脚の種目を行う場合、理想のレップ数は高回数がいいか低回数かいいか。これについての議論はもう何年にもわたって続けられているのに、いまだに明確な答えは出ていない。フリーウエイトとマシンはどちらが筋発達に効果があるのかというのとおそらく同じだ。どうして答えが出ないのか。それは、どちらにも長所があり、どちらか一方に決めることができないからである。
文:William Steven Litz
翻訳:ゴンズプロダクション
下半身の筋肉はとてもパワフルだ。その要素だけに目を向ければ「高重量×低回数」でやり込むのが効果的なように思える。しかし、下半身にはたくさんの遅筋線維もあり、持久力に優れた筋肉でもあるのだ。実際、日常生活を問題なく送っている健康な一般人が、5分間歩き続けると座らなければならないようなことになっているだろうか? そんなことはないはずだ。下半身の筋肉は持久能力も高いわけで、高回数のセットも行うべきということになる。高重量を使ったやり方と運動量を増やしたやり方。この2つをミックスさせているから、私たちは脚のワークアウトに対して恐怖を感じ、敬遠したくなってしまうのではないだろうか。
IFBBプロボディビルダーとして活躍したクリス・カミアーは自分の脚のワークアウトについてこう語っていた。
「若いころは高重量のスクワットをよくやった。143㎏×40レップからスタートして、226・8㎏まで重量を増やして10レップ、さらに321・6㎏で4レップ。モンスター級の脚を作り上げたトム・プラッツは143㎏×50レップのスクワットをやっていたそうだから、私も彼に近いことを実践すべきだと思ったんだ」
これついては次のトピックで詳しく解説しよう。
脚の種目は低回数? 高回数?
脚の筋肉は大きく、遅筋線維も速筋線維もたくさん詰め込まれている。だからこそ、下半身の筋肉には高回数と低回数、両方のやり方で種目を行うことが大切なのだが、それを勧めたい理由がもうひとつある。
筋肉を構成している筋線維は、筋原線維と呼ばれる細い糸のような物質が集まって作られている。また、筋原線維と筋原線維の間には、筋形質と呼ばれる細胞質が満たされている。実は、筋原線維は低回数の運動に反応しやすく、筋形質は高回数の運動(筋緊張時間の長い運動)によって刺激を受ける性質があるのだ。筋原線維も筋形質も体積を増していけば、おのずと筋線維は肥大する。筋線維が肥大すれば、それは私たちが目指している筋肉のサイズアップにつながっていくのである。
筋発達の大半は筋形質の増量によってもたらされることが知られているのだが、だからといって筋原線維の肥大が不要であるというわけではない。結局、脚のサイズアップを図るためには、筋形質を増量させる高回数の運動と、筋原線維を太くする低回数の運動の両方を織り交ぜることが必要になってくるのである。
パワーリフターやオリンピックリフターが行うトレーニングは高重量×低回数がメインだ。この種の運動は筋原線維を刺激する。一方、ボディビルダーは低回数も高回数も行うから、筋形質も筋原線維も増量する。その結果、ボディビルダーの筋肉は明らかにパワーリフターよりもサイズが大きくなるのである。高回数のセットは、必然的に筋緊張時間を延ばすことになり、それが筋肥大に貢献する。特に脚の筋肉の場合は高回数による筋肥大効果が顕著だ。それなのに私は、高重量でのやり方こそが脚の筋肥大をもたらすと長い間信じて疑わなかった。
試しに高重量で5レップのスクワットを行ってみると、これは間違いなく楽しいということが分かる。ところが、重量を減らしてセットあたり20〜50レップやろうとすると、まさに地獄である。もう二度とやりたくないと思ってしまうほどだ。しかし、これこそが筋肥大のために必要な刺激なのだ。これまで大腿部の筋量アップには高重量×低回数しかないと信じてきた人たちは、これを機会にぜひ中重量×高回数に挑戦してみてほしい。間違いなくワークアウト全体の強度が高まり、筋量アップにつながるはずだ。