筋肉を発達させたいと思っている人たちは、対象筋をいかに強く刺激するかということで頭がいっぱいになりがちだ。しかし、肩に関して言うならもっと大切なことがある。それはもちろん、ケガの予防対策だ。
文:Steve Dorfint, CPT
翻訳:ゴンズプロダクション
※この記事は「IRONMAN(2020年7月号)」に掲載したものです。
ローテーターカフを鍛えよう
トレーニングで肩を痛めてしまう人は多い。読者の中にも肩に痛みを感じてワークアウトを中断したり、しばらく肩を使う種目ができなかったという人も少なくないはずだ。確かに肉厚で幅の広い肩は、洗練されたフィジークを目指しているなら不可欠な部位だ。しかし、そのためにワークアウト量を増やしすぎたり、使用重量を重くしすぎたり、休養を犠牲にしてしまったりして、それがケガにつながっているケースが少なくない。
もちろん、ワークアウトの量、頻度、使用重量を増やしすぎてケガをするのは肩だけに限らないわけだが、実は肩を痛める人が多いのには、もうひとつ別の理由がある。それがローテーターカフの存在だ。ローテーターカフの強化を怠ってしまうと、肩を痛める危険性は格段に高まってしまう。しっかり追い込んで肩の筋肉を発達させたいなら、ローテーターカフの強化、ケアを十分に行うことが大切になるのだ。
ローテーターカフの基本知識
肩の関節は、私たちの日常生活でも頻繁に使われている。しかも肩関節の可動域はとても広いので、これもまた肩を痛める原因と言えるかもしれない。肩関節の可動域が広い理由はその構造にある。イメージとしては、窪みの中にボールがはめ込まれ、そのボールが自由自在に動いているような状態だ。窪みに例えたのが肩甲骨の外側上部にある「関節窩」、ボールに例えたのが「上腕骨骨端」である。そのため腕をグルグルとさまざまな角度で回旋させたり前方、後方、左右に動かすことができるのだ。
そして、この肩関節を「支えている」のがローテーターカフで、これは4つの小さな筋肉によって構成されている。ローテーターカフを構成しているのは棘下筋、棘上筋、小円筋、そして肩甲下筋だ。これらの筋肉には複数の腱があって、ローテーターカフと肩関節の骨とをつなぎ、重要な役割を果たしている。ところで「ローテーターカフが肩関節を支えている」とはどういうことなのか。まず第一に、ボール状の上腕骨骨端が、窪みである関節窩の中から外れないようにすること。そして、回旋、挙上、降下など、肩と腕の動きに力を与えることだ。これらの動きは、ジムでトレーニングを行うときはもちろん、日常の動作でも当たり前のように行っているものばかりだ。肩関節は私たちが日々の生活を快適に送る上で特に大切な役割を持っていると言えるだろう。
ローテーターカフのケア
ジムに着いたら、ウォームアップもほとんどやらずに本番セットを開始してしまうトレーニーは多い。しかし、それはケガの原因になるし、特に肩のワークアウトではとても危険な行為であることを忘れないでほしい。ケガを避け、定期的にトレーニングを継続していくためには、以下の項目についての準備をしておくことが不可欠である。
●関節の健康
●正常な動作
●柔軟性
●ローテーターカフの健康
そして、肩のワークアウトを開始する前に、以下に紹介するローテーターカフの種目を積極的に行ってほしい。いずれも肩全体をウォームアップさせ、特にローテーターカフの柔軟性を高めて強化するのに役立つ種目だ。すぐにワークアウトを開始したい気持ちは分かるが、その焦りがケガを招く。ケガをすれば長期の休養を強いられることになる。わずかな時間をローテーターカフのために割いたとしても、そのほうがよほど今後の筋発達にプラスになるのだから、面倒と思わずにローテーターカフをしっかりケアしてほしい。