一言でオーバートレーニングといっても3段階あり、それぞれの段階でオーバートレーニングの程度が異なるわけだが、肝心なことはその兆候を見逃さず、オーバートレーニングの域に足を踏み入れないことである。そのために私たちができる基本的なことをいくつか紹介しておきたい。
文:Sarah L. Chadwell, NASM-CPT
翻訳:ゴンズプロダクション
日頃から十分な予防ができていれば、これまでつくり上げてきた筋肉を台無しにせずにすむ。そのための方法を紹介しよう。
●トレーニングはやればやるだけいいのではない。筋発達を望むなら、必ずワークアウト日と休日をセットにしてスケジュールを組むこと。休みを考慮しないワークアウトはオーバートレーニングに続く道であり、決して筋発達に続いている道ではないのだ。
●バランスの取れたトレーニングスケジュールが理想である。最初からバランスを考慮してきたトレーニーはオーバートレーニングと無縁で、今日まで継続的な競技能力の向上や筋発達が得られているはずだ。バランスのいいトレーニングスケジュールには、ワークアウト日と休日がその人にとって理想的な割合で配分されている。ときには休日にクロストレーニングや弱点部位だけを刺激するワークアウトを組み込んだりすることもあるが、休日に体を動かすとしても、決して追い込むような内容ではない。本格的に追い込むワークアウトと、回復を促すための軽い運動、あるいは完全な休養日が、その人にとってちょうどいい割合で組まれていれば、それはバランスのいいトレーニングスケジュールであると言える。
●体の発する声に敏感になること。体は少しでも異常を感知したら、何らかの症状で私たちに合図してくる。その合図は体の悲鳴なので無視しないこと。そして侮らないこと。体の声に敏感に反応する人は、決断も行動も早い。つまり、疲労から抜け出せなくなる前に確実に休日を入れリラックスし、疲労回復に全力を尽くすのだ。これがオーバートレーニングの域に近づかないようにするための最良の手段なのである。
●少しでも違和感や異常を察知したら、疲労回復を促すためにディープティッシュ・マッサージ、鍼灸、凍結療法(クリオセラピーやクライオセラピー)などを受けてみよう。多少の出費は必要になるが、疲労回復を促すのに大いに役立つので、場合によっては良い投資になるのではないだろうか。
●食事にもしっかり気を使おう。疲労回復にはエネルギーが必要だ。エネルギーをつくり出すのは言うまでもなく食事だ。まともな食事を摂らずに追い込むようなトレーニングを続ければ、どんどんオーバートレーニングの領域に足を踏み込んでしまうことになる。トレーニングで結果を出したいなら、正しく食べることはとても大切だ。特にタンパク質と脂質は体に不可欠である。脂質もホルモンの分泌を促す上で欠かせない栄養素なのだ。
●水分補給を忘れないようにしよう。運動をすれば発汗し、発汗によって体内の重要なミネラル類が汗とともに流れ出てしまう。その状態を放置すれば体の疲労は増してしまい、たちまち体の機能が低下してしまうことになる。そんな疲労をできるだけ溜め込まないようにするには、こまめな水分補給は欠かせない。どれだけの水分が必要なのかは個人差があるが、目安にするなら体重1㎏あたり60cc以上の水分を摂りたい。屋外で運動をするなら、さらに多くの水が必要になる。計算するのが面倒なら、基本的に1日2リットル以上の水を飲むようにしてみよう。