ワークアウト前にすることと言えば、プレワークアウトサプリメントを摂取したり、軽食を食べたりすることだと多くのトレーニーは考えているはずだ。ワークアウトの効率を上げるために役立ちそうなさまざまな物質を独自に選択して、それらを混ぜたものを飲むという人も多い。そこには甘味も含まれていて、色鮮やかで美味しい飲料になっていることもある。それを飲むとエネルギーレベルが瞬く間に上昇し、血管が浮き上がり、テンションが上がり、これから始まるワークアウトへの意欲が高まるのだ。そういった方法で毎回調子よくワークアウトに臨めているなら続ければいい。しかし、もしもっと別の簡単にできるような方法を試したいというのであれば、以下のような選択肢もあるので参考にしてほしい。
文:Roger Lockridge
翻訳:ゴンズプロダクション
コーヒーやお茶を飲んでみる
「黄金の飲み物」と言われるコーヒーは、水以外で高い評価を受けている飲料のひとつだ。天然のカフェインを含むため、それがエネルギーの産生を刺激し、それ以外にも数々の健康要素をもたらすことが知られている。2019年3月に発表されたメタ解析(過去のデータを総合的に評価すること)によると、コーヒーは筋持久力、筋力、パワー、跳躍力、運動スピードなどを補佐する働きがあることが示されている。
コーヒーよりお茶のほうが好きという人も多いが、それならば緑茶やチャの木の飲料を飲むのもいい。いずれもティーバッグの状態で販売されているので、カップにティーバッグを入れ、お湯を注げば簡単に飲むことができるはずだ。お茶は葉を加工したもので、葉の中にはカテキンと呼ばれる成分が含まれている。例えば緑茶に含まれるカテキンは、体のほぼ全ての器官にプラスの作用をもたらし、脂肪減量にも貢献するという研究結果が得られている。ある実験では、被験者に8週間にわたって緑茶を飲んでもらったところ、運動後の被験者の体内で脂肪の酸化率が上昇し、体脂肪減量に優位な状況が作られたそうだ。
飲料に塩を入れてみる
ワークアウト前に摂取する飲料に塩を入れるアスリートも多く、特に高温の室内や炎天下でトレーニングを行う場合、塩を入れた飲料はとてもいいという研究報告もある。何がそんなにいいのか。それは、塩の補給で脱水症を抑制することができるからだ。実際、ある実験では、運動前のアスリートに塩を摂取してもらったところ、比較対象のプラシーボ群と比べて運動のタイムトライアルでより良好な結果を得ることができたそうだ。
ボディビルダーに人気があるのはピンク・ヒマラヤンソルトで、この岩塩にはさまざまなミネラルが豊富に含まれていて味がまろやかだという特徴があるそうだ。しかし、ボディビルダーを含むアスリートが摂取するのであれば、特定の岩塩にこだわる必要はないだろう。運動中の発汗量が多くなりそうなときは飲料に塩を入れてみてはどうだろうか。
トレーニング前のシャワー
シャワーは運動後に浴びるのが普通だが、トレーニング前にも浴びておくと体温が上昇して筋肉が温まり、全身を循環する血流量が高まる。このような状況から運動を開始するとトレーニング効率が高まったり、ケガの予防にも役立つと考えられる。また、体の芯が温められることで基礎代謝も上昇する。これは脂肪燃焼にもつながるので、減量期には積極的にぬるま湯のシャワーを浴びてからトレーニングを開始するといいかもしれない。
瞑想する
どんな競技のアスリートでも、精神状態を健全に保つことはとても重要なことだ。精神状態はパフォーマンスや成績に直結するので、競技内容がハイレベルであればあるほど、選手たちにとっては精神の鍛錬が肉体の鍛錬と同じほど意味を持つのである。瞑想(メディテーション、マインドフルネス・トレーニング)は、アスリートにこれから始まるワークアウトや競技に向けて心身を備える効果をもたらす。また、人として正しい行いや態度が保てるように心を健全に保つためにも作用するものだ。
GPPトレーニング
GPPトレーニングとは、ジェネラル・フィジカル・プリペアドネス・トレーニングのことで、簡単にいえば準備体操のようなものだ。パワーリフティングやストロングマンたちは競技を行う前に彼らにとって必要なGPPを行い、高重量を使った競技に向けて心身を備えるようにしている。また、軍隊でも目的に応じて適切なGPPが行われている。
例えば特定の身体機能をより活性化させるため、プレイグゾースト法のように種目を組み合わせて行うこともあるし、特定の動きを複数組み合わせて順番に一つずつ行うこともある。いずれにしてもGPPは本番トレーニングに向けたウォームアップであり、さまざまなアレンジが可能なのだ。
2016年に行われた実験では、短い時間内に少ない回数の動作を繰り返すようにすると、それがケガの予防に役立ち、さらには同じ動作を長く繰り返すことによる飽きや細胞の酸化ダメージを抑制することができるという結果が得られたそうだ。GPPをワークアウトの前に行うなら、ワークアウト全体量の20%程度にとどめること。また、ウエイトを使ったGPPを行うなら、本番トレーニングで用いる重量の80%を越えないようにしよう。