目的に合わせた使い分け
ケトルベルとダンベル、どちらがいいかについて結論を出すことはできない。両者にはそれぞれ形状があり特徴がある。そのため得意とするものが異なるのだ。異なるものに優劣をつけるのは無理な話だ。だったら、それぞれの長所を取り入れて、ダンベル種目とケトルベル種目の両方を織り交ぜたワークアウトを作るのが賢明だろう。
あるいは、ダンベル種目に飽きたらケトルベル種目に切り替えて行ってみるのもいいだろう。そうすることで、ダンベル種目のワークアウトで基礎筋力を向上させ、ケトルベル種目のワークアウトでパワーアップを図ることができる。それぞれの能力を伸ばしていくことは、結果的に総合的な身体能力の向上につながることなので決して無駄になることはない。
ワークアウトの中身はダンベル種目とケトルベル種目を織り交ぜた構成にするとして、ワークアウトの締めくくりにはどんな種目が適しているだろうか。これについても正解はないが、人によっては対象筋にガツンとしたインパクトの強い種目を最後にやりたかったりするだろう。そのような人たちは、一滴のエネルギーも残さずにワークアウトを終えたいと考えているから徹底的に追い込みたいのだ。そうであるなら、ケトルベルを使い、60秒間の制限時間内にひと振りもできなくなるまでスイングを行ってワークアウトを締めくくってみてはどうだろうか。あるいは、自重を負荷にして血流量をできるだけ増やし、疲労物質を押し流してワークアウトを締めくくるのもいいだろう。どのような種目をワークアウトの最後に行っても構わないが、自分の好みや目標を明確にすることで、自ずと種目の順番も決まってくるのでじっくり構成を考えてみるといいだろう。
初級者はダンベルから
初級者の場合は基礎筋力が十分に出来あがっていない。初級者のうちにどれだけ強い土台がつくれるかで、その後の発達スピードが変わってくる。まずはしっかり基本を学び、基礎的な力を養っていこう。そのために用いるべき器具はケトルベルよりダンベルのほうが効果的だ。ダンベルは左右均等に力がかかるので、握ったときに安定させやすい。そのため、ダンベル種目は初級者でもバランスが取りやすく、適切な重量であれば正確なフォームの維持に集中することができるのである。
初級者の中にはケトルベルを扱いたいという人がいるかもしれないが、ケトルベルは初級者には不向きである。ハンドルを握ったときに真下に重力がかかるため、しっかりハンドルを握らないと動作の途中でケトルベルが手から滑り落ちたり、離れてしまう危険性があるのだ。また、ケトルベル種目は弾みをつけやすいので、重量をコントロールするための基礎的な筋力がなければ、反動をコントロールできずにケガをするリスクが高まる。以上のような理由から、ケトルベルは初級者には向いていないと言える。
少しずつ負荷を増やす
トレーニングの習慣が身についてくるころにはさまざまな種目を覚え、筋力もかなり向上したことに気付くわけだが、多くのトレーニーがちょうどそのころからスランプに陥る傾向が見られる。つまり、筋力向上の頭打ちを経験するようになるわけだ。原因の一つは、扱ってきた重量では筋肉が刺激を感じなくなってきたからだ。そうであれば、必要なことは使用重量を増やすことだ。ダンベルなら小刻みに重量を増やしていくことができるので、そのタイミングがきたら負荷を増やして筋肉に新たな刺激を与え、筋発達を継続させることができる。一方、ケトルベルの場合は小刻みに重量を増やすというわけにはいかない。ケトルベルの重量はダンベルほど細かく刻まれていないため、比較的多くの器具が揃っている大きなジムであってもワンランク重いルベルを使おうとすると負荷の増加率が一気に上がってしまうことになる。その点、ダンベルなら5ポンド(2.2㎏)刻みで設置されていることが多いので、少しずつ負荷を重くし、筋力を継続的に向上させていくことに適している。
ケトルベルとダンベルとでは用いる人の筋力レベルや目的に合わせて使い分けをするのが理想であり、どちらが優れているとは断言できないことが分かるはずだ。結局、どちらもいいのだ。両方をワークアウトに取り入れることで筋力を伸ばし、パワーを伸ばし、心肺機能を向上させることができる。うまく使い分けて確実に次のレベルにステップアップしていくのが正しいウエイトトレーニングである。