もあるからだ。
また、片脚ずつの動作では使用重量は軽くなるが、その分、対象となる側の膝関節にとっても安全だ。両脚動作の場合、片脚動作で用いるほぼ倍の重量を使った運動になるが、その重さが強い側の膝により多くかかることになるので、膝への負担も大きくなりやすいのである。
左右のバランスを整えることはケガの防止になり、安定した動作を行う上でとても重要になる。ユニラテラル種目を行うことで、左右の脚の筋力バランスが整い、両脚動作の種目をより効果的に行うことができるようになるのだ。
コアの強化
体幹部を緊張させないで片側動作を行おうとすると上半身が傾いてしまい、それが姿勢のアンバランスを生み、動作を継続することができなくなってしまう。体幹部の強い緊張は、片脚トレーニングを行う上で不可欠なのだ。
片脚トレーニングを行ってみると分かるが、確かに胴部や腰部、下背部、股関節周辺などが動作中に強く緊張する。これらの部位が強化されると姿勢が安定し、とっさの動きなどでも姿勢が崩れにくくなるので、ケガの予防だけでなく競技能力の向上にもつながるのである。
下半身のユニラテラル種目にはさまざまなものがある。おそらく、多くの人がスクワットやデッドリフトなどを含むワークアウトを行っていると思うので、それに加えられる2つの種目を今回は紹介したい。
どれを選択して行う場合も、最初は必ず自重を負荷にして行ってみよう。自重だけでは物足りないと思うかもしれないが、初めて挑戦する種目は、まずは動作に慣れることが大切だ。自重だけで安定した動作が行えるようになったら、軽い重量を負荷にして継続し、筋力の伸びに合わせて負荷を増やしていくようにしよう。
ユニラテラル種目 実践
片脚デッドリフト
❶両足を腰幅程度に開いて立つ。股関節から上体を前屈させ、床に置いたウエイトを両手で握る。ウエイトを用いる場合はダンベル、ケトルベル、バーベルから選択しよう。
❷上体を前屈させてウエイトを両手で保持したら、片脚を床から浮かせて後方に引く。身体のぐらつきがないことを確認したら、立っている側の脚にしっかり重心を乗せ、浮かせている側の脚をまっすぐ後方に伸ばす。横から見て、上体と脚がちょうどTの字のような姿勢を作ったら、それがこの種目のスタートポジションだ。そこから上体が床面に対して垂直になるまで身体を起こす。
❸立っている側の脚の膝を少し曲げて、ゆっくりと上体を前屈させていきスタートポジションに戻す
※反対側も同様にして行う
ポイント
この種目ではフォームが重要になるので、まずはウエイトを持たずに自分のフォームを鏡で確認しながら行ってみよう。
片脚ブリッジ
❶床にあお向けになり、後頭部と肩をしっかり床につけ、腕は体側に置く。膝は45度の角度に曲げて、足裏は床につけておく。
❷右足を床から浮かせ、膝をまっすぐにのばす。
❸左足のカカトで床をしっかり踏み込みながら、尻全体を床から浮かせる。このとき、下背部を反らせないように注意しよう。また、肩が前方に丸まらないように意識しよう。
❹十分な高さまで尻を持ち上げたら、そのままの姿勢を1秒程度保つ。
❺ゆっくりスタートポジションに戻る。
ポイント
正しい動作をマスターするまでは自重だけで行うようにする。
まとめ
今回紹介した3つのユニラテラル種目は、いずれも下半身の左右バランスを整え、体幹部を強化し、さまざまな種目や競技での能力を向上させる上で役立つ。
確かに片側ずつのトレーニングは、両側を同時に刺激するやり方よりも時間がかかってしまう。しかし、それでも現行のワークアウトに数種目のユニラテラル種目を組み込んでみてほしい。
ユニラテラル種目は、長い間放置してきたアンバランスを改善し、ケガを予防し、今後のワークアウト効率をより高める効果が期待できる。これだけでも十分に価値のあることだとは思わないだろうか?
自重の負荷だけでも強い刺激が得られる種目がたくさんある。ユニラテラル種目に高重量は不要なので、自宅で行うことができる種目も多い。ステイホームが必要な期間は積極的に挑戦していただきたいと思う。